ドヘニー戦でヒザ蹴りで波紋を広げているボール。(C)Getty Images 咄嗟に沸いた感情を抑えきれなかった。 目下、渦中のファイターとして波紋を広げているのは、WBAフェザー級王者のニック・ボール(英国)だ。去る3月15日(現地時間)…

 

ドヘニー戦でヒザ蹴りで波紋を広げているボール。(C)Getty Images

 

 咄嗟に沸いた感情を抑えきれなかった。

 目下、渦中のファイターとして波紋を広げているのは、WBAフェザー級王者のニック・ボール(英国)だ。去る3月15日(現地時間)に英リバプールで行われた元IBFスーパーバンタム級王者TJ・ドヘニー(アイルランド)との防衛戦で、相手を蹴りつける暴挙に出てしまったのだ。

【動画】明らかな故意行為の蹴り ドヘニーに見舞ったボールの蛮行

 試合開始から間もない出来事だった。初回終了直後、ヘッドロックをしたまま離さなかったドヘニーに苛立ったボールは、なにやら言葉を吐き捨てて背後から右脚付け根付近をキック。挑戦者が崩れ落ちたこともあって場内も一時騒然となったが、試合は両者に注意が与えられる形で続行となった。

 結局、地力に勝るボールが9回と10回にそれぞれドヘニーを圧倒。10回終了後に挑戦者陣営が棄権して防衛となった。

 ただ、相手を蹴りつける行為はボクシングでは御法度。ドヘニーのプロモーターを務めるマイク・アルタムラ氏も「あの行為に対する完全な無視と、審判がルールを厳格に施行しなかったことに驚いた」と糾弾。ボールの暴挙と審判の判断を問題視する声は広まった。

 もっとも、当人は自身への批判を意に介していない。試合後に英メディア『ESBR Boxing』のフラッシュインタビューを受けたボールは「子どもの頃にムエタイをやっていたから、その時の感覚がちょっと戻ってきて、つい軽くヒザを入れてしまったんだ」とニヤリ。問題の場面を次のように回想した。

「正直言って、あの瞬間、何が起きていたかは覚えていないんだ。たぶんやるべきじゃなかったけど、まぁこういうこともあるさ」

 時折、白い歯を見せながら、自身の行為を振り返るボールは「でも、あいつ(ドヘニー)は大げさに倒れてたよ。完全な演技だね」とも指摘。ドヘニーの振る舞いがオーバーリアクションであったとした上で、こう続けている。

「もうしないよ(笑)。ポイントを減点されたり、下手をすれば、失格になっていてもおかしくはなかったと思うからね。あのヒザ蹴りで減点されていた可能性はあったと思うよ。でも、まぁもう過去のことさ。今さら気にしても仕方ないでしょ。大事なのは、地元で良いパフォーマンスをして、ベルトを守ったこと。それだけで俺は十分だよ」

 最後まで悪びれる様子はなく淡々と言葉を紡いだボール。年内に想定されているボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)のフェザー級転向初戦の最有力候補ともされる男だが、その表情に反省の色は見られなかった。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

 

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