阪神・淡路大震災の2カ月後に開催された1995年の第67回大会で選手宣誓を務めたのは、鷲宮(埼玉)の主将、長谷川大さん(47)だった。 甲子園への道中で、家や建物を覆うブルーシートを何度も見た。育英(兵庫)の藤本敦士主将(現阪神コーチ)か…

 阪神・淡路大震災の2カ月後に開催された1995年の第67回大会で選手宣誓を務めたのは、鷲宮(埼玉)の主将、長谷川大さん(47)だった。

 甲子園への道中で、家や建物を覆うブルーシートを何度も見た。育英(兵庫)の藤本敦士主将(現阪神コーチ)からは「野球部でボランティアをやっている」と聞いて驚いたという。

 ひび割れが修復されたばかりの球場で、長谷川さんは「地元の皆さんの温かい理解と多くの方々の努力で開催されることに、感謝の気持ちでいっぱいです」と宣誓した。

 あれから30年。市和歌山の主将・川辺謙信は選手宣誓で全国の高校球児や多くのファンに問いかけた。

 「皆さん、高校野球は好きですか? 私たちは高校野球が大好きです」と。野球人口が減る中、「大好きな高校野球をさらに魅力あるものに発展させ、未来の高校球児へとつないでいく責任があります」と続けた。

 戦争や災害、新型コロナウイルスなど、様々な困難を乗り越え、今年も高校野球の季節がやってきた。多くの人の支えがあってこそ、晴れの舞台に立つことができる。その感謝と自覚がこもった「責任」という川辺の言葉に、胸を打たれた。(室田賢)