甲子園常連校に必須とされる「3点セット」がある。専用グラウンド、室内練習場、学生寮の三つだ。第97回選抜高校野球大会に初出場する滋賀短大付には、実はどれ一つとしてない。グラウンドは地域の野球場を中心に借りて練習。決して恵まれた環境とは言え…
甲子園常連校に必須とされる「3点セット」がある。専用グラウンド、室内練習場、学生寮の三つだ。第97回選抜高校野球大会に初出場する滋賀短大付には、実はどれ一つとしてない。グラウンドは地域の野球場を中心に借りて練習。決して恵まれた環境とは言えないが、選手たちの意識の高さで練習に集中。着実に力をつけてきた。
2月の練習予定表を見せてもらうと、地域の野球場である「から池グラウンド」が中心となっているが、マイネットスタジアム皇子山の室内練習場やルネス学園の野球場(甲賀市)など、8カ所もの練習場所がおさえてあった。
責任教師の平野桂一郎さん(33)は「学校のグラウンドは野球だけでは使えないので、基本はから池グラウンド。ほかは他の高校のグラウンドなどを借りていますね」と平然とした表情で話した。
雪が降った時に皇子山の室内練習場での練習を見せてもらった。基本的に野手はスイングの確認。バッティングマシンやバドミントンのシャトルを使って振り込み、球をバットの芯でとらえる練習を続ける。投手陣はブルペンで投げ込む。そんな練習シーンだった。
天候の良い日のから池グラウンド。午後3時過ぎに部員は学校からバスでやってくる。この日は約3時間の練習時間の半分以上を守備に費やした。保木淳監督(39)や水野駿部長(36)がノックをして、内外野に分かれて守備練習。フリー打撃練習は午後5時半頃から。最後の30分程度に集中的に行っていた。
保木監督は笑った。「うちはできるところでできることをやる。こういう環境なのはみな知ってうちに来ている。1回、学校の理事長に部員たちと焼き肉をごちそうになった時に『せめて室内練習場を作ってもらえないですかね』と冗談で聞いたんですけど、理事長は『おれにはこれくらい(焼き肉)しかできんからな』と言われましたよ」
様々なグラウンドなどで練習をすることについて、選手からは前向きにとらえる声が多い。関東正悟選手(2年)は「中学校の時は専用グラウンドがありました。高校に入ってからは、グラウンドでの一球の大切さを学びました。この環境でいかに自分を上げていくことができるか、集中力が高まったと思います」。
他のグラウンドで練習することが多いのが「大会になったときにそれが生きると思います」と見すえるのは森伸文(しんや)主将(3年)だ。「初めての球場でも惑わされることなく、自分たちの野球ができるはず。甲子園でプレーしたことはありませんが、自分たちのプレーができると思っています」
保木監督は「選手はみな意識高く練習していると思います。いろいろなところに協力してもらって練習場所を確保して野球をやらせてもらっている。ホームグラウンドがない分、いろいろな球場に行くとメリットがあるんだよ、と生徒たちにすり込ませています」。創部16年。逆境を力に変える術(すべ)を身につけて、夢の甲子園に挑む。(坂上武司)