選抜高校野球1回戦(20日、甲子園)○西日本短大付(福岡)6―0大垣日大(岐阜)● 味方の守備を信頼し、走者を出した時こそ丁寧に低めを突く。西日本短大付の右腕、中野琉碧(るい)が持ち味の制球力を生かし、今大会初完封を成し遂げた。 初球…

選抜高校野球1回戦(20日、甲子園)
○西日本短大付(福岡)6―0大垣日大(岐阜)●
味方の守備を信頼し、走者を出した時こそ丁寧に低めを突く。西日本短大付の右腕、中野琉碧(るい)が持ち味の制球力を生かし、今大会初完封を成し遂げた。
初球から積極的にバットを振ってくる相手打線を手玉にとった。いきなり一回に死球から1死一、二塁のピンチを招いたが、冷静に後続を断って無失点で切り抜けた。四、六、七回には先頭打者を出したが、いずれも併殺に打ち取った。八回は先頭打者に二塁打を浴びても生還は許さなかった。
「(走者を置いて試合を想定した)ノックを多くやってきた。ゴロを打たせればゲッツーを取ってくれる」。中野は130キロ台の直球をコーナーに投げ分け、スライダー、カットボールの変化球は低めに集めて打者に的を絞らせなかった。
2度も併殺に打ち取られた大垣日大の4番・西河遥人が、「コースにしっかり投げられた。要所で変化球を使ってくるなど投球術がうまかった」と悔やむほど、中野の制球力は高かった。
快投の裏には昨秋の反省があった。沖縄尚学と当たった昨秋の九州大会準決勝。一回に四球と連打で8失点し、1―11で六回コールド負けを喫した。精神的な弱さと制球力という課題が浮き彫りとなった。
課題克服につながったのが、「伝統のメニュー」という100メートルを100本走るダッシュだ。週6日、練習の最初に1時間ほどかけて走り込み、下半身を鍛えてきた。
フォームが安定し、1試合を投げきるだけのスタミナも増した。成長ぶりについて捕手の山下航輝も「打者の手元でボールが伸びるようになった。制球力が良くなって、左右両打者への内角が突けるようになった」と言う。
父の滋樹さんは、柳ケ浦(大分)時代の3年夏に甲子園に出場し、エースの松坂大輔を擁する横浜(東神奈川)に敗れた。今は社会人野球・JR九州の監督を務めており、普段から「気持ちで負けず、試合を楽しめ」とアドバイスをもらってきた。心身ともにたくましくなったエースが、38年ぶりにセンバツに戻ってきたチームに初勝利をもたらした。【黒詰拓也】