選抜高校野球1回戦(22日、阪神甲子園球場)○早稲田実(東京)8―2高松商(香川)● 左腕から放たれる直球は高松商…
選抜高校野球1回戦(22日、阪神甲子園球場)
○早稲田実(東京)8―2高松商(香川)●
左腕から放たれる直球は高松商打線の想像を上回っていた。早稲田実は中村心大(こうだい)が8回1失点の好投で流れを引き寄せた。
一回、2死から三塁打を浴び、打席には高松商の4番・唐渡(からと)大我。「先制点を取られたら終わりだと思っていたので、流れを持ってくるために一段ギアを上げた」
3番までは直球の球速は130キロ台が多かったが、初球に142キロを計測。最後はフルカウントから140キロの直球を振らせてピンチをしのいだ。「コントロールは課題が残ったけど、ストレートで勝負できるのが自分の武器。応援の力もあって出力が上がった」。自慢の球威でねじ伏せた。
昨夏の甲子園で2勝を挙げた大会屈指の左腕だが、万全の状態ではなかった。昨秋の東京都大会で左肩に違和感を覚え、投球を再開したのは2月中旬。生命線である質の高い直球を取り戻せず、もどかしい日々が続いた。実戦から遠ざかる間に2番手以降の投手が台頭し、「投手陣で自分だけ(調整が)遅れている」と焦りをにじませていた。
この日も力を入れて投げた直球は高めに浮く場面が見られた。それでも、リハビリ中にウエートトレーニングやダッシュで下半身を強化したことで、球威は増していた。唐渡は「想像よりも伸びがあって、浮き上がってくる素晴らしいストレートだった」と脱帽。制球はアバウトでも空振りを誘い、要所を締めた。
打っても二回に先制の左越え適時二塁打を放つなど4安打。101年前の第1回大会(1924年)決勝と同じ顔合わせとなった伝統校対決で、勝利をもたらした。「受け継がれてきた伝統を壊したくなかったので、いい試合ができて良かった」。名門の大黒柱としての責任を果たし、安堵(あんど)の笑みを浮かべた。【皆川真仁】