予選5位の歓喜から決勝の失意となったオーストラリアGPを終えて、角田裕毅とレーシングブルズは中国GPが行なわれる上海へとやって来た。 この3日間ですっかりリフレッシュした角田は、失望に終わったメルボルンのレースもしっかりとレビューをして学…
予選5位の歓喜から決勝の失意となったオーストラリアGPを終えて、角田裕毅とレーシングブルズは中国GPが行なわれる上海へとやって来た。
この3日間ですっかりリフレッシュした角田は、失望に終わったメルボルンのレースもしっかりとレビューをして学び、すでに「過去」のものとしてきた。
「あれは完全に戦略ミスでしたけど、すべて分析して理解しました。ちょっとギャンブルでしたし、去年のブラジルでステイアウトしなくて仇(あだ)になった手痛い思い出が(チームの)頭のなかにあって、それが少し影響してああいう決断につながったところもあったと思います。
天気というのはどっちに転ぶかわからないので難しいところですけど、今回は不運なことにほとんどのチームが(44周目に入る)いい戦略を採ったので、その分よけいに僕らとしては悔しい結果になってしまったかなと思います」
角田裕毅が開幕戦のステイアウトを振り返る
photo by BOOZY
あれだけコロコロと天候が変わる状況下で、ドライバーにできることはほとんどない。正しい戦略判断を下すのはチームだ。
雨が降り出した44周目にランド・ノリス(マクラーレン)やジョージ・ラッセル(メルセデスAMG)がピットに飛び込んだのに対し、ステイアウトしたところまでは決して悪くなかった。
問題は翌周、45周目に一度はピットインの指示を出したものの、後続とのギャップを見てステイアウトに切り替えたことだ。
そこでピットインすれば、スタートからずっと6位を争っていたアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)の後方になってしまう。それを見て、チームはピットインを躊躇してしまった。
だが、そこで入っておけばまだ入賞は可能で傷口も小さくて済んだ可能性があったが、さらにもう1周ステイアウトしたことで、中団勢の一番うしろまで下がることになってしまった。
損切りができずに、さらに大きな損をしてしまったわけだ。
【マシンのペースはよかった事実】
「僕はピットインしたかったんですけど、あそこでピットインすべきでした。でも、チームとしてはステイアウトしてほしいという判断でした。
誰か相手を意識していたわけではないんですけど、あの時点では(後続勢とのギャップが縮まっていて)ピットインすると9位か10位に下がってしまうから、ピットインするにはもう遅すぎるという判断だったのかもしれません。
だからギャンブルをしてセーフティカーが出るとか、そういう可能性に賭けたのではないかと思います。そういう意味で(戦略不発がわかった時点で)今後はダメージを最小限にしていく必要があります」
だが、マシンのペースがよかったという間違いのない事実はある。それを次のレースで結果につなげられればいい。
ただし、今週末の中国GPは昨シーズンで一番、苦戦を強いられたサーキットだ。
「去年、ほかのサーキットに比べて上海が予想以上に悪かったのは、クルマに何か問題があったんじゃないかと思うんですが......。チームもいろいろと調べてくれましたが、あそこまで悪いのは、あのレースしかなかったです。
僕のドライビングが悪かったわけでもなく、予選のラップをうまくまとめきれていたと思っても18位だったので、思うようにマシンが機能していない感覚はありました。正直、あのレース週末は記憶から消して、今週末は新しいサーキットに入るような気分で臨んでいます」
しかし理論的にも、レーシングブルズのマシンは上海を苦手とする理由が揃っている。
メルボルンやバクーのように彼らが得意とするのは低速コーナーであり、それも90度コーナーが連続するサーキット。つまりターンインから旋回は45度で、その先はもう加速フェイズに入るというコーナーは得意としているが、グルリと長く回り込むようなコーナーは一貫して苦手としている。
その理由は、ブレーキングからステアリングを切ってコーナリングしている間のダウンフォース量が安定せず、ドライバーがマシン性能をフルに使いきることが難しいからだ。
【今年初めての一般的なサーキット】
その傾向は2025年型マシンVCABR 02でもまだ残っているようにバーレーンでは感じられたと、角田は言う。
「昨年型マシンに比べてそこまでキャラクターが変わっているとは思えないので、正直オーストラリアGPほどのポジションに行けるとは思ってないです。ただ、僕らの弱点が180度コーナーなのかもまだ完全には理解できていませんし、基本的なペースはいいと思うので、それを最大限に生かして弱点を補ってバランスを取っていきたいと考えています」
オーストラリアで予想以上の速さを発揮できた理由は、苦手とする長いコーナーが少ないからなのか、それとも純粋にマシンパフォーマンスが高いからなのか──。
「オーストラリアはコーナリング中のダウンフォース量のコンスタント性が欠けていても、そこをカバーできるようなサーキットですけど、それが僕らにとって強みとして出たのかどうかはわかりません。クルマ自体のペースがいいのかもしれないし、そこは今週末が答え合わせになると思います」
まだまだ、どのチームもマシンのことをフルに理解はできていない。
路面が極端に粗くストップ&ゴーのバーレーンで3日間(テスト)と、半公道の特殊なメルボルンで、しかも決勝はウェット路面で走っただけだ。
ある意味では、今年初めての一般的なグランプリサーキットと言える上海で、どのような走りを見せるかが「答え合わせ」になる。
中国GPのスプリント週末は、1時間のフリー走行のみでスプリント予選とスプリントレースを戦わなければならない。厳しい週末だが、そのなかで期待以上の正解が見つかることを願いたい。