日本女子オープンで史上初のアマチュア優勝を飾った翌年の2017年から米ツアーを主戦場とし、通算6勝をあげている畑岡奈紗。2022年4月のDIOインプラントLAオープンを最後に優勝から遠ざかっているが、今季は開幕から11位タイ、14位タイ、8…

日本女子オープンで史上初のアマチュア優勝を飾った翌年の2017年から米ツアーを主戦場とし、通算6勝をあげている畑岡奈紗。

2022年4月のDIOインプラントLAオープンを最後に優勝から遠ざかっているが、今季は開幕から11位タイ、14位タイ、8位タイと3戦連続トップ15入りしており安定感が高い。7勝目に期待して良さそうだ。

畑岡のスイングを見ると左足の動きに変化が見られる。

これまでの畑岡はインパクトで左足が跳ね上がるように地面から離れていたが、現在は左足の跳ね上がりが小さくなっている。

ドライバーショットの精度が向上してきているのは、この変化によるものかもしれない。

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■ドライバーショット スタッツ

畑岡の昨季と今季のドライバーショットのスタッツを見ると、精度が上がってきていることがわかる。

2022年と23年、76位と60位だったフェアウェイキープ率が、昨季と今季現時点(3月9日時点)では12位と21位。2022年と23年、38位と64位だったSG:ドライビングが、昨季と今季現時点では46位と19位となっている。

ただ、パッティングは安定感が低いようで、SG:パティングは2022年が32位、23年が44位であるのに対して、昨季が127位、今季現時点が111位。

パットの安定感を取り戻せれば、トップ15にとどまらず優勝争いを多く繰り広げられるのではないだろうか。

畑岡奈紗のドライバーショットスタッツ

■左足の力と動き

畑岡は左足の跳ね上がりによる起き上がりが自身のスイングの要改善点という認識を持っている。

ただ、その動きを無理に抑え込むと、力を出せずに飛距離がダウンしやすくなる。また、練習ではその部分に意識を注いでなんとかできるものの、試合ではそのことだけを考えてプレーできない。

それらの理由によりその癖を受け入れ、左足の跳ね上がりを抑え込むのではなく、跳ね上がるタイミングを遅らせる、というイメージを持つようになったようだ。それが功を奏し、ドライバーショットのスタッツが向上してきているのだろう。

左足の跳ね上がるタイミングを遅らせるということは、十分に左足に体重が乗ってから跳ね上がりを受け入れるということ。右足に体重が多く残ったまま跳ね上がると、インパクトでの起き上がりが激しくなり大きなミスが出やすくなってしまうため、それだけは避ける、という意識を持っているようだ。

ちなみに、畑岡は左足への体重移動をイメージしているが、多くのゴルファーは左足への体重移動には注意が必要。左へのイメージは上体が左へつっこんだり、腰の左へのスウェーにつながりやすくなる。

左足の力の使い方は上下(スクワットのような体を押し上げる力)や、前後(左尻を後方に動かす力)のイメージを持つと良いだろう。

■再び日本女子エースへ

畑岡は日本の女子ゴルフ界で頭一つ抜けた存在だった。2016年の日本女子オープンで史上初のアマチュア優勝を果たし、翌17年から米ツアーへ挑戦。

同年の日本女子オープンでは2位に8打差の圧勝で連覇を達成。2018年は米ツアー初優勝を飾り、日本女子オープンは惜しくも2位で3連覇とはならなかったが、TOTOジャパンクラシックで米ツアー2勝目をあげた。

2019年は米ツアー3勝目をあげ、日本女子オープン3勝目を含む国内メジャー2勝。この頃は毎年米ツアーで安定した成績をあげ、国内ツアーに出場すれば確実に優勝を争い高確率で優勝。そんな印象を与える活躍を見せていた。21年の東京五輪では銀メダルを獲得した稲見萌寧よりもメダル獲得の期待が高かった。

そんな畑岡だが、現時点の世界ランキングは日本勢7番手。若い世代の台頭もあり、日本女子のエースと称するのは厳しい現状だ。

だが、スイングの面で癖の扱い方がより定着しショットとパットがかみ合う回数が増えてくれば、かつての強さを取り戻す可能性はある。

2018年の全米女子プロと21年の全米女子オープンでは、プレーオフの末敗れた。2023年の全米女子オープンでは3日目終了時点で単独首位だった。手が届きそうで届かないメジャータイトル。

今季から米ツアーを主戦場にしている竹田麗央の米ツアーメンバーとしての初優勝時に、シャンパンシャワーを竹田に浴びせた畑岡は「シャンパンをかけられる側になりたい」と語った。

‟地に足ついた”スイングで獲得したシャンパンをかけられる舞台がメジャーであれば最高だ。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。