高橋尚成が占うMLBポストシーズン~ア・リーグ編 現役時代は日本のみならずメジャーでも活躍し、現在は解説者としてML…
高橋尚成が占うMLBポストシーズン~ア・リーグ編
現役時代は日本のみならずメジャーでも活躍し、現在は解説者としてMLBの面白さを伝えている高橋尚成氏。その高橋にメジャーリーグのポストシーズンの行方を占ってもらった。まずはア・リーグ編からお伝えしたい。

17勝を挙げ、ア・リーグ最多の308奪三振を記録したレッドソックスのクリス・セール
今シーズン、ア・リーグでまず注目していたのがヤンキースでした。昨シーズン終盤、若手に切り替えた戦いぶりを見て、今年はヤンキースが面白いだろうなと思っていました。それにライバルのレッドソックスは、打線の力が昨シーズンより落ちていたこともあり、ヤンキースが地区優勝をするのでは……と思っていたほどでした。最終的にレッドソックスに競り負けましたが、昨年よりもチーム力が上がっているのは確かです。
ヤンキースのキーマンは、アーロン・ジャッジしかいないでしょう。彼が打てばヤンキースは勝ちますし、調子が悪くなると勝てなくなる。それぐらいチームの命運を握っている選手です。相手チームにしてみれば、ジャッジをいかに抑え込めるか。そこが最大の焦点だと思います。
ピッチャーのキーマンは、田中将大と言いたいところですが、今年は13勝したものの12敗を喫し、ほとんど貯金をつくれなかった。チームにとっても痛かったですね。もし田中が5~6個の貯金をつくれていたら、おそらく地区優勝していたと思います。とはいえ、勝てるピッチャーということに変わりはありません。ポストシーズンでは会心のピッチングを見せてほしいですね。
ヤンキースに関しては、アロルディス・チャップマン、デリン・ベタンセス、トミー・ケインリー、デビッド・ロバートソンの4人がいるブルペン陣にも注目です。とにかく彼らがいることで、先発は最低5回をしっかり投げればいい。精神的にすごく楽ですよね。
ただ、チャップマンとベタンセスはランナーを出してからのピッチングに不安があります。そこを相手チームはどう攻略してくるのか、注目ですね。
インディアンスは、昨年ワールドシリーズにも進出し、今年は8月から9月にかけて22連勝するなど、面白い存在のチームです。
昨年できなかった「ホームランで点を取る野球」を、今年はエドウィン・エンカーナシオンが加入し、それまでいたフランシスコ・リンドーア、ホセ・ラミレスらとともに実践できるようになった。
ピッチャーでは、アンドリュー・ミラーがキーマンになると思います。彼はどんな状況でもバッターをねじ伏せる力を持っている。いわば、流れをつくれるピッチャーです。2~3イニング送り込んでもしっかり抑えてくれるピッチャーはそういません。
昨年、カブスがチャップマンをそうした起用でワールドチャンピオンになったように、特にポストシーズンの短期決戦では、彼のようなタイプのピッチャーがいるとベンチは非常にありがたい。インディアンスはディフェンスで流れをつくって、それを攻撃に生かせるチームです。シーズン同様の試合運びができれば、ワールドシリーズ進出も十分にあると思います。
ア・リーグ西地区を制したアストロズは、打線のつながりがよく、簡単に点を取れる印象のあるチームです。終盤はやや勢いが落ちましたが、シーズン序盤から中盤にかけての勢いは凄みがありました。短期決戦は勢いのあるチームが絶対的に強い。ブルペン陣にやや不安はありますが、アストロズは爆発力を秘めたチームといえます。
ツインズはポストシーズンに進出したチームのなかでは、力は少し劣るかなと思っています。それでも今年16勝8敗と活躍し、ワイルドカードの先発が予想されているアービン・サンタナがフル回転すれば、可能性は広がると思います。
サンタナとは、エンゼルス時代に一緒にプレーした経験があります。僕がエンゼルスに入団する2011年の前年に、松井(秀喜)さんが在籍していたこともあって、日本人に優しく、僕のことを「ヒサノリサン」と呼んでくれていました。厳しい戦いになると思いますが、とにかくいいピッチングをしてほしいですね。
最後にレッドソックスですが、ワールドシリーズ進出はこのチームじゃないかと思っています。足を絡めた野球を実践できるようになって、確実にひとつ先の塁にランナーを進めている。昨年インディアンスがワールドシリーズに進出しましたが、まさに同じような戦いをしているのがレッドソックスです。
チームの顔であった主砲のデビッド・オルティスが昨年限りで引退し、これまでのように長打力で点を取ることが厳しくなりました。そこで「足で戦っていこう」という方針を打ち出したのだと思います。状況に応じて、逆方向に打ってつなげる打者が多く、隙のない野球をしています。それに先発には大黒柱のクリス・セールがいて、ブルペン陣も多彩な顔ぶれが揃っています。
どのチームも、どんどんいい投手をつぎ込んでくるのがポストシーズンです。そのような状況で打ち勝つのは非常に難しい。そんな中、足で突破口を見出せるレッドソックスの攻撃は、短期決戦だからこそ生きるような気がします。
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注目のア・リーグポストシーズンは、日本時間の10月4日、ヤンキース対ツインズのワイルドカードから始まる。果たして、激戦を制しワールドシリーズに進むチームはどこなのか。好勝負を期待したい。
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