9月23日のオータムクラシック(カナダ)最終日、三原舞依は振付師のデヴィッド・ウィルソンに初めて振り付けてもらったフリープログラム『ガブリエルのオーボエ』を披露した。今季の国際大会初戦のオータムクラシックで2位に入った三原 伸びやかに…

 9月23日のオータムクラシック(カナダ)最終日、三原舞依は振付師のデヴィッド・ウィルソンに初めて振り付けてもらったフリープログラム『ガブリエルのオーボエ』を披露した。



今季の国際大会初戦のオータムクラシックで2位に入った三原

 伸びやかに滑り出した三原は、最初の3回転ルッツ+3回転トーループを確実に決め、コレオシークエンス(スピンなど、すべての種類の動きで構成される連続演技)からのダブルアクセル、2種類のスピンをしなやかに演じた。

 しかし後半に入ると、3回転フリップがロングエッジになり、次のダブルアクセル+3回転トーループでは、セカンドジャンプのタイミングが狂った。そこでとっさに2回転トーループと2回転ループを跳んで3連続ジャンプにし、その後の3回転ルッツに3回転トーループをつけてミスをカバーしたが、最後の3回転サルコウが2回転になるなど、持ち味の安定感は影をひそめた。

 結果、フリーの得点は132.84点で、総合得点も自己ベストを20点近く下回る199.02点。優勝したケイトリン・オズモンド(カナダ)から18.53点の大差をつけられる2位となった。

「フリーは自分の得意分野というか、表現をするのが好きな滑らかな音楽なので、自分の滑りはできたかなと思います。最後までミスなく演技をすることができなかったのが一番悔しいです。いつもより笑顔が足りなかったんですが、そこは緊張があったんだと思います。その中でも、最初のジャンプから波に乗っていけたことは収穫です」

 演技後、三原は苦しい滑りのなかで得られた手応えを口にしたが、大会前には”怖さ”を感じていたという。

「1週間前までの練習ではノーミスの演技が何回もできていたのが、モントリオールに入ってからは、理由はわからないんですけど、なかなかジャンプが決まらなかったんです。昨シーズンはずっとミスなく演技ができていて、すごく大きな大会にも出られて楽しかったシーズンでしたが……。『2年目のシーズンは同じようにはいかないのかな』という不安というか、怖さがあったのかなと思います」

 その言葉通り、シニア初挑戦となった三原の昨シーズンは、本人の想像以上のものだった。デビュー戦のネーベルホルン杯で、元世界女王のエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)を抑えて優勝。GPシリーズ初戦のスケートアメリカと全日本選手権で3位に入り、四大陸選手権では日本女子で4人目となる200点を突破して、初出場にして優勝を果たした。

 さらに、国別対抗では自己ベストを218・27点にまでに伸ばし、シーズンを締めくくった。その大躍進は、昨シーズンのフリープログラムになぞらえて”シンデレラストーリー”とも表現されたが、自らを「天才肌ではなく、コツコツ積み上げていくタイプ」と評する三原は、自分の急成長に怖さを感じていたのだろう。

 それに加え、今シーズンに取り組んでいる”大幅なイメージチェンジ”という課題も、プレッシャーがかかる要因のひとつになったに違いない。シニア1年目で感じたトップスケーターたちとの差は表現力。ショートプログラム(SP)の『リベルタンゴ』は、その差を埋めるための”大人”な新プログラムだ。

『リベルタンゴ』を初披露した7月のドリーム・オン・アイスでは、ノーミスで演じきって手応えを感じていたが、オータムクラシック初日のSPは序盤でつまずきかけるなど、全体的に少しメリハリのない滑りになった。後半ふたつ目のジャンプだった3回転フリップは、少し跳び急ぐような形になってロングエッジで減点となり、ステップもレベル4を獲得できなかった。演技構成点も、各項目で7.70点から8.15点(10点満点)と伸びず、66・18点にとどまった。

「練習の時も、ノーミスで滑れてはいたんですが、体力がないので最後のステップからスピンでバテてしまうことがよくありました。今日も最後のステップでそれが出てしまいましたね」

 新SPは、昨シーズンまでのSP『序奏とロンド・カプリチオーソ』に比べて動きが激しく、メリハリをつけることも必要になっている。体力面を含め、滑りやすさを感じているというフリープログラムよりも、仕上げるまでに時間がかかりそうだ。

「つなぎの部分もトランジションがたくさん入っているプログラムなので、一歩一歩で氷を押す(滑る)時間はあまりないんです。エッジワークで押さなければいけないプログラムですし、スケーティングの質が問われますが、毎日の練習で少しずつよくなっていると思います」

 本人も自覚する通り、三原は地道に努力を重ねていきながら、演技を着実に自分のものにしていく能力を持っている。自信を持っていた3回転フリップは、SP、フリー共にロングエッジになってしまったが、それもプログラムを自分のものにしていく過程で克服できるだろう。

 三原自身はもちろん悔しいだろうが、昨シーズンはGPシリーズ2戦目(中国杯)でようやく190点代に乗せている。それを考えれば、199.02点は上々のスタート。ここから一歩ずつ成長していく三原を楽しみにしたい。

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