NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25ディビジョン3 第9節2025年3月16日(日)13:00 久留米総合スポーツセンター陸上競技場 (福岡県)ルリーロ福岡 27-54 クリタウォーター…
NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン3 第9節
2025年3月16日(日)13:00 久留米総合スポーツセンター陸上競技場 (福岡県)
ルリーロ福岡 27-54 クリタウォーターガッシュ昭島
“ギャップ”が魅力のトライゲッター、希望のハットトリック
ルリーロ福岡のリサラ・アマナキ選手。この日のハットトリックでシーズン通算トライ数は7となり、DIVISION 3でのトライランキングは4位に上昇
ルリーロ福岡(以下、LR福岡)がクリタウォーターガッシュ昭島を迎えたホストゲーム。試合は27対54と大差で敗れ、開幕からの未勝利が続く。それでも、チームには希望があった。3トライを決め、攻撃の中心となったリサラ・アマナキの存在だ。
序盤にLR福岡が決定機を作ったが、その後は防戦一方の時間が続く。3対19と点差を広げられた前半37分、ついに反撃の狼煙が上がる。アマナキが相手ディフェンスを突破し、トライエリアに飛び込んだ。後半に入ると、LR福岡は17分、19分と立て続けにアマナキがトライを決め、点差を13点まで縮めたが、相手の組織的なディフェンスを最後まで崩し切れず、逆に差を広げられて試合は終了した。
アマナキの強みは、抜群の決定力にある。俊敏さとパワーを兼ね備え、この試合でも相手のわずかなスキを突き、確実に得点へとつなげた。「トライラインだけを見て走りました。でも、同時に味方のフルバックがカバーに入っているのも意識して、タイミングを見て外側に切り返しました」。
試合後のアマナキの言葉からは、冷静な判断力と状況把握の的確さがうかがえる。ピッチでは力強く躍動する一方で、普段は物静かで控えめな性格。そのギャップもまた、アマナキの魅力の一つだ。
この試合でアマナキの2本のトライをお膳立てしたのは前田土芽だった。外側のスペースを生み出し、アマナキへ的確にボールを託した。「アマナキはシャイだけど、試合では頼れる存在。練習してきた形で2本のトライを取れたのは大きな収穫」と前田は語る。また、豊田将万ヘッドコーチも、アマナキのプレーを高く評価した。「前半はジャブを打つようなプレーで相手を揺さぶり、後半は相手の足が止まるタイミングで自らフィニッシュまで持ち込んだ。チーム全体の動きも良かったが、アマナキの決定力が光った試合だった」。
LR福岡はいまだ未勝利。しかし、アマナキはすでに次の戦いへと気持ちを切り替えている。「ラインブレイクとトライでチームに貢献したい。今日の試合を踏み台にして、もっと成長する。とにかく勝ちたい。そのために全力を尽くす」。その言葉には、勝利への強い覚悟とチームへの熱い思いが込められていた。福岡の生活にも慣れ、美味しい焼き肉を楽しむ余裕も出てきたという。
次節、ルリーロ福岡は初勝利を懸けた戦いに挑む。次こそはアマナキのトライが、歓喜の瞬間をもたらすはずだ。
(柚野真也)
ルリーロ福岡
ルリーロ福岡の豊田将万ヘッドコーチ(右)、三股久典キャプテン
ルリーロ福岡
豊田将万ヘッドコーチ
「まず、足元の悪い中で500名以上の方にご来場いただいたことに感謝したいです。なかなか勝てないシーズンが続いていますが、それでも多くの方が応援に駆け付けてくださることが、私たちの活力になっています。その期待に応えるべく準備を進めてきましたが、やはりまだセットピースの精度や試合の流れをコントロールする部分に課題が残る結果となりました。それでも、選手たちは前半から体を張り、相手を止めるシーンも多く見られました。その点は収穫だったと思います」
──敵陣深くまで攻め込む場面がありながら、ミスから一気にトライを奪われる場面も見られました。その要因と改善点についてどうお考えですか。
「特にセットピースやモールの場面でのミスが影響しました。人が密集した状況でボールを奪われ、そこからの攻守の切り替えがスムーズにできず、修正が遅れてしまったことが大きな要因です。ただ、ボールを失ったあとも選手たちは素早く戻り、対応しようとする姿勢を見せていました。そこはポジティブに捉えています。修正すべき点は多いですが、次に向けてターゲットを絞り、試合の流れを自分たちのモノにするためにチャレンジしていきたいです」
──見せ場も多い試合でした。特に3トライを奪ったリサラ・アマナキ選手の活躍について、どのように評価されていますか。
「前半は相手のディフェンスがタイトな中で、彼は的確にジャブを打つようなプレーを見せてくれました。そして後半、相手の足が止まり始めたタイミングで、ボールを上手に動かし、自らフィニッシュまで持ち込めた。これは彼自身の能力の高さだと思います。もちろん、そこまでボールを運んだバックスの働きや、フォワード陣が体を張ったことも大きな要因です」
──次戦への意気込みをお願いします。
「次は広島で試合がありますし、来月はもう一度ホストゲームのチャンスがあるので、しっかり勝負したいです。今年度の締めくくりに向けて、さらに準備を重ねていきます」
ルリーロ福岡
三股久典キャプテン
「本日は悪天候の中、多くの方に応援に来ていただき、本当に感謝しています。試合に出場したメンバーだけでなく、“ルリーロコール”や熱い声援が僕たちチーム全体への力になりましたし、その支えがあるからこそ、僕たちは戦い続けることができると思っています。今回の試合では、アタックではゲインラインをしっかり取りに行くこと、ディフェンスでは相手の強いフィジカルに対抗するためにダブルタックルを徹底することをポイントとして試合に臨みました。前半はしっかりハードワークできて良い内容でしたが、後半に点差が開いてしまいました。次戦に向けて細かい部分を詰めて、タイトなスケジュールの中でもしっかり準備していきたいと思います」
──試合全体の展開としては、かなり面白い内容になったと感じました。どのように振り返りますか?
「僕たちが試合前にキーポイントとして挙げていた部分は、しっかり遂行できたと思います。その結果、良い展開の試合にはなったのですが、セットピースやブレイクダウンの質に課題がありました。相手にボールを奪われ、それがそのまま得点につながる場面が何度かあったので、そこはしっかり修正していかなければなりません。次の試合までに詰めるべき部分を明確にして、改善していきたいと思います」
──後半の最初に、自らトライを決めました。振り返ってください。
「あの場面は、いつもの感覚で『いけるな』と感じたので、迷わずしかけました。実は自分が飼っていた愛犬の命日だったので、トライを決めることができて良かったです」
──次の試合に向けて意気込みをお願いします。
「今日の試合では手ごたえを感じる部分もありましたが、改善すべき点もはっきりしました。課題を修正し、一戦一戦成長していくことが大切です。タイトなスケジュールですが、しっかり準備をして次の試合に挑みたいと思います」
クリタウォーターガッシュ昭島
クリタウォーターガッシュ昭島のワイクリフ・パールー ヘッドコーチ(左)、北條耕太バイスキャプテン
クリタウォーターガッシュ昭島
ワイクリフ・パールー ヘッドコーチ
「まずは勝利できたことをうれしく思います。特に勝ち点5を獲得することが試合前のターゲットだったので、それを達成できたのは大きいです。ただ、試合の入りに緩さが見られました。キャリーやオフロードの場面で、パスをつなぐ意識が強過ぎて、逆に直接的なプレーが少なくなってしまった部分があります。そこは今後の修正点です。後半は良くなりましたが、それでも改善すべき点はいくつかあります。ただし、重要なのはチャンスを確実にモノにできたこと。この勝利を次につなげていくことが大切だと考えています」
──前半の立ち上がりで緩さが出た要因は何だったのでしょうか。また、ハーフタイムでの指示について教えてください。
「前半は、相手をしっかり抜いてからパスをするという基本が徹底できていませんでした。ボールをつなぐことばかりに意識が向いてしまい、結果として規律が緩んでしまったんです。ハーフタイムでは、ラインブレイクが多い試合展開の中で、選手たちにスキルと規律を持ってプレーすることの重要性を伝えました。具体的には、コンタクトで確実に勝つ、その上でオフロード(パス)をつなぐ、試合の流れの中で常に自分たちの基準と規律を意識する。この3点を強調しました。後半はある程度修正できたものの、まだ課題は残っています。今後の試合で、さらに自分たちのプレースタイルを突き詰めていきたいですね」
クリタウォーターガッシュ昭島
北篠耕太バイスキャプテン
「まず、勝ってボーナスポイントも取れたので、そこは良かったです。今日の試合では、自分たちの基準で戦うことをテーマにしていました。ですが、前半は相手に合わせてしまう場面が多かったですね。例えば、オフロードパスを無理にでもつなげようとしてしまうことがありました。結果として、それが判断ミスにつながり、逆に自分たちを苦しめるシーンが多かったと感じています。後半も同じような場面が見られたので、そこは次の試合に向けて改善していきたいポイントです」
──常にリードする展開でしたが、前半の終わりと後半の始まりにトライを奪われました。その際、グラウンド内の雰囲気やチームに焦りはあったのでしょうか。
「焦りは特になかったです。ただ、すぐにトライを取られた場面では、ディフェンスラインのコミュニケーション不足が明確に出ていました。試合中も選手同士で『もっとコミュニケーションを取ろう』と声を掛けていましたが、やはり試合の流れの中で意思疎通がうまくいかない場面もありました。その後は、もう一度シンプルなプレーに徹しようという話をして、落ち着いてプレーするようにしました」
──バイスキャプテンとして、試合中にどのような声掛けを意識しましたか。
「焦ると良くないので、意識的に落ち着かせる声掛けをしました。前半、後半ともに早い時間帯でピンチになる場面がありましたが、そういうときはチームの雰囲気が悪い方向に流れてしまいがちです。そうならないように、あえて全然関係ない話をして、みんながリラックスできるように雰囲気を変えることをしました。そういう小さな工夫も、試合の流れを変えるためには大事だと思っています」