野口茂樹氏は現在50歳…会社に勤務しながら野球解説や指導者としても活躍中 中日時代の1999年、セ・リーグMVPに輝いた野口茂樹氏は現役引退を正式に表明していない。「まぁ自然消滅ですね」と言い、現在は株式会社カミヤ電機(愛知県西尾市)の営業…

野口茂樹氏は現在50歳…会社に勤務しながら野球解説や指導者としても活躍中

 中日時代の1999年、セ・リーグMVPに輝いた野口茂樹氏は現役引退を正式に表明していない。「まぁ自然消滅ですね」と言い、現在は株式会社カミヤ電機(愛知県西尾市)の営業担当兼、DAZNなどの野球解説者兼、野球教室を行う指導者の“三刀流”で忙しい日々を送っている。気になるのは13年間在籍した中日のこと。「高橋宏斗と同年代が競い合えば、いい流れになるかもしれないですよ」と期待している。

 NPBで中日、巨人の2球団に在籍した野口氏の通算成績は281登板、81勝79敗、2セーブ、4ホールド、防御率3.69。プロ16年目の2008年に巨人から戦力外通告を受けて退団後、メジャーリーグに挑戦したり、2011年には独立リーグ・三重にも在籍したが、現役引退は表明していない。「それはしなかったですね。今もしてないですけどね」と笑うが、三重に入団した2011年にチームが解散となり、NPBの12球団合同トライアウトを受け、声がかからなかったところで区切りはつけていたという。

 その後、社会人野球チームのNPOルーキーズ(愛知県常滑市)、石黒体育施設株式会社(名古屋市)を経て、2017年からはカミヤ電機株式会社に入社して営業担当を務めている。加えて野球解説者や野球指導者としても活躍中だ。「(カミヤ電機の)社長にとてもよくしていただいて、DAZNの解説とか、土日とかには野球教室もやらせてもらっています。二刀流、三刀流ですね。野球にも携われて本当にありがたいし、とても助かっています」と感謝している。

「解説の仕事も休みという形ではなくて行かせてもらっているんです。そこでのお土産話をお客さんにして、それが営業にもなっているんですけどね」と毎日が充実している様子だ。それは巨人退団後に結婚した直美夫人の支えがあってのことでもある。野口氏は「ウチの嫁曰く、あのままアメリカに行っていたら、もうお別れだったのに戻ってきたりするからって言っていましたけどね。笑い話ですけど」と言いながら「よくしてくれています」と照れるように口にした。

 長女の彩葉(いろは)さんは小学2年生。「水泳とかはやらせていますけどね」と野口氏は途端にパパの顔になって優しい笑みを浮かべた。妻からも娘からもパワーをもらって“三刀流”の生活に励んでいるが、野球解説者としては「ホントに日々勉強ですよ」ともいう。「もう僕らがやっていた時代とは野球が全く違う。毎年、毎年変わっていくんでね。(野球の仕事から)離れたらわからなくなっちゃいますよ。選手の考え方とかトレーニング方法だったりね」。

ビジターでの戦いに注目…期待する23歳前後の高橋宏斗世代

 その上で野口氏はこうも話した。「日本は6回自責点3ではなく、7回3点くらいをクオリティスタートとする方がいいんじゃないでしょうか。アメリカ(の先発投手)は中4日。日本が中6日でやるのなら、それくらいにしてもおかしくないと思うんですけどね。まぁ、理想論ですけど……」。野球の話をしはじめれば、それこそ尽きない感じだが、中日中心の解説者業でもあり、当然、3年連続最下位の古巣のことはどこよりも気になっているし、巻き返しもまた十分可能とみている。

「ビジターに強い選手がどれだけできるか。ビジターに燃える選手が出てきてほしい。ピッチャーは(本拠地の広い)バンテリンから狭い球場に変わるとピッチングも変わっていましたから。ビジター5割でいい。それでホーム7割勝てば優勝争いですよ」。投手陣はドラフト1位左腕の金丸夢斗投手も含めた23歳前後の高橋宏斗世代に期待しているという。「僕が(1歳年下の川上)憲伸に負けられないと思ったように、その年代が競い合えばチームは絶対活性化するんでね」。

 3歳年上の井上一樹監督に関しても「やっぱりコミュニケーションがすごい人ですからね。インタビューを受けたり、トークしていても素晴らしいじゃないですか」とうなる。「(前監督の)立浪(和義)さんもいい選手をとって種はまいてくれているので、あとは花を咲かせれば。セ・リーグはどこも抜けたところがないですからね。ホント、中日の優勝争いもないことはないと思っています」と真剣な表情で話した。

 愛媛・丹原高から1992年ドラフト3位で中日に入団。プロ4年目の1996年8月11日の巨人戦(東京ドーム)ではノーヒット・ノーランを達成した。中日が優勝した1999年には19勝を挙げ、セ・リーグMVPに輝いた。最優秀防御率は2回(1998、2001年)、最多奪三振(2001年)のタイトルも獲得した。その一方で左肘痛など故障にも悩まされ、特にFA移籍後の巨人では活躍できずに不完全燃焼だったが、それもまた精一杯闘ってきた証しでもある。

 今後の夢については「1回くらい(NPBの)コーチをやってみたいですけどね。チャンスがあるのであればね」と話す。その現役時代の実績、経験はもちろん、評論家、指導者としての勉強熱心さ、真面目な人柄を考えても、将来、ドラゴンズのユニホームなどに再び、袖を通す日があっても決して不思議ではないだろう。カミヤ電機の営業担当として働きながら、野球人生も継続中の野口氏はまだ50歳。かつての中日エース左腕は今も変わらず“全力投球“を続けている。(山口真司 / Shinji Yamaguchi)