◇米国男子◇AT&Tペブルビーチプロアマ◇ペブルビーチGL(カリフォルニア州)◇6972yd(パー72)松山英樹が今シ…
◇米国男子◇AT&Tペブルビーチプロアマ◇ペブルビーチGL(カリフォルニア州)◇6972yd(パー72)
松山英樹が今シーズン試合で使用したスコッティキャメロンのパターは、今のところ2つ。ひとつは「009M プロトタイプ」。こちらは年明けの「ザ・セントリー」で突如使い始め、いきなり優勝をアシストした。その後「ファーマーズインシュランスオープン」や「WMフェニックスオープン」など5試合をともにしている。もうひとつは「クラフツマン プロトタイプ」。こちらは「AT&Tペブルビーチプロアマ」の1試合だけ使い、その後姿を見ていない。
この2つのヘッド、形こそ全く違うが共通点がある。それは「センターシャフト」(スコッティキャメロンはストレートシャフトと呼ぶ)と「黒い仕上げ」ということだ。
松山英樹が黒いクラフツマンを投入か!? まさに“クロフツマン”?
センターシャフトの狙いは矯正…
2週前の「ジェネシス招待」までの西海岸シリーズを終えた時点で、グリーン上のスタッツはすこぶるいい。ストロークゲインド・パッティング(パッティングのスコア貢献度)は現在「0.474」で34位。過去3シーズン「-0.028」(114位)→「-0.119」(119位)→「-0.118」(121位)と“マイナス”が続いていた部門で、ことしは自己最高水準だ。かつては「パターが足を引っ張っている」と言われたこともあったが、スタッツを見る限りパッティングが成績を下支えしているのは間違いない。そして、その数値改善の陰の立役者が黒い新ヘッドということだ。
「ヘッドを替えて良くなったというよりは、ヘッドを替えることで(悪い癖の)矯正みたいな感じになるかなと思っていたんです。それが上手くいって、そのまま使っている感じです」と、松山も新ヘッドに手ごたえを感じている。
「矯正」とはどういうことなのだろうか。本人がそれ以上語らないので推測するしかないが、「センターシャフト=矯正」と聞いて、ひとつピンと来た。石川遼とパターコーチの丸山颯太氏が会話している内容を思い出したのだ。
要約すると、「クランクネックやショートネックはオフセットがあるので、どうしてもハンドファーストに構えやすくなり、その度合いがきつくなってくる。そのためオフセットのないセンターシャフトを使ってアドレスをリセットする」「ハンドファーストが過ぎると、基本的にフェースは右を向きやすく、インパクトでフェース面がブレやすくなる」ということだった。これまで基本的にずっとクランクネックを使ってきた松山も、同じような矯正を考えたのだろうか。
石川遼とパターコーチの会話がマニアックすぎた件 「なぜロフトは2度?」
ひとつ気になったのが、2つのヘッドともトウヒールの真ん中にシャフトが挿さっているわけではなく、トウヒールのど真ん中よりややヒール寄りにシャフトが挿さっているということ(クラフツマンはさらにヒール寄りに見える)。だからこれをセンターシャフトと呼んでいいのか疑問符がつく。その性能なども含めて、スコッティキャメロンのツアーレップをつかまえて、話を聞いてみた。
「センターとも呼べるけど、実際はちょっとヒール寄りにシャフトが挿さっているんだ。古いモデルの『ニューポート2.6』のネックのポジションと似ているよ。だからフェースバランスではなくて、ちょっとトウハング(パターを水平に置いたときのトウの傾き。傾きが大きいほど開閉が入りやすい)するのでアーキーになるよ」と解説してくれた。
なるほど。「アーキー」とはスイングアークを入れやすいことを意味する。若干ヒール寄りにシャフトが挿さっていることでフェースの開閉が入れやすいということだった。長らく“アーキー”なヘッドを使ってきた松山にとっては、案外この手のセンターシャフトのほうが替えやすかったかもしれない。完全なるセンターではないということで、ここでは“偽センターシャフト”とでも呼んでおこうか(筆者注:サッカー界で最近よく聞く“偽サイドバック”や“偽センターバック”みたいなイメージ)。
松山がこの手のネックを使うのは初めてとばかり思っていたが、本人によれば「センター、使ったことありますよ。思い出せるので1回、2回…だったかな」とのこと。「調べたら出てきますよ」とも言うので、早速ネットで検索してみたら…3回ありました。2016年「プレーヤーズ選手権」(ネオマレット)、17年「チューリッヒクラシック」(「P5 GSS」というマレット)、そして21年「ノーザントラスト」(ピン型)。P5は現在リディア・コー(ニュージーランド)が愛用しているモデルだ。
松山のパットがよく入っているということで、ほかのプロも“偽センター”黒ヘッドが気になっているとか。「イム・ソンジェ(韓国)やカーソン・ヤングが、ヒデキのパターと同じようなものを作ってほしいって言ってきたよ。早速作っているけど、ソンジェのパターは完全なるブラックじゃなくて、ちょっとブルーがかったものにする予定なんだ」(前出ツアーレップ)
なぜ黒?それは「カーボンスチール」だったから…
色の話が出たので、もうひとつ気になっていたことを掘り下げよう。それはヘッドの黒い色味。過去に松山が黒ヘッドを使ったことはおそらくないはず。なぜ今回黒を希望したのだろうか。これは本人のリクエストというよりは、「009M」(ダブルオーナイン マスタフル)のヘッド素材によるものが大きかった。ヘッドの素材が黒色なのだ。
キャメロンマニアの方はご存じかと思うが、「009M」はカーボンスチールという黒い炭素鋼でてきている。松山のエースパターの素材であるGSSなどより軟らかく、振動を抑制する効果が最も高いとされている。その打感の軟らかさから愛用者は多いが、錆びやすいのが難点。ジョーダン・スピースやキャメロン・スミス(オーストラリア)も同ヘッドの愛用者で、スピースのヘッドは錆びて褐色になっている。カーボンスチールはキャメロンからこの春登場予定の「スタジオスタイル」のインサートに採用された素材でもある。やはり注目度は高く、そうなると黒の色味は「いい素材のヘッドを選んだ結果、黒ヘッドになった」というのが正しいところだろう。ペブルビーチの1試合だけ登場した“クロフツマン”はそもそも素材が違うから、黒い塗装の仕上げにしたヘッドと推測できる。
いずれにしても矯正が功を奏し、松山のグリーン上のスタッツは大幅に改善された。果たしてこの先、「009M」を続投するのか、それともエースの「ニューポート2」に戻すか、はたまた「クロフツマン」再投入はあるのか。「マスターズ」2勝目を狙うオーガスタのグリーン上で彼がどのパターを握っているのか、非常に興味深い。(編集部・服部謙二郎)