盤石の強さだった。 来年のワールドカップ出場をかけたアジア最終予選は、各組6カ国が総当たり(ホーム&アウエー)で対戦し、総勝ち点を争う方式で行なわれている。 つまり、各国がそれぞれ10試合を戦うわけだが、日本は7試合を終えた時点で6勝1分…

 盤石の強さだった。

 来年のワールドカップ出場をかけたアジア最終予選は、各組6カ国が総当たり(ホーム&アウエー)で対戦し、総勝ち点を争う方式で行なわれている。

 つまり、各国がそれぞれ10試合を戦うわけだが、日本は7試合を終えた時点で6勝1分けの勝ち点19とし、ワールドカップ行き(グループ2位以内)が確定。実に3試合も残して(つまり、3位以下に勝ち点10以上の差をつけて)、勝負の決着をつけてしまったのである。


来年のW杯出場切符を手にした日本代表

 photo by Kishiku Torao

 出場権獲得が決まったバーレーン戦にしても、横綱相撲だったと言っていい。

 確かに前半は、コンディションに勝るバーレーンが優勢に試合を進めていた。早期に来日していたバーレーンに比べ、日本の選手はほとんどが試合の3日ほど前にヨーロッパから戻ってきたばかりだった。

 加えて、攻守両面でギクシャクとした動きを見せる日本に対し、バーレーンはチームとしての機能性においても上回っていた。

 だがしかし、それでも慌てることなく戦えたのは、日本の選手たちが明らかに個の能力で上回っていたからだ。

 チーム戦術で上回るバーレーンの選手に囲まれても、日本の選手は独力でプレッシャーを回避してしまう。そんなシーンは前半から目についた。

 はたしてバーレーンの動きが落ち、次第に間延びしてきた後半は、日本が個人能力の違いを見せつけるかのような2ゴールで、試合を決めてしまった。

「前半から難しい戦いだったが、耐えるところを耐えて、刺すところを刺す。強者の戦いができたのではないか」

 そう語ったのは、1ゴール1アシストの久保建英。最終予選の最大目標はワールドカップへの出場権をつかむことなのだから、これでミッションコンプリートである。

 とはいえ、ワールドカップ本大会につながる戦いという意味で言えば、最終予選で本当に注目すべきは、ここからだ。

 ここまでの最終予選7試合、日本は先発メンバーをほぼ固定して戦ってきた。ケガ人が出たことで起きた少しの入れ替えを除けば、ほとんど不動の顔ぶれである。

 もちろん、メンバーを固定して戦うことのメリットはあるだろう。チーム戦術の練度は高まるだろうし、大崩れする心配もない。確実にワールドカップ行きを決めるためには、手堅く戦う必要もあったのかもしれない。

 だがその一方で、メンバーを固定してしまえば、ひとたびケガなどの不測の事態が起きたとき、選手の入れ替えによる戦力ダウンが避けられない。

 まして来年のワールドカップ(※)でベスト8に進出しようと思えば、グループリーグ3試合を戦ったあと、決勝トーナメントで2試合を勝ち上がらなければならない。いわんや、本気で優勝しようというなら、さらに3試合を戦わなければならないのだ。それも、わずか1カ月ほどの間に、である。
※出場32カ国だった前回大会までとは異なり、出場国は48に増加。4カ国ずつ12グループに分かれてグループステージを実施。その後、各グループ上位2カ国と各グループ3位の成績上位8カ国、計32カ国が決勝トーナメントに進出して覇権を争う。

 それを同じメンバーで戦い続けることなど不可能と言ってよく、スペイン、イングランド、フランスなど、世界のトップレベルと比べれば、個の能力で劣る日本は、選手層を厚くする(控えメンバーも含めた平均値を上げる)ことが不可欠であるはずだ。

 にもかかわらず、である。

 日本が最終予選で盤石の強さや横綱相撲を見せたのは確かでも、それはあくまでアジア限定の出来事。ワールドカップでも同じメンバーで戦い続けることは、むしろベスト8進出を遠ざける戦い方だとさえ言ってもいい。

 ここまでの最終予選において、森保一監督は「できるだけメンバーを代えずに、前の試合で経験したことを積み上げて次の試合に生かせるように」と、ケガ人を除けば、ほぼメンバーを入れ替えてこなかった。

 出場が決まったバーレーン戦後には、最終予選を通じて「チーム一丸で戦った」ことを強調し、「スタメンがレギュラーというとらえ方をされるかもしれないが、我々の考え方は全員レギュラー」とも語っている。

 だが、実際に試合に出ると出ないとでは大違い。事実、バーレーン戦で初めて3バックを組んだ瀬古歩夢、板倉滉、伊藤洋輝のコンビネーションは、決して良好とは言えないものだった。ワールドカップ本番でこんなことが起きないためにも、事前の準備が必要なのだ。

 幸いにして、サウジアラビアやオーストラリアなど、最終予選で同組となった他の5カ国がつぶし合いをしてくれたおかげで、日本は3試合も残してワールドカップ出場を決めることができた。これまでの試合では、石橋を叩いて渡る必要があったとしても、ここから先はさまざまなテストができるはずである。

 日本がアジアでは格の違いを見せつけ、あっけなくワールドカップ出場を決めてしまった感のある最終予選だが、本当の楽しみはここからだ。

 森保監督の手綱さばきや、いかに。