甲子園でヒットを量産したマートン。春先は苦戦を余儀なくされた彼ものちに成功を掴んだ。(C)産経新聞社「アメリカでは打者有…

甲子園でヒットを量産したマートン。春先は苦戦を余儀なくされた彼ものちに成功を掴んだ。(C)産経新聞社
「アメリカでは打者有利のカウントになれば、速球が狙うことができる」
春季キャンプが終わった日本のプロ野球界は、オープン戦が各地でスタート。12球団の調整もいよいよ本格化し、開幕の1軍、ひいてはスタメン争いも激しさを増している。
その中で注目を集めるのは、各球団に属する助っ人選手たち、とりわけ新助っ人の状況だ。今季は、中日のジェイソン・ボスラー、巨人のトレイ・キャベッジ、広島のサンドロ・ファビアン、オリックスのエドワード・オリバレスなどメジャーリーグでのプレー実績を持つスラッガーたちが相次いで加入。打線の核としての活躍が期待されている。
無論、彼らが「絶対に打つ」という保証はない。どれだけ熱心なスカウティングの末に獲得をしたとしても、水になじめずに苦戦をする可能性はある。
では、いわゆる「優良助っ人」と言われる成績を出すには何をすればいいのか。それを紐解くうえで、過去に日本でプレーした助っ人打者たちの“金言”は一つの材料になるのではないかと考える。
かつて阪神に6年間在籍し、2010年には当時にイチロー氏が保持していたシーズン最多安打記録(214安打)を更新したマット・マートンは、21年にMLB公式サイトのインタビューで「日本に来る選手は配球や投球についての考え方やメンタリティを完全に変えないといけない」と告白。メジャーリーグをはじめとする海外リーグとは異なり、要所で変化球を多用する配球にどう対応したかを語った。
「アメリカでは1-0、2-1、3-1といった打者有利のカウントになれば、速球が狙うことができる。だけど、日本では正反対なんだ。彼らはそういったカウントでも変化球を投げることをいとわない。速球を投げるのは、むしろ0-1や1-2といったカウントだ」
「スプリットやフォークの“奥行き”を理解すること、それを乗り越えることが僕にとって史上最大のチャレンジだったかもしれない。日本での1年目のキャンプでそれができず、僕はいいパフォーマンスができなかった。もちろん批判も受けたさ。でも、振り返ってみると、あそこで成功の糸口を見つけることができなかったら、キャリアは早々に終わっていたかもしれない」
韓国MVP男の漏らした本音
環境に馴染むことは当然ながら必要ではある。ただ、目に見える結果を求められる中では、弱点を執拗に突く配球スタイルへの適応が肝心と訴えるのは、マートンだけではない。21年から約2年間、阪神に在籍していたメル・ロハスJr.もそのうちの一人だ。
ロハスJr.も虎党から大きな期待を抱かれた助っ人の一人だった。
20年に打撃二冠王(本塁打&打点)とリーグMVPのネームバリューを引っ提げて阪神に入団するも、新型コロナウイルスの世界的な蔓延でチーム合流遅延。その影響で1年目を棒に振ると、契約最終年となった2年目も低調なパフォーマンスに終始。通算打率.220、17本塁打、48打点、OPS.697と鳴かず飛ばずで、契約満了とともに退団を余儀なくされた。
ファンの間で、いわゆる“ダメ助っ人”のレッテルを張られてしまったロハスJr.。現在、韓国のKTウィズでプレーする34歳は、古巣復帰を果たした昨春に同国メディア『OSEN』で、日本野球に対する意見を求められ、こうぼやいていた。
「日本と韓国は異なるスタイルの野球をしている。だから簡単に良し悪しを言うことはできない。ただ、打者として何かを話さなければならないとすれば、韓国の投手たちは、真っ向勝負が必要になるシチュエーションで、自信を持って勝負に臨む。
対して、日本の投手たちは、国際的にも有名で、どんなに優れた投手であっても、こっちがその前の打席でヒットを打っていたら、絶対にストライクゾーンには投げない。ボールゾーンに球を散らして真っ向勝負をしないんだ」
「真っ向勝負をしない」――。これはマートンが言う「考え方」と同様に勝負の駆け引きを重視する日本野球の真髄を現した言葉と言えよう。
果たして、今季からNPBでプレーする助っ人選手たちは成功を掴めるか。甲子園でもがいた男たちの言葉は、その成否を判断する貴重な材料となりそうだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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