NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25ディビジョン2 第8節2025年3月15日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)清水建設江東ブルーシャークス 10-17 花園近鉄ライナーズ…

NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン2 第8節
2025年3月15日(土)14:30 江東区夢の島競技場 (東京都)
清水建設江東ブルーシャークス 10-17 花園近鉄ライナーズ

目指したのは、けがをする前より良い自分。急きょの先発出場にも充実の70分間を過ごす


清水建設江東ブルーシャークスの選手にタックル、花園近鉄ライナーズ・菅原貴人選手。充実のパフォーマンスで勝利に貢献した

清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)が、花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)を迎えた一戦は、17対10で花園Lが勝利した。

2戦連続の対戦となったが、2週間前の前回対戦は花園Lにとって「自分たちで負けてしまったようなゲーム」(向井昭吾ヘッドコーチ)だった。江東BSはディビジョン3からの昇格組で、対する花園Lは昨季ディビジョン1に所属。今季の昇格を狙う花園Lにとって、今節は負けられない一戦だった。

リベンジマッチとなる大事な一戦の早朝に、花園Lは急きょのメンバー変更を発表。先発で出場することになった菅原貴人は、その知らせを聞き、「すごく嬉しかった」と振り返る。

「いざ出場したら自分のパフォーマンスを出せる自信があったので、『絶対やったろう』という気持ちでした」

その強い意気込みの裏には、度重なるけがとの戦いがあった。昨季終了後に左足首の手術を受け、リハビリを経て復帰。しかしシーズン前に再び同じ左足を負傷し、前半戦は出遅れた。

「正直、プレシーズンは、リハビリばかりでまったく練習をしていなかったですけど、練習ができなくても自分にあてる時間を多く取るようにしました。自分の足りないところは今までのシーズンで分かっていたので、体の使い方などを見直しました。その結果、充実したリハビリの期間を送れましたね。シーズン前にけがをしたのはかなりショックでしたけど、それでもけがをする前より良い状態にもっていけている実感があります」

そして第6節の九州電力キューデンヴォルテクス戦からリザーブ入りし、3試合目でついにスタメンのチャンスをつかんだ。

「復帰したときから、ずっと自信をもっています。これまではチーム状況で後半からのインパクトを与えたり、ロックとフランカーの両方をカバーできたりという部分でリザーブに置いてもらっていましたが、今回スタートでも80分戦えるのを見せられたかなと思います」

この日は後半29分まで約70分間プレー。試合後の菅原の表情には、充実感がにじんでいた。「けがも治って波に乗れてきたので、あとは出場を続けるだけ」と、シーズン後半への意気込みを語る。

昇格へ向け、あとがない花園L。その戦いに、より強くなった菅原が勢いをもたらしてくれるに違いない。

(奥田明日美)

清水建設江東ブルーシャークス


清水建設江東ブルーシャークスの仁木啓裕監督兼チームディレクター(左)、白子雄太郎キャプテン

清水建設江東ブルーシャークス
仁木啓裕監督兼チームディレクター

「本日の試合開催にあたり、多くの方々にご尽力いただきましたこと、ありがとうございました。先々週の花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)戦では劇的な勝利を収め、良い雰囲気で試合に臨みましたが、結果としては7点差で敗れることとなりました。しかし、試合内容は非常にポジティブであり、悲観する必要はまったくないと考えています。むしろ勝てた試合だったというように思っています。勝利を逃した要因を来週1週間でしっかりと分析し、次節の豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)戦に挑んでいきたいと思います。本日はありがとうございました」

──今回の試合ではポジティブな要素が多かったとのことですが、具体的にはどの点を評価されていますか。

「われわれは今季、ディビジョン3から昇格し、対戦相手の花園LはD1から降格したチームです。二戦連続で戦う中で、確実にチームとしての力が付いていると感じました。7点差で敗れた原因は、やはり花園Lの経験や、ここぞという場面での集中力の差だったと思います。しかし、上から見ていて選手たちは本当にタフになったと思いますし、成長を実感しました。ディフェンス面では粘り強さが増し、昨季であれば確実に失点していたであろうモールも耐え抜くことができました。日に日にチームが強くなっていると感じています。D2でも十分に戦えるという手ごたえを、ファンのみなさんも実感されたのではないでしょうか。私自身も同じ思いを抱いています」

──2試合連続で後半20分以降に失点が多かった課題を克服したように見えましたが、その要因と改善した点についてお聞かせください。

「克服したというまでにはまだまだいかないのかなと思っています。ただ、点数が取られなくなったところはポジティブな内容なのかなと思います。後半に粘り強く戦えたことはポジティブに捉えています。特に、後半から投入された選手たちがエネルギーをもって試合を押し進めてくれたことは大きな収穫です。ただ、実際には後半20分を迎える前から失点しており、点数を取られて勝負に負けてしまっています。失点をゼロにするのは簡単ではありませんが、ラグビーでは精神面やマインドセットが重要な要素を占めます。今日の試合で見えた課題をしっかりと修正し、次節の首位・S愛知戦に挑みます。われわれの強みであるチャレンジ精神がなくなれば、ブルーシャークスの良いところがすべてなくなると思いますので、どんな試合であれ、試合を観に来てくださるファンのみなさんに熱い選手のプレーを見せて、何か感じてもらって帰ってもらいたいと思います」

──悪天候の中、ラインアウトのスローが安定していました。シーズン序盤と比べて、どのような成長が見られましたか。

「われわれコーチ陣が課題だと思っていることは選手も課題だと思っていて、フッカー陣が集まって継続的に練習を重ねてきました。また、臨時でクボタスピアーズ船橋・東京ベイを引退した杉本(博昭)さんがコーチになって、フッカーを指導していただいています。そういった課題をわれわれから提案するのではなくて、選手たちが自発的に『こういう練習を取り入れていいか』と積極的に提案してくれています。これは彼らが自身の課題を真剣に受け止め、成長しようとしている証だと思います。こうした努力の成果として、悪天候の中でも安定したスローイングができ、セットピースで崩れない戦いができたことが、僅差の試合展開を生み出した要因だと考えています」

──試合前のウォームアップで選手がベンチ前に整列して一斉に出て行きましたが、何か意図があったのでしょうか。

「なんだったんでしょうかね。僕は初めての光景だったのですが、時間が決められていて、ピッチに入ってしまうとそこからアップの時間がスタートしてしまうので、きちんと決められた時間で一斉に入っていったということだと思います。特に齊藤(遼太)選手が声を出して入っていったので、良い光景だなと思っていますけど、今回だけなのかな」

──今日が初先発だった藤岡竜也選手について、評価をお聞かせください。

「アーリーエントリーという立場で、物怖じするかなと思いましたが、まったくそんなことはなく、むしろ堂々とチームに溶け込んでいます。現在はラグビーに専念できる環境にあり、いつ練習場に行ってもウエイトルームで鍛錬を重ねています。彼のラグビーへの情熱や、試合に出たいという強い意志は、私だけでなくコーチや選手たちにも伝わっていると思います。若手がベテランを刺激し、チームの文化として根付いていくことは非常に良い傾向です。プレーも素晴らしく、彼がブルーシャークスに来てくれたことに感謝しています。だからこそ、彼をさらに成長させる使命をわれわれ全員が担っていると感じています。今日出た課題を必ず克服するために来週も備えてくれると思いますし、今後も彼らがステップアップしていくところを間近で見ることができると思います。本当にそれぐらいの選手だと思います」

──後半戦では、対戦相手がさらに勢いを増してくると予想されますが、どのように戦いますか。

「D3からの昇格という立場上、われわれは常にチャレンジャーです。チャレンジ精神を失ってしまうと、ブルーシャークスの良さというのはなくなりますし、仕事とラグビーの両立という、どこのチームよりもハングリーな生活をしながらラグビーに時間を捧げてくれていますので、必ず結果は出ると思っています。同じ相手に二度負けることは絶対したくないですし、選手含めて、コーチも負けず嫌いが多いですから、必ず勝って上を目指していきたいなと思います」

清水建設江東ブルーシャークス
白子雄太郎キャプテン

「セットアップというのがアタックのテーマでしたが、その点はうまく機能し、アタックできている部分もありました。しかし、どうしても得点を取り急いでしまい、ボールロストが目立ったのではないかと思います。前半だけでもおそらく10回以上のボールロストがあり、それが得点につなげられなかった要因となり、後半に響いた結果、自陣で戦うことが多くなり、追いかける展開になったことが敗因なのではないかと考えています。セットからのアタックの部分や、取り急がずにしっかりとボールを大事にして継続することを、次週に向けて意識していきたいと思っています」

──今日初先発の藤岡選手について、キャプテンから見た感想を聞かせてください。

「非常にボールタッチが多く、良いプレーをしていましたし、アグレッシブにプレーしていたと感じます。本当に物怖じすることなく、プレーしていました。また、ゲームに入り過ぎるとコミュニケーションが不足することもありますが、そのバランスも良く、アイコンタクトを取りながらコミュニケーションを図り、後ろからボールを受ける場面もありました。味方として非常に頼もしく、プレーのしやすさも感じる選手なので、新戦力、即戦力としてチームにとって大きな存在になると思います」

──後半戦は、さらに勢いを増して相手チームが臨んでくると思いますが、どう戦っていきますか。

「シーズンをとおして、一戦一戦成長していくことが非常に重要だと考えています。二巡目でそれぞれのチームと対戦しますが、あまり先を見過ぎず、まずは毎試合相手をしっかり分析し、自分たちのラグビーをどうするのかを突き詰めながら、成長しつつ戦っていければ良いのではないかと思っています」

──ボールロストが多かったことが敗因の一つだとおっしゃっていましたが、悪天候の中ではどのような点がポイントになりますか。

「ギリギリのプレーを避け、ボールを大事に扱うことが重要だと考えます。しっかりと放れるタイミングでパスを出さないとミスにつながりますし、焦らずにプレーすることが求められます。どうしても自分たちはチャレンジャーとして先にスコアしたいという気持ちがあり、焦ってしまう部分があったと思います。しかし、経験を積むことで、落ち着いてボールを継続し、しっかりとキープしながら進めていくことが重要だと思います」

花園近鉄ライナーズ


花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(左)、パトリック・タファ キャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ

「今日の試合においてはやり切るというか、準備したプランを実行し続けるところで試合に臨みましたけど、なかなか清水建設江東ブルーシャークス(以下、江東BS)のディフェンスのところと、私たちのチャンスのところでセットピースが安定しなくてリズムを作れなかったです。試合的にはもう少しトライを取れるような展開もありました。しかし、私たちのディフェンスではゴール前で非常に粘れるようなところも出てきたので、また来週に向けてディフェンスはその部分を伸ばして、アタックについてはできなかったところを修正していきたいと思います。ありがとうございました」

──二戦連続で同じ相手との試合になりましたが、どのような意気込みで臨んでいたのでしょうか。

「前回はチャンスを作りながらもトライを奪えなかったため、今回は必ず勝つという強い意気込みで臨みました。実際、もう少し得点できる展開になると思っていましたが、なかなかそれを許してくれない江東BSのディフェンスも素晴らしかったと思います」

──ビジターゲームにも関わらず、多くのファンが駆け付けていましたが、その応援をどのように感じていますか。

「いつも非常に熱い応援をいただいており、どんな試合でも足を運んでくださるファンのみなさんの存在はとても大きいです。その期待に応えるためにも、勝利を届けたいという強い気持ちで選手たちも戦ってくれたと思います」

──リーグ戦も後半戦に入りましたが、今後の戦い方についてどのように考えていますか。

「私たちはすでに負けが多いので、やはり一戦必勝の気持ちで、一戦一戦を大切に、1点でも多く点を取って必ず勝つというゲームをしていかなければいけないと思っています。それがいまのチーム状況です」

──スクラムの部分で、劣勢だったように見えました。試合前の想定として、スクラムはどの程度勝てる、もしくは押されると考えていましたか。

「勝てる、押されるというよりも、まずはやはり確実にマイボールを確保して、そこから攻撃の起点となって、そこでペナルティを取って、というチームもありますが、必ず試合の中で2本か3本はフリーキックのペナルティを取られたり、逆に取ったりすることになると思います。それはレフリングの状況にもよりますが、スクラムはまずは安定してボールを出すところに主を置いてチームを作っていく考えです」

──文裕徹選手を早めに交代しましたが、戦術的な理由でしょうか。

「そうですね。対面の相手との相性が悪くてプレッシャーを受けていたので、早めに替えてチームを修正しました」

──ウィル・ゲニア選手のキックを中心としたゲームコントロールについて、事前のプランどおりだったのでしょうか。それとも、ピッチの中でゲニア選手の判断でこのような形になったのでしょうか。

「選手の判断というよりも、今回は事前に準備したプランをしっかりと実行することを重視していました。確実に敵陣へ入り、そこからアタックをしかける戦略でした。ただ、試合の中では、私がキックを選択すべきと考えた場面で2つか3つ異なる判断がなされることもありました。選手は『イケる』と思えばいくでしょうし、キックを蹴ってほしいところで蹴ってくれなかったところについては、選手たちに自信があったと思うので、そこは選手の判断を優先したいと思います。ただ、ゲニアについては自分で判断したのではなくて、エリアを確実に取って、そこから攻撃をするという私たちのプランどおりにゲームを運んでくれていました」

花園近鉄ライナーズ
パトリック・タファ キャプテン

「今日も非常にタフな試合でしたが、勝因はディフェンスにあると考えています。江東BSは強力なアタックをもつチームであり、苦戦を強いられることは予想していました。そのため、この試合に向けて1週間しっかりと準備し、チーム全体で対策を練ってきました。簡単な試合ではありませんでしたが、ディフェンスのシステムの中でミスなくやり切れたことが、次への自信につながると思います。この自信を糧に、次節に向けてさらに良いプレーをしていきたいです」

──2戦連続で同じ相手との試合でしたが、どのような意識で臨みましたか。

「前回から改善しなければいけないことを改善してきた週でした。前回の対戦から、選手一人ひとりがかなり危機感をもつようになり、特にホストゲームを落としたわけですから、その危機感からやらなければいけないことをしっかりやっていこうという雰囲気で1週間やっていました。今回の勝ちにももちろん満足していません。ここからまだまだチームとして成長していきたいと思っています」

──ビジターゲームにもかかわらず、多くのファンが駆け付けましたが、その応援についてどう感じていますか。

「ホストのゲームであっても、ビジターのゲームであっても、いつもファンの方が来てくださっているというのは、耳にしているので分かっています。その中で、来てくれているというのを情熱に変えて、その方々に恩返しができるようにプレーをしています。今回は勝利という形で恩返しができていたらうれしいと思います」

──リーグ戦も後半戦に入りましたが、今後どのように戦っていきますか。

「ここ数週間、ここからの数試合というのが大切になってくると思います。なので、すべて一つずつ勝っていくというマインドセットでやっていきたいと思います。(向井昭吾)ヘッドコーチが言ったようにここまでの試合で多く負けているので、ここからは勝っていくという意気込みで取り組んでいきたいと思います」

──実際に江東BSとコンタクトをした感覚としては、勝てていましたか。

「激しく戦えていたと思います。ゴール前のディフェンスでもお見せできたかと思います。ゴール前のディフェンスは、時間を掛けてやってきました。『絶対にトライを許さない』という強いメンタリティーで臨むことができました。ただし、コンタクトの部分ではまだまだ改善も必要で、もっとアグレッシブに、もっとフィジカルをドミネート(支配)するようなコンタクトをチームとしてやっていけるようにと思っています。ただ、その部分では時間が掛かると思います」