「大相撲春場所・14日目」(22日、エディオンアリーナ大阪) 悲願の初優勝に挑む元大関の平幕高安が美ノ海に寄り切られ、痛恨の3敗目を喫した。関脇大栄翔を押し出した大関大の里と賜杯争いでトップに並ばれた。高安が敗れたため、4敗の平幕美ノ海、…

 「大相撲春場所・14日目」(22日、エディオンアリーナ大阪)

 悲願の初優勝に挑む元大関の平幕高安が美ノ海に寄り切られ、痛恨の3敗目を喫した。関脇大栄翔を押し出した大関大の里と賜杯争いでトップに並ばれた。高安が敗れたため、4敗の平幕美ノ海、時疾風、新入幕の安青錦に優勝の可能性が残った。千秋楽では5人の間で直接対決がない割が組まれた。1996年九州場所以来となる、5人による優勝決定戦の可能性も出てきた。

 やはりダメなのか。高安が苦悶(くもん)の表情で土俵を割った瞬間、館内に大きなため息が充満した。支度部屋では唇を震わせ、うつろな目で下を向いた。序盤の問いかけには答えず、しばらくして口を開いた。

 「切り替えて、また明日ですね。しっかり反省して切り替えてまた明日。一生懸命にやりたい。今日は良くなかった」

 美ノ海をかち上げて前に出たが、押し切れず次第に腰が浮いた。下からの圧力で反撃され、寄り切られた。

 悲願の初優勝へ、大の里と3敗で並んだ。千秋楽は、3年前の九州場所で逆転優勝を許した小結阿炎と当たる。もう勝つしかない。しかし、千秋楽に優勝の可能性を残したことは過去8度。本割、優勝決定戦とも全敗中だ。

 この日の朝稽古では穏やかな表情だった。大勢の報道陣を前に「いい緊張感はあるけど。遠足の日の朝って感じ。スパッと目が覚めた」と柔らかな語り口だった。

 さらに「今までと違う。自信がありますね。体調がいいのが一番」と言い「今日と明日勝ちたいですね。人生で13勝したことないので。残り2日間、欲を出してやりたい」と続けていた。

 朝と取組後のあまりの落差に、支度部屋は重い雰囲気に包まれた。八角理事長(元横綱北勝海)は「硬かったよな」と高安を評した。大の里らとの優勝争いを「大関でしょう。優勝経験の差。高安にはそれを覆すような勢いがほしい。並んだから開き直るかもしれないよ…難しいね」と見通しを語った。

 悲願の初優勝へ鬼門となっている千秋楽。高安が35歳でつかんだビッグチャンス。壁を乗り越えたい。