2月中旬、強い日差しが照りつける米アリゾナ州グレンデールで、大リーグ・ドジャースの春季キャンプを初めて取材した。本場のキャンプ事情に驚かされる毎日だった。 なんといっても、広い。 ドジャースがキャンプの拠点とする「キャメルバックランチ」で…
2月中旬、強い日差しが照りつける米アリゾナ州グレンデールで、大リーグ・ドジャースの春季キャンプを初めて取材した。本場のキャンプ事情に驚かされる毎日だった。
なんといっても、広い。
ドジャースがキャンプの拠点とする「キャメルバックランチ」では、オープン戦を行う1万3千人収容のメイン球場のほかに10球場以上が点在している。チームは複数のグループに分かれ、各球場で練習した。
ある日、投手組の練習を取材していたら、キャッチボールをしていたはずの大谷翔平を見失った。結局、その日は最後まで大谷をみつけられなかった。大谷が数百メートル離れた別の球場で打撃練習をしていたことを、後に他メディアのニュースで知った。
今季のドジャースはロッテから佐々木朗希が加わり、山本由伸を含めて日本選手が3人に。練習の多くが一つの球場で完結する日本のプロ野球とは違い、自分一人だけではとても追い切れなかった。
開幕に向けた準備の進め方も日米で異なる。
日本の春季キャンプは2月1日、沖縄や宮崎で12球団が一斉にスタートを切る。体力づくりを含めた基礎練習に約2週間を充ててからオープン戦を迎える。
一方、大リーグのキャンプインは30球団でばらばら。今年のドジャースは全体集合の5日後にはオープン戦の初戦に臨んだ。
全体練習の時間は短い。ある日の投手組は午前9時過ぎにクラブハウスに集まった。ミーティングやストレッチを終え、実際に体を動かすのはブルペン投球や守備練習の1時間ほど。調整方法は選手に任されており、正午にはほとんどの選手の姿が見えなくなった。
昼食をまたいで練習を続けるチームが珍しくない日本とは対照的。メジャー初のキャンプだった佐々木が「初めての経験ばかり。慣れないことがすごく多い」と困惑するのも無理はなかった。
日米のさまざまな違いが目に付いた取材の中でも、不変の真理を感じた瞬間があった。
今季外野手から遊撃手に転向するムーキー・ベッツは、野手組の集合日前から精力的に内野ノックを受けていた。2季ぶりの投手復帰をめざす大谷は1週間ほど早く現地入りし、調整を重ねていた。
2人はともにリーグの最優秀選手(MVP)の受賞経験者だ。何が必要かを考え、主体的に動く。成功に欠かせない姿勢を見た。(スポーツ部 大宮慎次朗)
おおみや・しんじろう 大阪生まれ、東京育ち。2019年に入社し、仙台、横浜総局を経て23年春からスポーツ部。大リーグなどを担当している。高校では野球部に所属。「憧れるのをやめましょう」と自らに言い聞かせ、初めて渡米した。