日本初の女子プロリーグであるWEリーグが再開され、先週末も各地で試合が行われた。熱戦が繰り広げられる一方で、リーグの「…

 日本初の女子プロリーグであるWEリーグが再開され、先週末も各地で試合が行われた。熱戦が繰り広げられる一方で、リーグの「問題点」も浮かんできた。最新試合の「数字」を基に、サッカージャーナリスト後藤健生がWEリーグの未来のために、「やるべきこと」を提言する!

■新スタジアムで「2万人」超の観衆

 国連が制定した「国際女性デー」に当たる3月8日の土曜日に、広島のエディオンピースウイング広島で開催されたSOMPO WEリーグ第13節、サンフレッチェ広島レジーナ対三菱重工浦和レッズレディースの試合には2万156人の観衆が来場。WEリーグのリーグ戦での最多入場記録を更新した。

 従来の記録は、2022年5月に東京・国立競技場で開催されたINAC神戸レオネッサ対浦和の試合(神戸のホーム)での1万2330人だったから、それを8000人近く上回る大幅更新だった。

 WEリーグでは、昨年12月29日のクラシエカップ決勝(広島対神戸)で2万1524人の入場記録があるが、今回は通常のリーグ戦での最多記録となった。

 広島では、この日を「自由すぎる女王の大祭典」と称して「観客動員1万人!プロジェクト」を実施していた。

 選手自身がアイディアを出し合って、さまざまな企画を行ったそうだ。

 昨年、広島に新しい専用スタジアムが完成したことによって、Jリーグではほとんどの試合に満席に近い観客が集まり、新スタジアム効果は女子の試合にも波及。WEリーグでも多くの観客が集まるようになっていた。

 そして、チームも大健闘。

 男子のサンフレッチェ広島は昨年、J1リーグで最後まで大接戦を演じて準優勝。ACL2でも連勝を重ねて準々決勝に進出した(準々決勝ではとんでもない「事件」が起きたが……)。

 女子のレジーナもWEリーグの3強に次ぐ存在となっており、昨シーズンは5位。そして、昨年12月のクラシエカップでは神戸を破って同カップで2度目の優勝を飾っている。

 そして、3月8日の第13節は昨シーズンの女王で、観客動員力もある浦和を迎えての対戦となり、さらに、この日の広島は快晴のコンディション。こうした好条件が重なって観客動員数は目標を大きく超えた。

■観客動員は平均「1500人」前後

 2021年に始まったWEリーグ(日本女子プロサッカーリーグ)。

 当初は1試合平均5000人程度の観客動員を目標としていたものの、フタを開けてみると観客数は1500人前後で低迷したまま。これでは、クラブの収入が増えるわけもなく、今ではリーグの存続すら危ぶまれているのが現状だ。

 昨年のシーズン開幕前には2代目チェア(理事長)だった高田春奈氏が退任。Jリーグの野々村芳和チェアマンが兼任でチェアに就任した。副理事長には日本サッカー協会(JFA)の宮本恒靖会長が就任。JリーグあるいはJFAが積極的にWEリーグを引っ張っていく緊急措置である。

 創設当初は「女性活躍」の理念を高く掲げていたWEリーグ。理事の4割ほどを女性が占め、初代チェアにも女性の岡島喜久子氏が就任した。クラブにも女性役員の登用を要請し、女性監督の起用も奨励された。

 だが、アメリカのトランプ大統領がジェンダーや人種平等に逆行するような政策を打ち出している状況で、こういう言い方をすると誤解を受ける危険があるが、WEリーグが理念の実現を急ぎ過ぎた感があるのは事実。

 野々村体制では女性理事も減少した。WEリーグは「女性活躍」の理念よりも現実路線に舵を切ったのだ。理念の追求よりも、まずリーグ存続を優先した形だ。リーグとしての足固めができてから、「女性活躍」を実現していけばいいのだろう。

■最高記録は「なでしこリーグ」

 さて、広島での試合に2万人を超える大観衆が集まったものの、状況が好転しているとは決して言えない。

 たとえば、このWEリーグ第13節では広島の試合以外では、アルビレックス新潟レディース対神戸の試合には1361人が来場しただけで、それ以外の4試合はすべて入場者数が1000人を切っていた。

 新潟のホームスタジアムであるデンカビッグスワンスタジアムは、2002年ワールドカップを前に建設され、スタジアム自体に集客力がある。アルビレックスがそのスタジアムの魅力をうまく集客につなげ、JリーグでもWEリーグでも新潟は観客動員力が高い。

 2011年に日本女子代表(なでしこジャパン)がワールドカップ優勝を成し遂げた直後の8月には、当時の日本のトップリーグだった「なでしこリーグ」での新潟対神戸には2万4556人が集まっており、これが現在までの国内リーグでの最高観客動員記録となっている(当時のスタジアム名は「東北電力ビッグスワンスタジアム」)。

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