選抜高校野球1回戦(20日、甲子園)○東洋大姫路(兵庫)7―2壱岐(長崎)● エースが緊急降板した。背後の一塁側アルプス席から、壱岐の大声援の圧もかかっているはずだった。 だが、東洋大姫路の2番手右腕・木下鷹大(ようた)は甲子園のマウ…

選抜高校野球1回戦(20日、甲子園)
○東洋大姫路(兵庫)7―2壱岐(長崎)●
エースが緊急降板した。背後の一塁側アルプス席から、壱岐の大声援の圧もかかっているはずだった。
だが、東洋大姫路の2番手右腕・木下鷹大(ようた)は甲子園のマウンドを楽しんでいるかのようだった。二回から救援し、九回まで無失点と快投した。
大会注目の先発右腕・阪下漣が一回に連続四球を出し、あっさり2点を先行された。右肘の張りで自ら降板を申し出たエースに代わり、岡田龍生監督から託されたのが背番号「11」、昨秋の公式戦で登板がなかった木下だった。
「この(壱岐への)応援を、自分のものだと思ってやる」。木下は二回のマウンドで冷静だった。持ち味の伸びのある直球で詰まらせ、内野ゴロ二つで2死。さらに、9番打者には直球を3球続けて見逃し三振を奪い、さっそうとベンチへ駆けた。
「流れを呼び込みたかった」と木下。打線が逆転した五回以降は無安打に抑え、七回には自己最速の147キロをマークした。
昨秋は阪下が公式戦の多くで登板し、大黒柱として明治神宮大会4強入りに導いた。だが、2019年の夏の甲子園で履正社(大阪)を率いて優勝した岡田監督は「(甲子園で勝ち上がるには)投手は複数人必要」と語る。
昨夏の練習中に右肘の靱帯(じんたい)を損傷した木下はこの冬、腕のインナーマッスルを重点的に鍛えたという。ケガをしない体作りに時間を割いたことで、自然と球速も伸び、今春の練習試合などで結果を出して岡田監督の信頼を得た。
「今まで阪下に助けられた分、きょうは自分が助けることができた」と語る木下を横目に、就任3年目で母校の監督として甲子園初勝利を挙げた岡田監督は笑みを浮かべた。
「甲子園で投げて勝って、自信がついただろう。この先も(見通しが)良い」【牧野大輔】