NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25ディビジョン1 第11節(交流戦)2025年3月16日(日)14:30 たけびしスタジアム京都 (京都府)三菱重工相模原ダイナボアーズ 34-22 東…

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第11節(交流戦)
2025年3月16日(日)14:30 たけびしスタジアム京都 (京都府)
三菱重工相模原ダイナボアーズ 34-22 東京サントリーサンゴリアス

京都の地で上げた反撃の狼煙。昨季と同じ展開にさせなかったテコ入れと遂行力


公式戦初勝利の快挙。三菱重工相模原ダイナボアーズが34-22で東京サントリーサンゴリアスを退けた

三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)のリードで前半を終了し、後半の立ち上がりから東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)が“アグレッシブ・アタッキング・ラグビー”で反転攻勢──。

ここまでは昨季の対戦と同じ構図だった。しかし、リーグワン初開催の京都で美酒を味わったのはホストチームの相模原DB。対東京SG公式戦で初勝利となった。

群雄割拠のリーグ戦も後半に差し掛かり、どのチームもフルメンバーで戦うことは難しくなっている。相模原DBは特にフォワードで負傷者が続出し、埼玉パナソニックワイルドナイツ戦ではアンコンテストスクラムが発生するなど厳しい状況が続いていた。

3連敗でチームは11位に下落。そんな状況で迎えた今節で、相模原DBが息を吹き返す。冷たい雨が降り注ぐ中、相模原DBの選手たちはアグレッシブな熱いプレーを見せた。フォワードのフィジカルバトルで優位に立つと、バックスが次々とボールを展開し、機先を制する。

後半、東京SGがラインアウトから流大が素早く中央に展開し、チェスリン・コルビがトライゾーンに飛び込む。そこから東京SGが反撃に転ずるも、相模原DBが要所を抑えるディフェンスで主導権を握らせない。

「いくつかのポイントでどちらが上回ったかで勝負が決まるような試合」(相模原DBのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ)で、相模原DBは課題だったベーススキルにテコ入れし、セットピース、ブレイクダウンなどの局面で互角に戦った。

際立ったのはキックを使ったエリア取りの攻防。南アフリカ代表の両ウイングであるカートリー・アレンゼ(相模原DB)とコルビの空中戦も見どころの一つではあったが、後半はジャック・ストラトンがフェアキャッチを使ってエリアを挽回し、試合の流れを寸断。東京SGの攻撃フェーズが増えたところでターンオーバーする。

「後半スタートのトライから巻き返せると思ったのですが、そこからの時間もなかなかモメンタムがつかめませんでした」(流)


東京サントリーサンゴリアスも後半、追い上げたが及ばなかった

締めくくりは、ハニテリ・ヴァイレアのキックパスを受けた小泉怜史による復帰初戦でのトライ。「準備していたプレー」(ヴァイレア)で終盤にリードを広げた相模原DBが逃げ切りに成功。総力戦の80分を通じて遂行力を一貫させ、復活の狼煙を上げた。

(宮本隆介)

三菱重工相模原ダイナボアーズ


三菱重工相模原ダイナボアーズのグレン・ディレーニー ヘッドコーチ(左)、岩村昂太キャプテン

三菱重工相模原ダイナボアーズ
グレン・ディレーニー ヘッドコーチ

「京都で初めてのリーグ戦を開催できて、光栄に思います。素晴らしい街、歴史のある街で、いいラグビーを見せることができました。雨の中、両チームともにスキルの高いトライを多く見せて、いい試合内容だったと思います。タイトな試合になることは想定していて、いくつかのポイントでどちらが上回ったかで勝負が決まるような試合だと思っていました。今日はわれわれがそこで勝てただけだと思います。東京サントリーサンゴリアスは歴史のある素晴らしいチームなので、こういう試合をできてうれしく思います」

──ここまでのシーズンで苦しい時期があったと思いますが、どんなことを積み上げて今日に至りましたか。

「われわれが一番集中したのはベーススキルです。これまでの戦いでわれわれが求めている結果が残せなかった理由は、コアスキル、ベーシックスキルを遂行できていなかった部分が大きくありました。土台になるところに集中して、セットピース、ブレイクダウン、ラック、エリアディフェンスを安定させることができれば、われわれのXファクターの選手(決定的な仕事ができる選手)にボールを渡すことができるので、それを今日は見せることができたと思います」

──上位との対戦でいまの戦い方を継続するのか、それとも別の戦略を立てて何かをプラスしていくのか。考えを教えてください。

「このチームは上、このチームは下と思っていたところがひっくり返る試合が多くて、静岡ブルーレヴズが埼玉パナソニックワイルドナイツに勝ったり、リコーブラックラムズ東京も横浜キヤノンイーグルスに勝ったりとタイトなリーグになっています。面白い内容をみんなが見せてくれていると思うので、われわれはベストを尽くして今日のようにやれれば、どこにでも勝てるということを証明できたと思います。戦術に関しては毎週変わると思いますが、あとで個人的に電話でお教えします(笑)」

──クフチャ・ムチュヌ選手の評価はいかがですか。

「加入間もないですが、76分間頑張ってくれました。残念なことですが、フロントローで負傷者が多い中、彼のエナジーも良くて、すぐにチームになじんで自分たちがやりたいことに強くコミットしてくれました。良いスタートが切れたと思います」

──タイトヘッドプロップ(右プロップ/3番)をそこまで長い時間、起用することはあまりないと思います。どんな意図がありましたか。

「雨の中、普通の日本のラグビーとは違う展開だったので、コーチボックスで選手がどれだけ走っているのかを見ながら判断しました。若手のシンクル寛造も最後に入って、二つのスクラムを安定して組んでくれました。こういう経験を経てもっと成長してほしいです」

──アーリーエントリーの蔡唯志選手の評価はいかがですか。

「素晴らしいスタートを切ってくれました。負けない気持ちで、スクラムもアグレッシブにいってくれました。小泉怜史も今週戻ってきて素晴らしいトライを取ってくれました。チームの将来は若手に懸かっているので、彼らが成長しているのはうれしいです」

三菱重工相模原ダイナボアーズ
岩村昂太キャプテン

「ダイナボアーズのホストゲームを京都で行えたことをうれしく思います。個人的にも大学での4年間を過ごしたこの地に、ダイナボアーズのプロ選手として戻ってこられて光栄に思います。試合は、雨で難しかったですが、激しいディフェンスやブレイクダウンでプレッシャーを掛けることができて、昨シーズンは悔しい終わり方で敗戦を喫した(80分経過後に逆転負け)東京サントリーサンゴリアスを相手に勝ち切ることができて少しずつ成長を感じた試合でした」

──ここまでのシーズンで苦しい時期があったと思いますが、どんなことを積み上げて今日に至りましたか。

「直近の5試合で苦しい経験をして、その中で自分たちに何が足りないのかという分析をコーチ陣がしっかりしてくれました。その結果、足りないところが明確になり、それを改善するために練習に取り組んできました」

──京都でのホストゲーム開催にどんな意気込みで臨みましたか。また、雰囲気はいかがでしたか。

「バスでここに来たときに懐かしい気持ちになりました。小さい子たちが目をキラキラさせて見てくれたり、ダイナボアーズのファンが京都まで来てくれて普段と変わらない応援をしてくれたりして、懐かしい気持ちもありながら、ダイナボアーズの選手として自分の仕事を全うしようという意気込みで試合に臨みました」

──前半に先行できた要因は何でしょうか。

「雨ということもあったので、エリアをうまくコントロールできたところです。あとはディフェンスでハイプレッシャーを掛けて相手のスキルエラーを誘ったところが、前半に上手くいった要因かと思います」

──大学時代に慣れ親しんだこのスタジアムはトライゾーン/トライエリア(インゴールエリア)が狭いなど特徴がありますが、仲間に伝えたことはありますか。

「特に伝えていませんが、僕の第二の故郷とチームメートに伝えています」

東京サントリーサンゴリアス


東京サントリーサンゴリアスの小野晃征ヘッドコーチ(左)、流大ゲームキャプテン

東京サントリーサンゴリアス
小野晃征ヘッドコーチ

「両チームのファンの皆さま、寒い中ありがとうございました。今日の試合は三菱重工相模原ダイナボアーズ(以下、相模原DB)さんのほうが必死で、フィジカルで戦ってきたところにサンゴリアスとしては対応できず、こういう結果になってしまいました。自分も責任を取ってチームのマインドのところを準備して次のコベルコ神戸スティーラーズ戦に向けて切り替えていきたいと思います」

──準備の段階でのマインドセットなどで悔やまれることはありますか。

「ラグビーでフィジカルは逃げられないところだと思うので、そこは鍛える部分はありますし、マインド的に逃げられないバトルで、1対1の接点で一人ひとりの準備が足りなかったと思います。僕もチーム全員のそういう雰囲気を作れなかったことによってこういう結果になったと思います」

──後半の盛り返した戦いぶりをどのように見ていましたか。

「雨の中でハイスコアにはならないと思っていたので、一つひとつのプレー、両チームともキックが多かったのでそこの切り替えと、それに対してルーズボールを獲得すればわれわれの流れになるというメッセージをハーフタイムに伝えました。そこはできた部分とできなかった部分がありました」

──前半のラインアウトなどのセットピースで想定と違うところはありましたか。

「ラインアウトはわれわれのアグレッシブ・アタッキング・ラグビーのスタート地点なので、毎回のターゲットは100%獲得することです。自分たちでコントロールできるはずのところでエラーを起こしてしまうと、相手のボールから再開することになるので、しっかりと修正しないとチームのモメンタムに関わると思っています」

──次の試合に向けて真っ先に着手したい課題は何でしょうか。

「フィジカルの部分です。ファーストジャージーを着るメンバーはアグレッシブ・アタッキング・ラグビーを前面に見せなければいけません。今日は80分間とおしてダイナボアーズさんのペースで戦ったと思うので、もっと自分たちのペースで戦わないとダメだと思っています」

東京サントリーサンゴリアス
流大ゲームキャプテン

「寒い中、雨の中、たくさんの方に応援しに来ていただいて感謝しています。相模原DBさんのホストゲームでしたが、温かい雰囲気の中でプレーできました。京都初開催ということで、京都にゆかりのある選手も多かったので、そういう意味では良かったと思います。ただ、試合に関しては情けない試合をしてしまいました。相模原DBのほうがハングリーで勝ちたい気持ちが強くて、自分たちはまったくそう感じられない試合になってしまいました。府中にいるメンバーにすごく申し訳ないですし、いまは優勝を狙うと言えるようなチームではないと思います。ただ、次に勝っていくしかないと思うので、神戸S戦に目を向けていきたいと思います」

──準備の段階でのマインドセットなどで悔やまれることはありますか。

「全体的な準備としては概ね良かったと思いますが、どこかで勝てるのではないかというマインドがあったのかなと振り返ってみれば思います。いま、堀越(康介)がいない中でキャプテンをやっている自分の責任でもあるので、反省してしっかりレビューしたいと思います」

──前半に単調なキャッチミスをした要因は雨ですか?

「雨は1週間前から予想していたので、言い訳にならないです。個人の責任と気の緩み。ダイナボアーズのほうがハングリーで戦う気持ちを持っていました。それに負けてミスを引き起こしたと思います」

──後半はどのように意識を切り替えましたか。

「先を見ずに一個一個やっていこうとしました。セットピースからいいアタックでスタートが出来て、巻き返せると思ったのですが、そこからの時間もなかなかモメンタムがつかめない中、ズルズルといってしまった印象です」

──プレーオフトーナメントに進出するために必要なことは何だと考えていますか。

「泥臭さです。有名な選手がいますけど、ラグビーの根本は必死さやハングリーさだと思うので、そこはもう1回リーダーとして思い出さないといけません。きれいに勝つラグビーはいらないので、1点差でも勝つ、そんな気持ちをチームに思い起こさせる1週間にして神戸S戦を迎えたいと思います」

──もともと大事にしていた泥臭さが課題に挙がっている理由は何でしょうか。

「ゲームプランを遂行する意志はあるのですが、結局はフィジカルのところやルーズボールに飛び込めるのか、1対1のタックルができるかどうか、ボールを蹴られたときに必死で戻れるかどうか、そういったところだと思います。ここ何年かでメンバーが大きく代わっているので、本当に大事なことを知っているメンバーが体現しないといけない。まずは僕を含めてベテランが率先してやって若いメンバーに火を着けたいと思います」