横浜F・マリノスが心配だ。 直近のJ1第6節終了現在、横浜FMは、1勝3分1敗の勝ち点6で15位と低迷。J2降格圏となる18位とは、わずかに勝ち点差1という状況にある(横浜FMはAFCチャンピオンズリーグとの兼ね合いで、消化試合が1試合少…
横浜F・マリノスが心配だ。
直近のJ1第6節終了現在、横浜FMは、1勝3分1敗の勝ち点6で15位と低迷。J2降格圏となる18位とは、わずかに勝ち点差1という状況にある(横浜FMはAFCチャンピオンズリーグとの兼ね合いで、消化試合が1試合少ない)。
第6節ガンバ大阪戦に2-0と勝利し、開幕戦からの連続未勝利こそ4試合でストップさせたものの、今季リーグ戦初勝利にしても、内容的に見れば手放しには喜べないものだったはずだ。
第6節のガンバ大阪戦を2-0と勝利した横浜F・マリノスだが...
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「すべての局面において、自分たちが横浜FMを上回っていた感覚がある。まだスタッツは見ていないが、いい数値が出ているのではないだろうか」
試合後、そう語ったのはG大阪のダニエル・ポヤトス監督だが、その言葉はまったく強がりには聞こえず、試合内容に照らせば極めて妥当な感想だった。
シュート数はG大阪の20本に対し、横浜FMは7本。横浜FMは効率よく、前後半にそれぞれ1点ずつを奪いはしたが、1試合を通して見ればG大阪に押し込まれ、自陣ゴール前に閉じ込められる時間が長かったことは確かだ。
横浜FMでボランチを務める渡辺皓太は、「勝たなければいけない試合だったので、とりあえずよかった」と言いつつも、「本当に今日は結果だけという感じで、内容に課題が残る試合だった」と語り、こう続けた。
「相手にボールを持たれていたし、もう少し自分たちが持つ時間を長くしたい。そこは、改善しなければいけないところ。守備でパワーを使って、(相手ボールを)奪ったときになかなか前に出ていけず、サポートも足りない。そういう状況が続いたのかなと思う」
要するに、何年か前なら横浜FMがやっていたサッカーを、対戦相手にされてしまっていたのである。
言うまでもなく、どんなに強いチームでも、すべての試合が狙いどおりになるわけではない。ときには思うようにいかず、我慢を強いられる展開が続くこともあるだろう。
だが、うまくいっているチームというのは、そのときの展開なりにやるべきことが共有され、ポジティブな空気が漂うもの。ところが、今の横浜FMを見ていると、選手の身振り手振りなどからは、彼らがフラストレーションをためている様子が垣間見えてしまうから不安になる。
誤解を恐れず言えば、現時点での順位や勝ち点は、それほど気にする必要はないだろう。実際、横浜FMがJ1を制した2019年を振り返れば、その前年は苦戦続きで、12位に終わったチームを不安視する声が少なくなかった。
それでも、当時の横浜FMに好感を持てたのは、何より目指す方向性がはっきりとピッチに表れていたから。自分たちはどんなスタイルで頂点を目指しているのかがうかがえたからだ。
ボールを保持するばかりでゴールが奪えず、逆にカウンターでの失点を増やすなど、ネガティブな要素がフォーカスされてしまうことも多かったが、少なくとも彼らのチャレンジは興味深いものに映った。
しかし、そんな横浜FMの魅力も、今季はすっかり影を潜めてしまっている。
もちろん、ACLとの兼ね合いが、彼らの戦いを厳しいものにしていることは間違いない。
まだ新しいシーズンが開幕したばかりの時期に、気候も環境も異なる海外への遠征も含めて、多くの試合をこなさなければいけないばかりか、じっくりと腰を据えてトレーニングすることもできなくなる。ACLに出場していないチームに比べ、横浜FMが不利な条件で戦っていることは確かだ。
そんななかでも、ACLでは準々決勝進出。今季から指揮を執るスティーブ・ホーランド監督が、「(J1とACLを合わせて)公式戦9試合で5勝3分1敗。もっと成長しなければならないが、安定したスタートがきれた」と語るように、ここまでの結果には納得すべきなのかもしれない。
しかし、2019年から2022年までの4シーズンで2度のJ1制覇を果たした横浜FMに期待されるのは、上位進出ではなく、タイトル奪還だろう。
昨季J1にしても最終順位こそ9位で収まったが、シーズン途中はふた桁順位に沈む時間も長く、優勝争いとは無縁のシーズンを過ごしている。
それだけに、今季は巻き返しのシーズンとしたかったはずだが、結果だけでなく、内容的に見ても、その雰囲気は漂ってこない。
新たな指揮官を迎えた横浜FMは、かつてのスタイルを取り戻そうとしているのか。あるいは、スタイルチェンジを図ろうとしているのか。
ピッチ上からは、断固とした決意よりも、むしろ選手の迷いや戸惑いを感じてしまう。