Be Confident(自信を持て)――。大会第5日の22日に早稲田実(東京)と対戦した高松商(香川)のペリー…

【早稲田実-高松商】ベンチで声を上げる高松商のペリー丈勇選手=阪神甲子園球場で2025年3月22日、長澤凜太郎撮影

 Be Confident(自信を持て)――。大会第5日の22日に早稲田実(東京)と対戦した高松商(香川)のペリー丈勇(じょうい)選手(3年)は出場機会こそなかったが、「やっと甲子園に来られた。夏は勝って活躍する場面を父に見せたい」と話した。昨年3月に亡くなったクリスチャン・マシューさん(享年50)からもらった言葉を胸に、さらなる成長を誓った。

 豪州出身の父マシューさんは、母朋子さん(48)との結婚を機に来日。外国語指導助手(ALT)として福岡で働き、ペリー選手が生まれた。「いつも冗談を交えて『ザ・外国人』といったような人」とペリー選手が振り返る笑顔の絶えない陽気な人だった。

 豪州出身らしくラグビー好きだったが、ペリー選手は友人に誘われて始めた野球にのめり込む。「ラグビーも好きだけど、チームスポーツながら個人対個人の対決が魅力。すごくいいなあと思って」。最初はさみしそうだったマシューさんは野球の経験こそなかったが、似た競技のクリケットをやっていたこともあって、キャッチボールや打撃練習の相手になってくれた。その結果、中学2年で全国大会に出場するまでに成長できた。

 だが、父にさみしい思いをさせてしまう。進学先を福岡から遠い高松商を選んだからだ。祖母宅が高松商近くにあり、学校見学時に夏の選手権大会で大活躍した憧れの浅野翔吾選手(プロ野球・巨人)からアドバイスをもらったことも後押し。「どうやったらメンタルを保てるか、どうすれば肩が強くなるのか――といったことを尋ねたんです。どうしてもここで野球がしたくなって」

 息子と離れることを残念がったマシューさんだが、最後は息子の決断を応援してくれた。ペリー選手も、週に数回のマシューさんとの電話が何よりの楽しみで、練習が苦しいときの支えにもなったが、入学から1年もたたない昨年3月に最愛の父が亡くなったとの連絡が入る。まったく予期しない連絡に「突然のことでショックしかなかった」とペリー選手。「1カ月間ほど学校に来られなかった」(長尾健司監督)ほどだった。

 それでも「練習をサポートしてくれた父への感謝を忘れずに」と練習に打ち込み、初めてベンチ入りを果たしたのが昨年秋。公式戦は4試合の出場で4打数1安打に終わったが、長尾監督も「詰まっても外野手が驚くほどの打球を打てる。真面目で緊張するタイプなので、自信さえ持つことができれば」とペリー選手の長打力に期待している。

 将来の夢はスポーツ記者になること。文章を書くことが好きで、母や祖母だけでなくマシューさんも応援してくれていた。ただ、直近の目標はもちろん夏の甲子園に戻ってくることだ。「スタンドの雰囲気とか、甲子園は怖い場所だったが、この経験を生かして自信をもって練習していきたい」と話した。【中田博維】