2月下旬の「2025 SheBelieves Cup」(アメリカ開催の4か国対抗戦)で、初優勝を飾ったなでしこジャパン…
2月下旬の「2025 SheBelieves Cup」(アメリカ開催の4か国対抗戦)で、初優勝を飾ったなでしこジャパン(サッカー日本女子代表)。オーストラリア女子代表を4-0、コロンビア女子代表を4-1、そしてFIFAランキング1位のアメリカ女子代表を2-1で下して、5回目の出場で初めてトロフィーを掲げた。
ニルス・ニールセン新監督の下、4ゴール・3アシストで得点王とMVPをダブル受賞したFW田中美南、攻守で左サイドを支えたDF北川ひかる、崩しからフィニッシュの局面で輝いたMF浜野まいか、頑強な守りを見せアメリカ戦では決勝点を挙げたDF古賀塔子など、多くのタレントの活躍が光る大会となった。ただ、チームへの影響力の大きさ、決定的な場面の創出頻度、そしてインパクトという意味では、やはりMF長谷川唯が最も際立っていただろう。
そのテクニックと創造性は、まさに極上で衝撃的ですらあった。相手を翻弄し続けて決定機を生み出し、ファンを何度も魅了した。オーストラリア戦でとりわけ光っていたのが、9人で13本のパスを繋いで「まるでバルサ」と話題沸騰となった3点目のシーンにおける仕上げだ。
ペナルティーエリア手前の中央にいた背番号14は、MF藤野あおばがワンツーで抜け出したタイミングでやや左寄りに移動。縦パスを引き出すと、正面を向きながらダイレクトで右前方に柔らかいパスを出す。インサイドにしっかり当て、縦回転のかかった最高の精度とスピードのボールは、DF2人の間を見事に抜け、走り込んだ田中に完璧に繋がった。一連の流れの中で最も難易度が高く、それでいて質も伴ったまさに極上のプレアシストだった。
コロンビア戦を全休して迎えた勝負のアメリカ戦では、キックオフからわずか90秒で決定的なアシストを記録。敵陣の右サイドでスローインからボールを持った長谷川は、顔を上げて周囲の状況を確認し、内側にゆっくりと持ち運ぶと、左足をシャープに振る。地を這う鋭いパスをボックス内に差し込み、MF籾木結花の先制ゴールを華麗に演出した。
長谷川のパスは、盟友・籾木の鋭いオフ・ザ・ボールの動きにまさにドンピシャ。利き足ではない左足からのキラーパスが、世界女王の守備陣を完璧に切り裂いていた。
このアメリカ戦では、目を疑うようなワンシーンもあった。54分、GK山下杏也加が蹴ったライナーの鋭いパスに対して、長谷川がセンターサークル手前で反応。まず、右足のアウトサイドを使って自身の胸の位置あたりまで浮かせ、さらに落ちてきたところをもう一度右足アウトでスペースへ持ち出し、サポートに来た籾木へとボールを預けたのだ。
あの速度と距離のボールを難なくコントロールしてしまう選手は、世界広しと言えど決して多くないはず。文字通りの神トラップだった。直接的にゴールに繋がったシーンではないが、衝撃度で言えば最も大きく、ある意味で長谷川のクオリティーが最も分かりやすかったかもしれない。
こうした数々のスーパープレーを繰り出した今大会の長谷川に対しては、サッカーファンが何度も驚愕。中継したABEMAのコメント欄やSNSでは「レベチ」「別格」「うますぎる」「ロベルト・バッジョみたいなベルベットパスやった」「センスの塊」「やばすぎる」「日本の女帝」「真の天才」「凄くて笑ってしまった」「神トラップ」「完全になでしこの女王」「三笘ばりのトラップ」など絶賛の嵐となった。
ニールセン新監督の下で長谷川は、以前より攻撃的な役割を担っており、指揮官が志向するポゼッションスタイルも彼女に打って付け。本人もアメリカ戦後、「監督が代わってポジションや役割がみんな少し変化した。それでも自分たちの目指すボールを細かく繋ぐサッカーができたし、今日も最後に放り込まれてもしっかり耐えて逃げ切れたことは、大きな収穫でした」と手応えを感じていた。新生なでしこジャパンでも、背番号14が引き続き核となっていくのは間違いないだろう。
(ABEMA/2025 SheBelieves Cup)