「選抜高校野球・1回戦、早実8-2高松商」(22日、甲子園球場) 1回戦3試合が行われ、早実(東京)が高松商(香川)との伝統校対決を制した。センバツでは1924年の第1回大会決勝以来、甲子園では1925年夏の決勝以来となる再戦で、いずれも…

 「選抜高校野球・1回戦、早実8-2高松商」(22日、甲子園球場)

 1回戦3試合が行われ、早実(東京)が高松商(香川)との伝統校対決を制した。センバツでは1924年の第1回大会決勝以来、甲子園では1925年夏の決勝以来となる再戦で、いずれも敗れていただけに“三度目の正直”で雪辱。主将でエースの中村心大投手(3年)が投げては8回1失点、打っては4安打3打点の活躍でけん引した。聖光学院(福島)は延長12回タイブレークの末に常葉大菊川(静岡)にサヨナラ勝利。浦和実(埼玉)は滋賀学園を破り、初出場初勝利を挙げた。

 エンジの誇りを持って立つ場所には、先輩たちの汗と涙が眠る。紡がれてきた歴史。100年の時を超え、訪れた雪辱の時-。中村が重みある1勝を刻んだ。

 「お互い伝統校なので、先輩方に恥ずかしくないプレーを見せようと心がけました」

 まずはバットで魅せた。二回1死一塁。カウント3-1から高め直球を豪快に振り抜き、左越え適時二塁打で先制点をもたらした。五回には右前適時打、七回には右中間へ三塁打をマーク。サイクル安打に王手をかけた九回には、ダメ押しの中前適時打を放った。驚異の4打数4安打3打点。「たまたまです。とにかく後ろにつなぐ意識でした」と照れ笑いする。

 投げては、毎回走者を背負いながらも要所を締め8回1失点。自己最速を更新した最速146キロの直球が軸ながら“隠し球”が効果を発揮した。象徴的だったのは五回2死満塁の場面。直球でカウント1-2と追い込むと、チェンジアップで投飛に打ち取った。危機を脱した秘球は、5日前にキャッチボールで試したのみだという新球種だ。

 実は18日の開会式で隣になった横浜・奥村頼人投手(3年)に直撃質問。「この代で一番の左投手」と一目置く左腕から握りやリリースの感覚を快く教えてもらったといい「初めてにしてはできすぎ。決め球になりそうな球種なので磨いていきたい」と手応えを得た。

 投打で躍動し、1924年の第1回大会で敗れた高松商に快勝。「まずはこの試合ができたことをうれしく思います。受け継がれてきた伝統を壊さないよう、早稲田のプライドを持ってやっていきたい」。リベンジの1勝から、春の覇者を目指す。(間宮 涼)

 ◆三度目の正直 早実は1924年春の第1回大会決勝で高松商に0-2で敗戦。25年夏の第11回大会決勝で再び顔を合わせ、3-5で敗れた。春夏通じて両校の対戦は今回が3度目だった。

 ◆中村 心大(なかむら・こうだい)2007年7月17日生まれ、17歳。京都府出身。177センチ、86キロ。左投げ左打ち。小学1年から軟式の西陣中央スポーツ少年団で野球を始め、烏丸中では軟式の京都ベアーズに所属。早実では1年夏から背番号18でベンチ入り。50メートル走6秒5、遠投100メートル。最速146キロ。