NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25ディビジョン1 第11節(交流戦)2025年3月15日(土)13:05 豊田スタジアム (愛知県)トヨタヴェルブリッツ 22-33 東芝ブレイブルーパ…
NTTジャパンラグビー リーグワン2024-25
ディビジョン1 第11節(交流戦)
2025年3月15日(土)13:05 豊田スタジアム (愛知県)
トヨタヴェルブリッツ 22-33 東芝ブレイブルーパス東京
世界的名手の本気がチームと若手に与える刺激。敗戦の中でもトヨタVは大切なものをつかんだ
劣勢のトヨタヴェルブリッツに火を着けたのはマイケル・フーパー選手だった
今節最多の24,165人を集めたトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)対東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)の一戦は、トヨタVの猛追も一歩及ばず、昨季の王者が着実に勝ち点4を積み重ねた。
ホストゲームとなるトヨタVは今節、シーズン最大のイベント『雷神祭』を実施。豊田スタジアムはチームカラーの緑に染まった。しかし開始3分でリッチー・モウンガにトライを奪われるなど、この日も劣勢を強いられ、前半26分の時点で3対21と18点差を付けられてしまう。
このピンチでチームに火を着けたのは、1月に加入したマイケル・フーパーだった。
「試合の前からトヨタVファンのサポートをすごく感じていたし、彼らの後押しがあったからこそ追い上げることができたと思う」と、フーパーは前半31分に腕を懸命に伸ばして加入後初トライを奪うと、3分後には自陣トライライン前で絶体絶命のピンチを救うスティール(ジャッカル)。オーストラリア代表125キャップのレジェンドがビッグプレーを連発し、チームは息を吹き返した。
後半も立ち上がりに失点したものの、そのあとはフーパーに触発されたチームメートが躍動し、首位を争うBL東京を追い詰めていく。その中でも、フーパーとともにバックローを務めた初先発の青木恵斗は、タックルやキャリーでアーリーエントリーらしからぬ存在感を見せた。
「チームが良くない展開になっても、フーパーがチームを鼓舞してくれて、しんどくても動かないといけないんだというマインドに切り替わりました。技術面でも本当に学ぶことが多いので、もっと僕から聞きにいって吸収したいです」と、世界の超一流の本気に触れた青木は目を輝かせる。
アーリーエントリー組とは思えないパフォーマンスを見せた青木恵斗選手。右はスティーブ・ハンセン ヘッドコーチ
逆にフーパーに青木や若い選手に伝えたいことは何かと聞くと次のように答えてくれた。
「何も教える必要はないかな。誰かのようになるのではなく、一番良い青木の姿を見せ続けてくれればいいと思っている」
ファンのため、そして勝利のために常に自分の全力を尽くすというレジェンドのマインドセット。勝ち点はつかめなかったが、本当に大切なものを学べた試合になった。
(斎藤孝一)
トヨタヴェルブリッツ
トヨタヴェルブリッツのスティーブ・ハンセン ヘッドコーチ(右)、彦坂圭克ゲームキャプテン
トヨタヴェルブリッツ
スティーブ・ハンセン ヘッドコーチ
「われわれとしては結果を得ることはできませんでしたが、チームの意思、エナジー、そして努力というところに関しては非常に良かったので、選手のことを私は誇りに思います。とはいえ、今後は実行力を高めていく必要があると思います。その中でいま、リーグテーブルのトップにいるチームと最後まで競い合うことができましたし、チームとして自信をもっていきたいです。1週間練習でやってきたことが反映された試合でしたが、最後、勝利を落としてしまいました」
──アーリーエントリーの青木恵斗選手、小村真也選手の評価を教えてください。
「二人とも現在けが人が多くいる中での出場ですが、その中でも二人の姿に関しては誇りに思っています。今後成長あるのみだと思っていますが、二人のプレーに関しては満足しています」
──特に後半はトヨタヴェルブリッツ(以下、トヨタV)の伝統であるスクラムの強さを出していました。
「スクラムに関しては、今日すごく良かったと思います。試合をとおしていいプラットフォームを作ることができて、そこから次のプレーにつなげることができました。そういった面に関しても、次への自信としてつなげていきたいと思います。こうやって成果が出たのはハードワークが反映されたものです。コーチやフロントローが力を入れてくれた成果だと思っています」
──マイケル・フーパーがチームに与える影響について教えてください。
「彼はフィールドで結果を出す選手で、いいプレーヤーだと評価をしています。そして、彼は自分自身に対しての期待値が高い選手ですが、他者に対しても同じ期待値を求めている、そういった選手です。ポジティブで正直にドライブし、他者にもそれを要求します。だからこそ彼はリスペクトされ、チームにとって非常にいい影響を与えてくれています。今季、ピーターステフ・デュトイがいない中で、リーダーシップという観点でも埋めてくれていますし、ここにいるヨシ(彦坂圭克)やほかのリーダーにとっても非常に大きな力になってくれています。必要なタイミングで必要なことを体現し、話してくれています」
──小村真也選手に対する評価を教えてください
「彼はパス、キックともに精度が高く、非常に良い選手だと思っています。もちろん伸びシロのある選手ですが、現状には満足しています。彼はニュージーランド時代、高校では10番でプレーし、大学でも同様でした。ですが、今季はけがもあり15番でプレーをしていました。彼のキャリアは始まったばかりですが満足をしています。今日も試合にいい影響を与えてくれました」
──東芝ブレイブルーパス東京(以下、BL東京)がトヨタVの潜在能力を引き出したという側面はあると思いますか。
「そこが大きな理由だとは考えていません。今日の試合のパフォーマンスが高かったのはプレーヤーの日ごろの姿勢、ハードワークといったところに歯車が合ってきたという印象があります。トレーニングも非常にいい状態でできています。そういった状況だと、チームの中に信念というものが生まれてきます。現在、シニアプレーヤーが欠場している状況であり、チームが再生するには時間が掛かります。その中でこのチームを前進させているのは、このチームへの誇りだと思っています。選手は成長意欲をもっていますし、成長するためにハードワークを重ねています。今日はベストチームとの対戦でそういう姿が見えたと思います」
トヨタヴェルブリッツ
彦坂圭克ゲームキャプテン
「1週間いい準備をして、そのプレーはできましたけど、最後の最後でいいところまでいきながら、自分たちのミスで相手に流れを渡してしまいました。でも、そこまでいい勝負ができていましたし、結果は伴わなくても高いレベルでできているので、それを積み重ねて、次の週にはもっといいラグビー、トヨタVらしいラグビーができるように準備をしていきたいと思います」
──スクラムについてどう振り返りますか。
「前半からプレッシャーを掛けていましたし、優位に進められていると思っていました。後半に入っても同じような感じで、敵陣のゴール前でプレッシャーを掛けることもできていましたし、優位に進められたのは良かったと思います。前節はどっちつかずで、ペナルティを取ったり取られたりしていたので、今日は一貫した、いいスクラムが組めていたと思います」
──マイケル・フーパーがチームに与えている影響について教えてください。
「一貫してすごくハードワークしてくれています。そのひたむきな姿勢がチームをもっと引き上げてくれるというか、練習でもハードで質の高い練習ができていて、すごく刺激を受けています」
東芝ブレイブルーパス東京
東芝ブレイブルーパス東京のトッド・ブラックアダー ヘッドコーチ(右)、リーチ マイケル キャプテン
東芝ブレイブルーパス東京
トッド・ブラックアダー ヘッドコーチ
「お互いに非常にプレッシャーが高い試合になったと思います。前半は決定的な仕事ができてしっかり得点できましたが、イエローカードが2枚出るなど苦しい状況の中でも、選手たちはあきらめずにしっかり反応してくれたことを誇りに思っています。ただ、プレーの選択も含めて、自分たちで自分たちの首を絞めたところがありました。後半、ワンチャンスをモノにして、いい学びもあった試合でした。しっかりとしたコーチ陣に指導されているトヨタVさんに対して、敵地で勝って帰ることができたのは、非常にうれしく思っています」
──伊藤鐘平選手がトップリーグ・リーグワン通算50キャップとなりましたが評価を教えてください。
「本当に素晴らしい選手だと思っています。彼が加入してから一歩ずつ成長を見守ってきた中で、どんどん伸びてくれてグランドに出たら気持ちも表現してくれる。スタートで出してもベンチからでも正確な仕事をしてくれる。そういうところで、毎週期待をしています。彼が入団したときから知っていますし、50キャップは早かったなというのが正直な感想ですが、100キャップもすぐに来るだろうと。この成長曲線を続けてくれたらジャパンにもすぐに選ばれるのではないかと、それぐらいのクオリティーがある選手だと思います。いま素晴らしいプレーをしていますが、まだまだ彼のピークは来ていないと思います」
東芝ブレイブルーパス東京
リーチ・マイケル キャプテン
「まず、ブレイブルーパスのファンの方に、東京から豊田まで応援に来てくれて感謝しています。トヨタVとBL東京は昔からのライバルで、フィジカルバトルになるのは予想どおりでした。前半と後半の始めに良い入りができて、その流れで勢いが出たと思います。カードをもらったり、なかなか(自陣から)脱出できなかったりしましたが、それでも自分たちの強みであるボールキャリーやセットピースにフォーカスして前に進むことができたことは良かったと思います。次の埼玉パナソニックワイルドナイツ戦に向けていい準備をして頑張りたいと思います」
──後半追い上げられたが持ち直しができた要因についてどう考えていますか。
「しっかり脱出する、自陣でプレーをしないこと。あとは(小川)高廣がいない時間帯で自分たちの首を絞めたというところもありましたけど、戻ってきたところで安定したアタックができたと思います。高廣のプレーチョイスがすごく良くて、そのキックで助けられました」
──バイウィークでの準備で気を付けたことは何でしょうか。
「火曜日の練習からディフェンスがあまり良くなくて、木曜日の練習は今季で最悪な練習でした。なぜかというと、たぶんクボタスピアーズ船橋・東京ベイ戦で良い勝利を挙げて、ちょっとホッとしている部分もありました。それをしっかり理解して今日は試合に臨みましたが、割と早い時間帯で点数が取れて良かったと思います。選手のメンタルがすごく良くて、しっかり戦ったことが良かったなと。ただ、肩が頭に当たったり、レイトタックルだったり、気持ちが前に出ることは悪くはないですけど、もう少し正確性をもってやってほしいと思います」
──トヨタVには若い青木恵斗がいますが印象を教えてください。
「試合後すぐにしゃべりました。まだ大学生のフィジカルですが、当然試合をやればやるほど良くなるし、もっと強くなっていくと思います。強さもあるし、通用するのでもっとボールを持ってヒットしてほしいと思います。アーリーエントリーですよね。そういう選手がどんどん前に出てほしいと思います」