第97回選抜高校野球大会に出場する千葉黎明は、21日の第3試合で智弁和歌山(和歌山)と対戦する。昨夏の初戦敗退から築き上げた結束力で、春夏通じて初めての甲子園に挑む。 昨年7月13日の千葉大会初戦、千葉黎明は3―4で東京学館船橋にサヨナラ…

 第97回選抜高校野球大会に出場する千葉黎明は、21日の第3試合で智弁和歌山(和歌山)と対戦する。昨夏の初戦敗退から築き上げた結束力で、春夏通じて初めての甲子園に挑む。

 昨年7月13日の千葉大会初戦、千葉黎明は3―4で東京学館船橋にサヨナラ負けした。

 「3年生を引退させてしまった申し訳なさでいっぱいだった」。複数の選手が今もその悔しさを口にする。

 新チームは厳しい練習とともに始まった。選手らが一番つらかったと口をそろえるのは「ノーエラーノック」だ。内野ゴロを処理して一塁アウトを27回、併殺15回、外野から二塁、三塁、本塁へ返球、と続ける練習で途中で失敗するとやり直し。終わるまで2~3時間かかることもあった。

 「この時間が一番大切。技術だけでなく、チームに一体感が生まれる」。それが中野大地監督の狙いだった。

 だが秋季大会も地区予選の2戦目で敗退。山本大我主将(3年)は「練習試合で勝ち続けていたのに公式戦ではうまくいかず、自信をなくしていた」。

 ただ中野監督は「反省点は一つ。私が選手たちの良さを引き出せなかった」と捉えていた。技術は十分、と伝えて激励し、続く敗者復活戦を勝ち抜き、選手らは精神的にも成長した。

 さらに県大会前の東海大相模(神奈川)との練習試合も転機になった。それまでは山本主将が打てば勝つ、というチームだったが、速球を投げる相手に全員が必死に食らいつき「主将頼み」から一歩抜け出した。

 これがチームの他の強みとかみ合い、秋の快進撃が始まった。

 地区予選から関東大会までの公式戦14試合で打率3割8分8厘、14打点、安打19本、本塁打1本の山本主将に加え、大橋蓮選手(同)もこれを上回る3割8分9厘で勝利に貢献した。

 50メートル5秒台の岩田海翔選手(同)を中心に機動力を生かし、14試合で計35盗塁。投手陣は最速142キロの速球と鋭い変化球が持ち味のエース田代敬祐選手(同)や制球力がある米良康太選手(同)らタイプの違う7人が登板した。

 ただ6試合1失策の堅守で県大会は制したが、各県の強豪が集う関東大会では3試合7失策とミスが目立った。準決勝で健大高崎(群馬)に0―6で敗れた。

 この反省から冬は再び守備力を磨き、今年1月にはノーエラーノックを30分で終わらせるまでに鍛え直した。

 1月24日の選抜出場校発表。選考理由では「目立つ選手はいなくても、全員がやるべきことをやり、声をかけあってカバーする結束力の強さ」と評された。苦しみながら築き上げてきたチームの形が評価され、甲子園の切符をつかんだ。

 山本主将は「前主将に言われた『監督を甲子園に連れて行ってくれ』という言葉を本当に実現できるとは思っていなかった」と話す。(芹沢みなほ)

■全国高校野球千葉大会

2回戦 ●3―4○東京学館船橋(延長10回タイブレーク)

■秋季県高校野球大会地区予選

2回戦 ○4―3●敬愛学園

代表決定戦 ●3―5○東京学館(延長10回タイブレーク)

■敗者復活戦

1回戦 ○41―0●松戸向陽(5回コールド)

2回戦 ○7―0●秀明八千代(8回コールド)

代表決定戦 ○4―1●市原中央

■県大会

1回戦 ○7―1●中央学院

2回戦 ○2―1●成田

3回戦 ○8―3●東海大浦安

準々決勝 ○5―1●東海大市原望洋

準決勝 ○11―4●専大松戸(7回コールド)

決勝 ○8―7●拓大紅陵

■関東大会

1回戦 ○3―2●西武台(埼玉)

準々決勝 ○5―2●山梨学院(山梨)

準決勝 ●0―6○健大高崎(群馬)