33歳木下、打力の宇佐見、加藤匠らと競争「世代交代の年になるかも」 井上一樹新監督の下で3年連続最下位から浮上を期す中日で、新人捕手の評価が急上昇中だ。24歳のオールドルーキー、ドラフト4位入団の石伊雄太捕手(日本生命)が1年目から正捕手の…
33歳木下、打力の宇佐見、加藤匠らと競争「世代交代の年になるかも」
井上一樹新監督の下で3年連続最下位から浮上を期す中日で、新人捕手の評価が急上昇中だ。24歳のオールドルーキー、ドラフト4位入団の石伊雄太捕手(日本生命)が1年目から正捕手の座を射止めるために、必要なものとは何か――。元中日捕手で、プロ2年目の1982年にMVPを獲得した野球評論家・中尾孝義氏が分析する。
石伊は4位指名とはいえ、昨年10月に行われたドラフト会議で、捕手では12球団で最初に指名された。今年の新人でアマチュア時代の評価が最も高かった捕手と言える。三重・近大高専、近大工学部、社会人野球の名門・日本生命でキャリアを重ねてきた。
1桁の背番号「9」が、期待の大きさを物語っている。「おっと。それは相当期待されているね」と笑顔で反応したのが中尾氏である。中尾氏自身も兵庫・滝川高、専大、プリンスホテルを経て、1980年ドラフト1位で中日入り。1年目から「9」を背負い、強肩・強打の捕手として活躍した。2年目には、守っては好リードと強肩、打っては打率.282、18本塁打47打点でリーグ優勝に貢献し、MVPに選出されている。
ちなみに中日の背番号「9」は中尾氏が8年間付けた後、強打を誇った愛甲猛氏(1996~2000年)らに渡り、外野手だった井上監督も現役時代終盤に6年間(2004~2009年)背負った。昨年は1年間だけ在籍した中島宏之氏の背中にあった。
石伊は日本生命時代から強肩で知られていたが、1軍の北谷キャンプに抜擢されると、巧みなキャッチングでも目を引いた。打撃に課題を残しつつ、オープン戦の出場機会が増えている。プロ10年目・33歳の木下拓哉捕手、31歳で打力の高い宇佐見真吾捕手、32歳の加藤匠馬捕手らと開幕スタメン、ひいては正捕手の座を争う。井上監督が昨年2軍監督として手塩にかけた、石伊と同い年の石橋康太捕手(プロ7年目)も控えている。
「打撃技術は教えられてもリードはなかなか教えられない」
中尾氏は「木下、宇佐見は30歳を超えてベテランの域に入ってきた上、シーズンを通してスタメンマスクをかぶり続けるほどの決め手がない。石伊が追い抜く可能性も十分あると思います。捕手のポジションにおいて、世代交代の年になるかもしれません」と見る。
もっとも、アマチュアとプロの間には明白な差がある。中尾氏は「捕手として相手打者をどう観察できるかが鍵だと思います」と指摘する。「社会人野球と一番違うのは、打者の打ち損ないが少なく、甘い球は確実に打たれるということ。もちろん投手のレベルも違うのですが、少しレベルが落ちたり、コントロールミスがあったりすれば、容赦なく打たれます。捕手にも、その認識が必要です」と強調する。
「相手打者の弱点はミーティングでスコアラーが教えてくれますが、相手投手が違いますから、100%信じ込まない方がいい。捕手は、経験ももちろんですが、その場の感性が大事。打撃技術はある程度教えられても、捕手のリードはなかなか教えられない理由が、ここにあります」とも。
44年の時を経て、背番号「9」で結びついた2人の社会人出身捕手。石伊は偉大な先輩に追いつき、追い越せるか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)