(22日、第97回選抜高校野球大会1回戦、早稲田実8―2高松商) 年輪のように層を重ねる歴史こそ、高校野球の財産なのだと思う。 「志摩さん、帰ってきました」。高松商の三塁手・唐渡大我がグラブと帽子をとり、ひざまずき、右手をベースに置いて2…

 (22日、第97回選抜高校野球大会1回戦、早稲田実8―2高松商)

 年輪のように層を重ねる歴史こそ、高校野球の財産なのだと思う。

 「志摩さん、帰ってきました」。高松商の三塁手・唐渡大我がグラブと帽子をとり、ひざまずき、右手をベースに置いて20秒ほど、目を閉じた。

 1924(大正13)年、名古屋市であった第1回大会優勝時の三塁手で、その年の冬に病死した先輩、志摩定一さんをしのぶ伝統の儀式。くしくも、この日対戦した早稲田実は101年前の決勝で戦った相手だった。

 高松商の長尾健司監督は「100年間存続し、再び相まみえたことは素晴らしいこと」。第1回大会に出場した8校は、今も「強豪」「古豪」として存在感を示している。

 全体を見渡せば、昨年度の硬式野球部員はピークだった2014年度の約4分の3、12万7031人になっている。「甲子園」の出場経験校が廃部になる例も出てきた。

 少子化や過疎化、部活動の外部委託が進む。道具代も負担になっている。「灯(ともしび)」を守り続けるための議論は欠かせないが、早稲田実の和泉実監督は「100年後にも語れることが、高校野球のすごいところ」。盛り上がれるのは、戦争や疾病を乗り越え、歴史を紡いできたからこそ。この日の勝負も100年後の語り草になっていればと願う。(金子智彦)