第97回選抜高校野球大会で、11年ぶりの2校出場を果たした沖縄県勢。19日に青森山田との初戦を迎える沖縄尚学の主砲・比嘉大登選手(3年)は、21日に登場するエナジックスポーツの主将、砂川誠吾選手(3年)と小中時代の幼なじみだ。高校で進学先…

同じチームに所属していた小学生時代の(右から)砂川誠吾選手と比嘉大登選手=砂川智誠さん提供

 第97回選抜高校野球大会で、11年ぶりの2校出場を果たした沖縄県勢。19日に青森山田との初戦を迎える沖縄尚学の主砲・比嘉大登選手(3年)は、21日に登場するエナジックスポーツの主将、砂川誠吾選手(3年)と小中時代の幼なじみだ。高校で進学先が分かれる時に誓った「2校一緒にセンバツに出よう」との約束をこの春、かなえた。

 ともに沖縄県浦添市出身。家族ぐるみの付き合いで、小中は同じ学校、野球でもチームメートだった。中学時代の硬式野球チーム「浦添ボーイズ」では砂川選手が捕手で3番、比嘉選手が二塁手で4番に座り、全国大会にも出場。「調子の波も一緒だった」と比嘉選手は懐かしむ。

 高校の進路選択で、比嘉選手はセンバツを過去2度制した強豪で那覇市にある沖縄尚学へ。一方、砂川選手は2021年に沖縄県名護市に開校したばかりの新鋭・エナジックスポーツへ進むことに。それぞれ目指すは甲子園。夏の大会で沖縄県代表は1校限りだが、春のセンバツでは沖縄勢が過去に2度ダブル出場している。「一緒にセンバツ」が2人共通の夢になった。

 ずっと一緒だった仲間と離れての高校生活に、比嘉選手は当初「心細かった」。寮生活を送る砂川選手とはSNS(ネット交流サービス)などで連絡を取り合い、今も帰省してくると2人で家の庭で話したり、ご飯を食べたりしてたわいもない時間を過ごす。

 互いに打ち込む野球では、それぞれに成長を重ねている。砂川選手はチーム内の投票を経て主将に選ばれた。小中時代にリーダーシップを取る経験がなかった本人は「本当はそういうキャラではなく積極性もないので戸惑った」。報告を聞いた比嘉選手も「(砂川選手に)しっかりしているという印象がなくて、本当にできるのかな」と心配しつつ、野球になるとスイッチが入る姿を間近で見てきたからこそ「お前ならできる」と励ましたという。

 エナジックスポーツの神谷嘉宗監督(69)らからは「いつでも冷静、変わらない」と厚い信頼を受ける砂川選手。監督に頼らない「ノーサイン野球」を実践するチームにとって、日ごろの練習から部員たちで話し合って考えを取りまとめる上で欠かせない存在だ。

 一方の比嘉選手は、短打も長打も自在に放つ攻撃の中心になった。24年秋の九州地区大会では、計4試合で打率7割超えの大活躍。「打ち過ぎ。なんでそんなに打てるの?」と砂川選手に問われても「調子がよかっただけ」と答える比嘉選手。それを砂川選手は「人前ではちょける(お調子者な)タイプだが、裏ではすごく努力している」と一目置いている。

 2人が出場した九州地区大会では、それぞれの対戦相手の情報をやりとりして戦略に役立て、互いのチームが4強入りを決めた時には「おめでとう」と祝福し合った。決勝の直接対決では、比嘉選手の2安打3打点の活躍もあり沖縄尚学が6―2で勝利。準優勝となったエナジックスポーツも創部3年目で春夏通じて初の甲子園をつかんだ。

 同時出場がかなった今、新たな目標はセンバツ決勝での直接対決だ。砂川選手が「甲子園という場所でリベンジできるなら倒したい」と言えば、比嘉選手も「決勝で戦おう」と気負いはない。

 同一都道府県での決勝となれば、17年の大阪桐蔭と履正社(大阪)以来となる。先に試合に臨む比嘉選手は「チームも個人も仕上がってきている。九州大会の成績もあり、自分への注目は感じる。一戦必勝で戦いたい」と引き締まった表情を見せた。【池田真由香】