第1回選抜大会(1924年)の決勝は、高松商(香川)が早稲田実(東京)を2―0で破り、初代王者に輝いた。両校が22日、選抜大会としては101年ぶりに顔を合わせた。ともにトップダウンではない指導に取り組んでいる。 今大会で29回目の出場とな…
第1回選抜大会(1924年)の決勝は、高松商(香川)が早稲田実(東京)を2―0で破り、初代王者に輝いた。両校が22日、選抜大会としては101年ぶりに顔を合わせた。ともにトップダウンではない指導に取り組んでいる。
今大会で29回目の出場となる高松商は「スーパー・エンジョイ・ベースボール」を掲げている。
長尾健司監督(54)の指導方針には「やらせるよりも、自分で決めたことのほうが身につく」という考えが根本にある。全体練習を2時間程度にとどめ、自主練習の時間を1~2時間とる。部員は課題を洗い出し、これを克服するためのメニューを自ら組み立てる。
きっかけは、長尾監督が高校教諭となる前に勤めた中学校での気づきだ。生徒が自ら学ぶ姿勢を育むことに、重きが置かれていた。「やらせる教育」に慣れていた長尾監督は驚いた。2014年、高松商に就任後も、野球指導に採り入れた。
23年夏の甲子園で優勝した慶応(神奈川)と昨年6月に招待試合で対戦し、選手の自主性を重んじる慶応の「エンジョイ・ベースボール」を意識。長尾監督が「学びに限界はない」との意味を込めて昨夏、頭文字に「スーパー」を加えた。
野球の「探究」を楽しむ姿勢は、部員たちにも根付く。最速147㌔の直球が武器の行梅(ゆきうめ)直哉投手(3年)は、チームで提出する野球ノートとは別に、日々の投球を振り返る個人ノートを毎日つけている。自らの投球の球速やコントロールを「言語化」することで、投球の感覚や調子を比較できるようになったという。
山田圭介主将は「自分たちで考えるからこそ、やりがいをもって成長できる」と話す。
長尾監督はここへきて「成果」を感じている。
22日の初戦に向けて、選手たちは滞在先のホテルの部屋で早実の試合の動画を見てメモを取り、勝ち方や対策を研究していた。長尾監督は「遊びに行くわけではなく研究する姿に、勝たせてやりたいなって思えた」。
対戦する早実の和泉実監督(63)も1992年の就任以降、「考える野球」を掲げる。「高校野球っぽい『しつけ』はしない。悪いことをしているわけでなければ、監督としてどうこう言うことはない」と語る。その指導方針のもと、清宮幸太郎選手(現・日本ハム)らを育てた。昨夏の甲子園大会では、外野手を投手の横に配置する「内野5人シフト」を見せるなど、状況に応じた采配も見せる。
創部100年を超える両校。伝統に縛られることなく、新たな考えを採り入れ、進化を続けている。(木野村隆宏、西田有里)