2025年のJ1リーグは、昨シーズンとは違う魅力を提供している。その要素のひとつが、監督の存在だ。特に新監督には、チームをガラリと変え、上昇気流に乗せることが期待されている。サッカージャーナリスト後藤健生が、新監督たちの今シーズン序盤戦を…

 2025年のJ1リーグは、昨シーズンとは違う魅力を提供している。その要素のひとつが、監督の存在だ。特に新監督には、チームをガラリと変え、上昇気流に乗せることが期待されている。サッカージャーナリスト後藤健生が、新監督たちの今シーズン序盤戦を振り返る!

■結果を出した「新監督3人」の共通点

 もう1人、大成功を収めた新監督が柏レイソルリカルド・ロドリゲス監督だ。

 右のウィングバックにドリブラーの久保藤次郎を置き、左にはこれまでインサイドハーフだった小屋松知哉をコンバート。シャドーの位置の小泉佳穂がパス回しの中心になる。センターバックの攻撃参加も含めて、流動的にパスを回すスタイルは早くも確立されてきた。

 第6節のサンフレッチェ広島戦では、得点にはならなかったものの、前半の26分にワンタッチ、ツータッチのパスを10本以上つないでビッグチャンスを作った。本当に、試合ごとに選手たちが自信を深め、コンビネーションに磨きがかかってきている。

 細谷真大、木下康介、垣田裕暉とストライカータイプ3人を回しながら使えるのも攻撃に変化をもたらすことができる。

 すでに結果を出している3人の新監督たち。彼らは、「新」監督とは言っても、Jリーグでの経験が豊富な監督たちだ。鬼木達監督はJ1リーグ優勝4度という記録を持つ名将だし、長谷部茂利監督はアビスパ福岡というクラブをJ1昇格に導き、その後、クラブをJ1に定着させた。そして、リカルド・ロドリゲス監督は、J2の徳島ヴォルティスでサイドバックの攻撃参加など変化に富んだシステムを使ってJ1昇格を果たし、浦和レッズでは成功できなかったものの、J1リーグもJ2リーグも知っている。

■適応だけでも「時間がかかる」Jリーグ

 こうした日本人あるいは知日派外国人監督に対して、新しく日本にやって来た外国人監督は苦戦中だ。

 横浜F・マリノスはこれまでのオーストラリア人監督路線をやめて、イングランドのスティーブ・ホーランド監督を招聘した。イングランド出身で同国代表のアシスタント・コーチという肩書が売りだが、かなり苦労している。

 昨年の反省から失点を減らすことを重視した指導をしているが、その分、選手たちが消極的になりすぎ、これまでの横浜FMの大きな魅力だった攻撃力が見えなくなってしまっている。

 植中朝日井上健太、ジャン・クルードの成長。そして、新加入の遠野大弥の推進力など、これらがうまく噛み合えば、これまでのブラジル人トリオに依存しすぎた状態を脱却できる可能性もあるが、攻守のバランスを取るのにまだしばらくは時間がかかるだろう。

 セレッソ大阪はオーストラリア人のアーサー・パパス監督を招聘。開幕戦ではコンパクトでアグレッシブな素晴らしい内容のサッカーでガンバ大阪を破ったものの、その後は、安定感を欠いたチーム状態で勝利から遠ざかって18位と低迷している。

 新しく日本にやって来た監督たちにとっては、相手の良さを消し合うJリーグというリーグの特徴を掌握できず、また、監督の指示に忠実な(時には忠実すぎる)日本人選手のメンタリティーなどを理解できないので、監督がJリーグに適応することだけでも時間がかかる。

■王者・神戸にとっての「大きな救い」

 いずれにしても、現時点では全38試合のJ1リーグのうち、まだ6試合が終了しただけだ。

 どんなチームでも、どんな指導者でも、開幕前のキャンプでいくら積み上げを図ったとしても、実戦に入ると、さまざまな問題点が露呈する。「初期故障」のようなものだ。

 そうした欠陥をどれだけ素早く改善させられるかも、監督としての大きな仕事である。

 コンディション面も含めて、開幕当初は力が発揮できていなくても、開幕から1か月程度が過ぎたころにコンディションを上げて、また「初期故障」も改善して戦うのが優勝への道だ。

 代表ウィークでJ1リーグは中断となる。

 幸い(?)日本の場合、代表選手の大半が海外クラブ所属なので、Jリーグクラブは代表に選手を抜かれることなく、リーグ戦再開に備えることができる。

 この中断の間で何ができるのか? そして、試合数が増えていく初夏から夏にかけてが、優勝争いにとっては最も大事な時期になるのだろう。

 昨年の優勝、準優勝のヴィッセル神戸とサンフレッチェ広島は、ACLの負担が問題になるはずだった。とくに、ほとんどターンオーバーを使わない広島の場合、昨年も終盤で疲労が蓄積して失速した時期があった。神戸、広島は2024ー25シーズンも2025ー26シーズンもACLを戦うことになった場合、負担はかなり大きかったはずだ。

 ところが、神戸も広島も、さまざまなレギュレーション上の問題が降りかかり、今シーズンのACLは敗退となってしまった。もちろん、アジアのタイトルを目指していたチームにとって大きなショックではあったろうが、少なくとも夏まではACLの負担から開放されたと考えることもできる。両チームはYBCルヴァンカップのファーストステージも免除されているので、一転して他のチームより余裕のある日程となった。

 けが人続出の状況でスタートダッシュに失敗した神戸にとっては、ACL敗退は大きな救いとなったのではないだろうか。

いま一番読まれている記事を読む