2025年3月16日、鹿島アントラーズ対浦和レッズの試合が県立カシマサッカースタジアムで行われた。試合は、1-1の引き分けに終わった。鹿島のフォーメーションは「4-4-2」の中盤がボックス型。浦和は「4-2-3-1」のフォーメーションで中…
2025年3月16日、鹿島アントラーズ対浦和レッズの試合が県立カシマサッカースタジアムで行われた。試合は、1-1の引き分けに終わった。鹿島のフォーメーションは「4-4-2」の中盤がボックス型。浦和は「4-2-3-1」のフォーメーションで中盤は三角形を組んできた。
■光を見出しつつある「SB活用」
この試合を見る限り、浦和の攻撃方法は固まりつつあるようだ。人数をかけないでダイレクトでボールを動かしてゴールに迫る。ボールホルダーを追い越す選手を1人つくって、攻撃的ポジションの選手がゴール前にポジショニングする。その選手にパスを出してゴールを狙わせる。こうしたパターンが生まれつつある。
特に、サイドバック(以後、SB)の活用法に光を見出しつつある。SBがボールホルダーを追い越して、ペナルティエリアに進入する。または、SBが最初からワイドに開いて高い位置をとってチャンスメイクする。SBの背後のスペースは、センターバック(以後、CB)が両サイドに広くポジショニングして、2人のボランチは中のポジションをしめて、両ウイング(以後、WG)のどちらかは中に絞ってポジショニングする。
したがって、SBのプレーはタッチラインを駆け上がるオーバーラップか、ピッチの中の内側を走り抜けるインナーラップのどちらかになる。
浦和の課題は、守備にあることははっきりしている。どんな守備の課題かと言えば、ゾーンで守っているにしても、最終的に人につかなければならないところで、ディフェンス陣(以後、DF)がボールウォッチャーになってしまうところである。つまり、相手選手と競り合えないのである。その結果、相手をフリーにしてしまっている。
■鹿島DF陣にとって「難しい状況」
この試合は、鹿島の攻撃よりも浦和の攻撃のほうが勝っていたので、鹿島の攻撃について、語るべきことはあまりないのだが、フォワード(以後、FW)の鈴木優磨の同点に追いつくきっかけを作ったパスは、見るべきものがあった。どのように優れていたのかは、のちほど解説する。
試合を詳細に分析するために、試合のダイジェストにしたがって話を進めていく。読者の皆さんは、以下のDAZN公式ハイライトを見て、プレーの詳細部分を確認してもらえると、分析への理解がより深まることだろう。https://www.youtube.com/watch?v=GUAc23R7jew&t=2s
【48分の浦和の先制点の場面】
ゴールキーパー(以後、GK)の西川周作がキックをするときに、浦和の両CBは両サイドに広くポジショニングしている。これは、GKのキックを優先しているポジショニングであり、高い位置をとっているSBの背後のスペースを埋めているものでもある。
48分17秒の右SBの関根貴大のポジショニングを見てもらいたい。非常に高い位置を最初から取っている。両ウイングが中に絞ってポジショニングして、SBの上がれる道を作っている。
西川のロングフィードを右WGの金子拓郎がヘディングで右サイドにいる関根に送る。金子がサイドから内側に斜めに入ってきたので、左SBの安西幸輝が競り負けてしまっている。さらに、CBが競りに行かないのは、ヘディングした選手がFWのチアゴ・サンタナではなかったからである。チアゴだったなら競りに行ったのだが、右WGの金子だったので、SBの安西が競りに行ったのである。
この場面は、鹿島のDF陣にとっては難しい状況である。関川郁万が関根に寄って行かなければシュートを打たれる。右CBの植田直通は背後に松本泰志がいて、目の前にチアゴが走ってきている。CBにとっては難しい選択であるが、唯一の方法は、ボランチの樋口雄太が戻ってきてチアゴにつくことができれば、植田は松本だけをケアできたのだろう。浦和にとっては理想的な攻撃パターンである。
相手選手が戻りきれない状況を作って、早めにゴール前にボールを入れる。こうした攻撃を反復していくことでしか結果は残せないのである。
記事後半では、54分のチアゴ・サンタナのシュートの場面から分析しよう。