今季途中から変わった選手サロンの風景 2年ぶりのパ・リーグ優勝を果たしたソフトバンク。16日の西武戦(メットライフD)で…
今季途中から変わった選手サロンの風景
2年ぶりのパ・リーグ優勝を果たしたソフトバンク。16日の西武戦(メットライフD)で、工藤公康監督が宙を舞った。優勝決定時点で2位に14.5ゲーム差をつける、ぶっちぎりの優勝を決めた今季。シーズン終盤になっても失速せず、楽天との差をみるみると広げていった。1年にわたり厳しい戦いを戦ってきた選手たち。そのコンディション維持には、「食」の試みが一役買っていた。
侍ジャパン社会人代表が30-0で香港に激勝、アジア選手権2大会ぶり優勝へ好発進(侍ジャパン応援特設サイトへ)ソフトバンクが勝利した試合後の食事の流れはこうだ。ベンチ前で監督、コーチ陣とハイタッチを終えた選手は、ベンチ裏で待つスタッフらともハイタッチを交わし、選手サロン、ロッカーへと引き上げていく。この選手サロンで、工藤公康監督の取材対応、そしてその日のヒーローの取材対応が行われる。
その選手サロンの景色が、今季途中から変わった。それまでは、独身者と希望者に夕食(とはいってもお弁当)が用意されることはあったが、基本的には翌日がデーゲームの時のナイターだけ。それが毎試合後、学校の給食を思い出させるような感じで、机の移動が始まり、10人が掛けられるほどのシマが出来る。取材対応が行われている中で、そこにはサラダが並び、1人、また1人と選手が集まって食事を始めるのだ。
サラダに始まり、主食、主菜、副菜と栄養バランスも考慮された食事。アメリカ帰りの川崎宗則がメジャーリーグでの経験から発案したらしいが、試合後すぐに食事を取ることは疲労回復、肉体強化に最適なのである。
選手からも好評、その効果とは?
運動を終えた後の人間の体は、エネルギーや栄養を使い果たした状態にある。運動により傷ついた筋肉を修復させ、疲労回復を促すためには、運動後早いうちにエネルギー源となる糖質や、筋肉のもととなるタンパク質などの栄養素を補給することが望ましい。運動後30分以内は成長ホルモンが多く分泌され、筋肉合成が促進される栄養補給の「ゴールデンタイム」とも言われている。その時間に栄養バランスの取れた食事を取ることは、筋肉の修復、疲労回復、さらには怪我の予防にも繋がると考えられる。
通常、選手たちは試合を終えると、風呂に入り、着替え、その日の反省や用具の掃除などをしてから家路につく。早い選手でもドームを出るのは試合終了後30分後ほど。遅い選手では2時間、3時間と経っていることもある。そこから自宅に帰るなり、飲食店に行くなりして夕食を取るとなると、試合終了後からそれなりに時間が経過している。
さらに、食事を取った後は内臓の消化活動が活発になっているために、すぐに就寝すると、内臓に負担をかける。食後3時間ほど経ってから就寝することが望ましいとされる。21時に試合が終わるとし、自宅や外食で食事を取ると、食事を開始できるのは、早くても22時を過ぎてから。そこから食事を取り、食後3時間を空けるとなれば、就寝時間は2時頃になる。
試合後すぐにドーム内で食事を取ることが出来れば、そこから自宅へと帰る時間、また自宅で過ごしている間に、食後2時間は経過するだろう。1時には消化活動が落ち着き、床に就ける。筋肉量アップ、疲労回復に効果が期待できる食事の方法は、ソフトバンクに限らず、様々なアスリートやスポーツをする子供たちにも参考になる取り組みかもしれない。
部活動などを行なっている子供などは通学の時間などがあり、運動後30分以内に食事を取ることは難しい。その場合でも、補食として、使い果たしたエネルギー(おにぎりやゼリー飲料など)とタンパク質(プロテイン飲料など)を補給しておき、その後、自宅に帰って、しっかりとした栄養バランスの取れた食事を取ることが大事になる。
選手からも好評だったという、この取り組み。些細なことかもしれないが、選手のコンディション維持には、間違いなく効果を発揮していたはずである。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)