◆大相撲 ▽春場所6日目(14日、エディオンアリーナ大阪) 東前頭15枚目・安青錦(あおにしき)と西同13枚目・獅司(しし)によるウクライナ出身対決が幕内で初めて実現した。両者一歩も譲らぬ白熱の一番は、ロシア侵攻による戦禍を逃れて22年4月…
◆大相撲 ▽春場所6日目(14日、エディオンアリーナ大阪)
東前頭15枚目・安青錦(あおにしき)と西同13枚目・獅司(しし)によるウクライナ出身対決が幕内で初めて実現した。両者一歩も譲らぬ白熱の一番は、ロシア侵攻による戦禍を逃れて22年4月に来日した20歳の新入幕・安青錦が制し、星を五分に戻した。“荒れる春場所”は既に全勝が消え、トップとは2差で食らいつく。昨年の尊富士が成し遂げた新入幕V再現へ、ここから巻き返す。トップの1敗は大関・大の里、平幕の高安、阿武剋(おうのかつ)、美ノ海(ちゅらのうみ)の4人となった。
歴史的一戦で勝ち名乗りを受けた安青錦を、館内のやさしい拍手が包み込んだ。獅司との立ち合い。鋭く当たって右をのぞかせ、頭をつけて得意の体勢になった。左上手も先に奪うと、上手投げで相手を振ってよろめかせ、土俵下へ押し倒した。幕内で初のウクライナ出身対決。角界の先輩を前にしても「気にしていない」と語りつつ、「(ウクライナの人たちに)自分たちのいい相撲を見て少しでも喜んでもらえたら、自分は満足」と母国へ思いをはせた。同じ国の外国出身力士幕内初対戦は米国、モンゴルなどに続いて6例目だった。
182センチ、136キロと幕内では決して大柄ではない。自身と体格の近い3代目若乃花(元横綱)や、幕内優勝経験もある若隆景を参考に、低い立ち合いから頭を下げて、相手の上体を起こしていく緻密な相撲を追究する。193センチ、166キロと自身より一回り大きい先輩に真っ向勝負。覆いかぶさるように攻めてきても、86キロある握力で、つかんだまわしは離さなかった。
再び星を五分に戻した。初土俵から所要9場所での新入幕は年6場所制となった1958年以降では常幸龍、尊富士と並んで最速(付け出しは除く)の逸材。八角理事長(元横綱・北勝海)も「馬力が出てきたらよくなる。将来の大関候補。左上手を取った時、相手の右を絞っていた。あれはなかなかできるものではない。うまいよね」とうなった。
前半戦でトップ1敗とは2差。戦禍を逃れて3年前に来日し、関大と報徳学園を拠点に相撲を続けた。思い入れのある関西で白星を積み重ねる。「自分の相撲を取り切れれば勝ち越しにつながる」と控えめな口ぶり。荒れる春の結末は、まだまだわからない。(大西 健太)