NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25ディビジョン2 第8節2025年3月15日(土)14:30 ヨドコウ桜スタジアム (大阪府)レッドハリケーンズ大阪 7-21 豊田自動織機シャトルズ愛…

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第8節
2025年3月15日(土)14:30 ヨドコウ桜スタジアム (大阪府)
レッドハリケーンズ大阪 7-21 豊田自動織機シャトルズ愛知

“体を動かさない”入念な準備が奏功。天王山に勝利し「S愛知の歴史を塗り替えていく」


練習を休まざるをえない日があったなか、この試合に向けて、できる限りの努力をし、準備したという豊田自動織機シャトルズ愛知の湯本睦選手

ディビジョン2首位争いの構図で迎えたレッドハリケーンズ大阪と豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)の対戦は、S愛知が21対7のリードで前半を折り返した。後半はS愛知の2本のトライがいずれもTMOによってトライキャンセルとなり、互いに後半はスコアできなかったが、S愛知が14点のリードと首位の座を守り切り、勝ち点4を得た。

前半20分以降どちらに転がってもおかしくないシーンが多かったことを考えれば、流れをつかんだ序盤にS愛知がトライエリアに迫り確実にスコアできたことは大きかった。そこに大きく貢献した湯本睦が、この試合のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POTM)を獲得している。

試合後の会見で、ジェームズ・ガスケルが冗談混じりで「もしかしたら、しっかり休めばPOTMを獲得できるのかもしれないですね(笑)」と話したように、湯本はこの週のトレーニングを月曜日と火曜日を休んだ。風邪をひいていた湯本をチームは大事をとって休ませたという。水曜日は週の中休みだったため、湯本が練習に参加できたのは試合2日前の木曜日になった。

それでも、休み明けから「ミスもなく」スムーズにチームに合流した。「申し訳ないという気持ちもありましたし、試合に出られないメンバーの思いも背負っている。チームのやるべきことを明確にプレーできなければいけないので、練習に出ていないぶん、ビデオを見て練習を確認」していたことが奏功した。

そこであらためて感じたのは、「準備の大切さ」。体は休めていても、チームに貢献するためにできる限りの努力をし、準備した。湯本のその姿勢への評価もあってか、S愛知がチーム内で試合のMVPを決める際はPOTMに選ばれた選手以外になることが多いというが、湯本はこの試合でチームMVPにも選ばれた。

前のめりになることもなく、誠実な人柄を感じさせる落ち着いた口調で「今までのS愛知の歴史を塗り替えていくためには、一歩一歩だと思っている。『自分たちがD2で一番強い』と見せられる試合ができるよう、一戦一戦を頑張っていきたい」と話した湯本。今季こそD1昇格を勝ち取るため、あらためて大切さを知った準備は今後も怠ることなく、チームに貢献していく。

(前田カオリ)

レッドハリケーンズ大阪


レッドハリケーンズ大阪の松川功ヘッドコーチ(左)、茂野洸気バイスキャプテン

レッドハリケーンズ大阪
松川功ヘッドコーチ

「ホストゲームということで、天候が悪い中にも関わらず4,982人という、5,000人近い多くの方々の前で試合ができたこと、本当に良かったです。レフリーの皆さま、協会関係者の皆さま、本当にありがとうございました。

試合内容については、残念ながら負けてしまいましたが、前節から(先発を)10人を変更した中でもレッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)らしさをしっかり表現できたのではないかと感じています。とはいえ、やはりペナルティのところも改善していかなければいけませんし、前半に3本のトライ(を許したこと)で最終的に苦しむ結果となってしまったので、前半の立ち上がりやトライを取られたところの原因を追究し、また成長していけるよう頑張っていきます。ただ、80分をとおして23人の選手たちは、とても頑張ってくれました。私としては、非常に誇りに思っています」

──大きく変更していたメンバーの中には、今節がリーグワンファーストキャップの選手(先発の倉橋歓太選手、リザーブの藤井慎太郎選手)と今季初出場の選手(いずれもリザーブの深澤翔祐選手、小林正旗選手)もいました。

「ファーストキャップだった2選手については、練習でもとても元気で、フィジカルであったりスピードであったり、ポテンシャルの高い選手たちです。シーズンは長いですので、負傷者が増えることもあります。彼らの能力やエナジーは、チームにとってとてもプラスになってくると思いますので、今回チャンスを渡した形です。倉橋選手については、コリジョンや前進するところで80分間よく頑張ってくれました。大学生から社会人になってあまり日数がない中でもアジャストしてくれ、今日のゲームの中でも前進する激しさというのは見せてくれたと思います。藤井選手については、苦しい時間帯でどのタイミングで自分が出るか分からない状況だったと思いますが、しっかり良い仕事をしてくれました。コリジョンの部分でも体を当てて、前進したりモールを止めたりするシーンを見ることができました。彼らの一つひとつのプレーについて評価できますし、彼らの経験が今後チームの財産になってくるでしょう。

また、今季初めて出場した深澤選手、小林選手に関しても、常に全力で練習に取り組んでくれていて、練習中から成長しているのが見えていたので、今回出場してもらいました。彼らもリザーブでしたので、どのタイミングで出場することになるか分からない難しい中でしたが、深澤選手はセットピースのところやボールを持って走るところはゲームの中でもアグレッシブに見せてくれました。小林選手は、茂野選手に代わってウイングをしっかりカバーしてくれました。良かったと思っています」

──後半は、両チームともスコアレスでした。どのように捉えていますか。

「私たちは、後半は勝負に出たいとは考えていました。ただ、(スコアこそできなかったが)ゲームメンバーが変わっていく中で、前半と変わらぬ努力をし、相手に対してプレッシャーを与えてくれました。規律面や小さなプレッシャーを掛け続けることはテーマにしていましたので、後半もさらにその精度を高く発揮してくれたことは、リザーブ選手も活躍してくれたこともありとても良かったと感じています」

レッドハリケーンズ大阪
茂野洸気バイスキャプテン

「天候が悪い中、たくさんの方に観戦に来ていただき、本当にありがとうございました。また、この試合を開催するにあたってご尽力いただきました皆さま、そしてレフリーの皆さま、豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)の皆さま、本当にありがとうござました。

試合に関しましては、こういった天候の中ではキックが多くなるであろうということは事前に分かっていましたが、そのキックのプレッシャーゲームに負けてしまったという印象です。自分たちが相手陣に入るシーンは特に前半の最後のほうは多かったのですが、そこでスコアを取り切れずに終わってしまいました。逆に相手は少ないチャンスをモノにしていて、キックのルーズボールの処理が相手に入ってしまって、そこから得点につながってしまうところもありました。ディフェンスでうまく守れていたシーンはたくさんありましたし、本当に細かいキックのプレッシャーゲームに負けたことが一番の敗因になったと感じています。ただ、リーグ戦はまだ続きますし、来週の試合で勝利することに向けて、またチーム一丸となって頑張っていきます」

──「うまく守れていた」ディフェンスは、前節から改善して手ごたえもあったところでしょうか。

「前節と比べると、フェーズの中でのディフェンスは良くなっています。相手にプレッシャーを掛けられて大きくブレイクされるというシーンも減っていたと思います。今日の試合は、本当にキックの処理のエラーで負けてしまった印象が強いです。前半を終えたタイミングにチームで共有しましたが、キックがあったときは全力で戻ったり、全力でチェイスしたりしようという話をしました。ハイボールを蹴られたとき、戻りが悪くてルーズボールが相手にあたってしまっていたからです。自分たちは、頑張って(自陣に)帰るとか、そういうところをサボってしまったら絶対にダメなチームだと思うので、普段の練習からキックのリアクションはもっと向上していけるよう意識して取り組んでいきます」

──3月の4連戦の残り2試合は、ビジターゲームです。タイトなスケジュールが続きますが、チームとしてどのように戦っていきたいですか。

「本当にチームが一丸となって全員が試合に出る準備をしっかりとし、誰が試合に出ても遜色ないパフォーマンスを出せるようにすることが大切です。4週連続で試合が続くことは分かっていたことですので、移動があれども、それぞれがしっかりとコンディションを整え、週末に100%のパフォーマンスを出せるよう、本当に全力で準備するのみです」

豊田自動織機シャトルズ愛知


豊田自動織機シャトルズ愛知の徳野洋一ヘッドコーチ(右)、ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

豊田自動織機シャトルズ愛知
徳野洋一ヘッドコーチ

「本日は本当に素晴らしい環境の中で、5,000人近くの観客の方々の前で試合ができたこと、RH大阪関係者の皆さまにチームを代表して御礼申し上げます。ありがとうございました。昨季も同じような内容の話をさせていただきましたが、RH大阪さんがいかに大阪の地域に根付いた素晴らしいクラブであるか、本当にたくさんのファンの方々に支えられているチームだというところは、私たちS愛知は見習い、目指していくべきクラブ像だと感じております。この本当に素晴らしいチームと今日試合ができたことを心からうれしく思っております。試合の内容については、非常に苦しい80分でした。勝ち点4を取れたことは、とてもうれしく思っております」

──前半を終えたとき、前回対戦(第2節)と同じ14点差でした。ハーフタイムには、前回の(後半に逆転を喫した)ことを意識したような話もされたのでしょうか。

「前半の入り20分は、私たちがゲームをコントロールできていました。しかし、そのあとの20分は自分たちのペナルティからコントロールを失ったということで、点差があっても安堵感のあるものではありませんでした。ですので、後半に入るにあたって何か意識したというよりは、自分たちがやるべきことに立ち返れるよう確認をしました」

──後半にスコアがなかったのは、前回対戦のとき以来、今季2度目でした。後半をどのように見ましたか。

「前半のラスト20分と同様に、私たちが流れを引き寄せるべきときに自分たち自身でコントロールできなかったところは反省すべき点です。ただ、前回対戦はそのような中で逆転されて敗戦したというところから考えると、今日は勝ち点をしっかり拾えましたので、崩れそうで崩れなかったところは一つ成長できたポイントだったと感じています」

──次の試合に向けて、課題があれば教えてください。

「まず、ペナルティのところ。少し多過ぎました。イエローカードも2枚出ています。どれだけ規律を高く保てるチームなのかということを考えると、あるべき姿ではなかったと感じています。また、レフリーにしっかりアジャストしていく部分に関しても、私たちがラグビーをやっていく上で、やらなくてはならないことだと思っているので、そこはしっかりと改善していきます」

豊田自動織機シャトルズ愛知
ジェームズ・ガスケル共同キャプテン

「ボーナスポイントを取れなかったことは、とても悔しい結果となりました。コントロールできていない部分もあったので、もう少しコントロールできれば良かったと思っています。チームとしては、RH大阪さんという素晴らしいチームに勝利できたことは良かったと感じています」

──ボーナスポイントを取ることができなかった原因は、どのようなところにあるでしょうか。

「後半の二つのトライが、TMOでキャンセルとなりました。また、トライゾーンの前のところで自分たちがやるべきことをやれていなかったことが、ボーナスポイントを取れなかった理由です。そうしたところをしっかり改善していかなければいけませんし、それが今後にもつながっていくと感じています。

まず、チームとして取り組むこととしては、ブレイクダウンやボールキャリーの場面で、しっかりとクリアに見せるということも大事だと思います。強く行くべきところは強く行き、しっかりとクリアに見せていかなければいけません」

──今日のプレイヤー・オブ・ザ・マッチは、湯本睦選手でした。湯本選手のプレーはいかがでしたか。

「湯本選手は今週のトレーニングでは月曜と火曜を休んでいたので、もしかしたら毎回しっかり休めばプレイヤー・オブ・ザ・マッチを獲得できるのかもしれないですね(笑)。彼はいつも良いテンポをチームにもたらしてくれていて、それはとても良い強みになっています。これからも続けていってほしいなと思っています」