第97回選抜高校野球大会初日の18日に登場する花巻東(岩手)の中村耕太朗主将(3年)は、卒業後の米国大学進学を目指している。エンゼルスの菊池雄星選手、ドジャースの大谷翔平選手ら偉大なOBたちが米大リーグで活躍し、「野球も勉強もできる…

第97回選抜高校野球大会初日の18日に登場する花巻東(岩手)の中村耕太朗主将(3年)は、卒業後の米国大学進学を目指している。エンゼルスの菊池雄星選手、ドジャースの大谷翔平選手ら偉大なOBたちが米大リーグで活躍し、「野球も勉強もできる人間になる」と米スタンフォード大に進学した2年先輩の佐々木麟太郎選手も2月の開幕戦から好調を持続している。その姿も中村主将の背中を押した。
入学直後、学年キャプテンに
地元・花巻市出身で中学時代はオール5。県立で一番の進学校に行く力は十分にあったが、「佐々木洋監督の下で野球をやりたい」と花巻東を選んだ。「『思考』を大事にする監督さんで、その指導は野球だけじゃなく、今後どう生きていくかなど高校3年間にとどまらないところにひかれた」と心酔している。実家まで歩いて20分だが、野球部は全寮制で学校隣の寮で生活している。
入学直後、佐々木監督に呼ばれ、「今日から学年のキャプテンをやりなさい。できるか?」と聞かれ、「できます」と即答した。「(強豪校として)名のある高校の学年キャプテンを引き受けることの重み」も考えたが、うれしさが勝った。
「一番衝撃的だったのは定期試験」
しかし、自分を含めて31人いる同学年の選手たちをまとめるのは想像以上に大変だった。「これまで育った環境が違うので、一人一人の考え方も野球に対するモチベーションも違う。一番衝撃的だったのは定期試験。自分は2週間前から練習しながらテスト対策をするが、中には前日だけ勉強する部員もいた」と振り返る。
「その人にとってはそれが当たり前だった。否定はせずに『1日では足りないでしょ』と水を向けた」という。2年たった今も同期で途中退部した選手はいない。
監督も認める「リーダー性」
ポジションは野球を始めた小学2年から捕手。だが、選手層が厚いため高校での公式戦出場はわずかだ。それでも佐々木監督は「歴代屈指のリーダー性がある。主将だからベンチに入れているわけじゃない」と高く評価し、2年の学年キャプテンも昨秋からの新チーム主将も任せた。「背番号10」を背負い、本人は「主将が変わらないとチームは変わらない。自分が一番変わるつもりでチームを引っ張りたい」と意気込む。
世界トップレベルの環境求め
「日本に軸足を置くのではなく、世界トップレベルで経営の勉強がしたい」と、中学1年のころから留学を志すようになった。「アメリカの野球にも興味があるので、大学で野球を続けられれば」と夢を膨らませる。
花巻東はこれまで入部希望者を原則として県内出身者に限ってきたが、4月入学の新入部員からこれまでの慣例を破る「県外出身者への門戸開放」を決め、話題を呼んだ。佐々木監督が米大学の視察を通じて「世界で活躍できる人材を輩出したい」と考えたからで、中村主将が海外を見据えるのも、その延長線上にある。
花巻東は18日の第2試合(1回戦)で、米子松蔭(鳥取)と対戦する。【早川健人】