第97回選抜高校野球大会が18日に開幕した。20年ぶり3回目の出場となる柳ケ浦の選手たちは、緊張した表情を見せながらも大きく腕を振って阪神甲子園球場のグラウンドを行進。開会式終了直後の開幕試合に臨んだが、二松学舎大付(東京)に2―3で惜敗…

 第97回選抜高校野球大会が18日に開幕した。20年ぶり3回目の出場となる柳ケ浦の選手たちは、緊張した表情を見せながらも大きく腕を振って阪神甲子園球場のグラウンドを行進。開会式終了直後の開幕試合に臨んだが、二松学舎大付(東京)に2―3で惜敗した。(大村久)

 「うれしさもあるけど、やってやる」という気持ちだった。

 甲子園の舞台で先発のマウンドを任された背番号10の宮原太駕投手は初回、いきなり先頭打者に内野安打を許した。無得点に抑えたが、ボール球が多くしっくりとこない。「いつもと違って。緊張なのか、力が入ってうわずった」と振り返る。

 宮原投手は、柳ケ浦に入学後はリズムを意識して投球練習することで制球力に磨きをかけてきたという。それが乱れた。

 中学時代からバッテリーを組む香田亮河捕手は「真っ直ぐよりも変化球で打ち取る投手なので、変化球でコースを攻めようと思った」。宮原投手は「ここで投げたい時にこの球っていうのは意思疎通できていたが、気持ちが空回りしてそこに投げ切れなかった」と悔やむ。

 それでも味方の好守にも助けられ、三回までは無失点。だが四回、チーム打率約4割と、今大会屈指の二松学舎大付の打線に捕まった。長短の連打を浴び、無死二、三塁とされると犠飛で1点を許した。直後に四球を出して交代を告げられ、エースの杉本羽輝投手に「後は任せた」とマウンドを託した。

 危機を招いての途中交代は、昨秋の九州大会でもあったパターン。夏に向けてエースナンバーを奪い取るためには、イニングの途中ではなく、次の回から代わるぐらい粘れないと「監督に任せてもらえない」。

 九回には味方打線が1点差まで追い上げ、東京王者も勝てない相手ではなかった。それだけに「悔いが残る」と唇をかみ締めた。(大村久)

     ◇

 開会式では、県立芸術緑丘高音楽科の鈴木心毬(みまり)さん(新3年)が国歌を独唱した。

 出場校の入場行進が終わり、球場が静寂に包まれる中、鈴木さんの澄み切った歌声が、まだ肌寒い甲子園の空に響き渡った。歌い終わるとスタンドから拍手が送られ鈴木さんに笑みがこぼれた。

 開会式終了後に取材に応じ「たくさんのお客さんにとても緊張しましたが、落ち着いて自分らしく気持ちよく歌うことができたので本当に良かった」と振り返った。「開幕試合を戦う柳ケ浦をはじめ、選手たちへの声援の気持ちを込めながら歌った」という。

 鈴木さんは、昨夏の第106回全国高校野球選手権大分大会の開会式でも、国歌と「栄冠は君に輝く」を独唱した。(大村久)

     ◇

 スタンドで応援した宇佐市の是永修治市長は「開幕戦というプレッシャーのかかる中、強豪校を相手に正々堂々互角の戦いを挑み、爽やかな柳高旋風を吹かせていただきました。皆さんの健闘を心よりたたえるとともに、胸を張って帰ってほしいと思います」とのコメントを出した。(貞松慎二郎)