F1第1戦オーストラリアGPレビュー(後編) 2025シーズンF1開幕戦、オーストラリアGP──。 5番グリッドから挑んだ角田裕毅(レーシングブルズ)の決勝は、予報どおりの雨。予選ではこの位置をつかみ取ったとはいえ、フェラーリ勢が不発に終わ…
F1第1戦オーストラリアGPレビュー(後編)
2025シーズンF1開幕戦、オーストラリアGP──。
5番グリッドから挑んだ角田裕毅(レーシングブルズ)の決勝は、予報どおりの雨。予選ではこの位置をつかみ取ったとはいえ、フェラーリ勢が不発に終わったことを考えれば、実質的な戦いはウイリアムズ勢との7位争いとなる。
スタートでフェラーリのシャルル・ルクレール(予選7位)に先行を許し6位に落ちたものの、それは想定の範囲内。ウイリアムズのアレクサンダー・アルボン(予選6位)を抑えて、むしろ引き離していく速さを見せられた時点で、角田のレースは順調だった。
予選5位から入賞を逃して肩を落とす角田裕毅
photo by BOOZY
新人たちが次々とコントロールを失ってコンクリートウォールの餌食になっていく荒れたレースのなか、路面は徐々に乾いていき、ドライタイヤへの交換でもポジションを堅守。角田はステディな走りで6位入賞に向けてひた走っていた。
しかし、夏から秋へかけてのこの時期のメルボルンは、天候が変わりやすい。レース終盤になって、またも雨の予報が出てきた。それも「非常に強いが1〜2周だけしか降り続かない」という厄介な雨だ。
事故処理のため入っていたセーフティカーが抜けて、ドライタイヤで走り始めた3周後、その雨は最終セクターで突然やってきた。
トップのマクラーレン勢が揃ってターン12でコースオフを喫し、インターミディエイトタイヤを求めてピットレーンに飛び込む。しかし、ここまで劣勢だったレッドブルのマックス・フェルスタッペンは、一発逆転を狙ってステイアウト。ターン12をクリアした角田もステイアウト。
最終セクター以外はまだ雨が降りだしておらず、この判断は間違いではなかった。数周後には再び雨がやむ予報なのだから......。
しかし、予想に反して雨は広範囲に広がり、2周が経過してもコンディションはさらに悪化していくばかりだった。
フェルスタッペンはたまらず2周後にピットイン。それに対して、一度ピットへ呼び込んでいたレーシングブルズは角田に「ステイアウト」を指示。これが痛手となり、ルクレールと5位を争っていた角田は11位まで後退することとなってしまった。
【戦略ミスがなければ4位入賞も...】
「残念です」
ガックリと肩を落とした角田は言った。
「ウイリアムズ(アルボン/決勝5位)と戦っていたので、最低でもその前の4位では終われたと思います。だから、せめて1ポイントくらいは獲りたかったですね......」
45周目にはまだドライで走れたセクター1が、翌周には急激に雨脚が強まって完全にウェットコンディションに変化していた。それを把握してタイヤ交換を決断できなかったチームの戦略ミスだった。
「ピットとやりとりはしましたけど、かなり複雑な状況でした。前の周(45周目)はセクター1で全然降っていなくて乾いていたんですけど、1周後(46周目)にはかなり降ってきていて、ドライタイヤではどうすることもできないレベルになっていたんです。
でも、それは僕には把握できないので、チームとして(そういう情報のやりとりが必要だということを)今後に向けて学んで、さらに力強いレースができるようにしなければならないと思います」
これに対してはチームも全面的に非を認め、角田には何の責任もないと明言した。
「雨がまた降り始めるまで、裕毅は非常に強力なパフォーマンスを見せていた。だが、言い訳しようがないように、我々の最後の戦略判断は間違っていた。それによって我々は、非常に大きな代償を支払うことになってしまった。裕毅には謝罪をしたい。彼をステイアウトさせるというギャンブルがうまくいかなかったんだ」(ローラン・メキース代表)
だが、角田はチームを批判することも、叫ぶこともしなかった。
それが、チームリーダーというものだからだ。
「レースはまだ終わってないぞ、声を上げていこうぜ」
上位入賞のチャンスが途絶え、無線が滞りがちなレースエンジニアに対して、角田自身は鼓舞してマシンをフィニッシュまで運んだ。
「あのまま走っていれば、最後までウイリアムズを抑えきれたと思うので、複雑な気分です。でも、チームもまったく同じ気持ちだし、叫んでもネガティブなことを言っても何にもならないので、過去を振り返るのではなく、前を向いていくことが大切だと思っています。
こういうことが起きないようにすることが一番大切。今年はとてもタイトな争いなので、間違いなく今後もこういうレースはあると思います」
【次の中国GP、日本GPに期待】
マシンには、中団トップを争う速さがある。予選ではチーム一体となって完璧なアタックを決めることができたというポジティブな面に目を向け、角田は「過去」ではなく「未来」をよりよくするために前を向いた。
起きてしまった過去は変えられなくても、未来を変えることで、その過去の意味は変えられる──。
これまで何度もミスをおかしてきたチームと角田だが、今年は違う。1週間後の上海、そして次の鈴鹿で、そのことをしっかりと証明してくれるはずだ。