サッカーを求めて世界各地を放浪する蹴球放浪家・後藤健生。時には、現地で遭遇したサッカー以外のものに興味を惹かれることも…

 サッカーを求めて世界各地を放浪する蹴球放浪家・後藤健生。時には、現地で遭遇したサッカー以外のものに興味を惹かれることもある。なでしこジャパンが手痛い敗戦を喫した相手に立ち向かった、あの日のように…。

■七年に一度の「御開帳」

 ちょうど、長野市の善光寺では七年に一度の「御開帳」が行われていました。

 長野市にある定額山善光寺(じょうがくさんぜんこうじ)は、643年に創建されたと伝えられている非常に古い寺です。信濃国の本田善光という人物が難波(大阪市)の堀江で阿弥陀如来像を発見して、これを持ち帰って寺を開いたそうです。当時の難波は、瀬戸内海を通じて朝鮮半島や中国大陸につながる港でしたが、沼地が広がる低湿地が広がっていたのです。

 皇極(こうぎょく)天皇の時代だというのですから、なにしろ古い話です。

 本尊の阿弥陀如来像は“絶対秘仏”で誰もそれを見ることはできません。しかし、そのご本尊の御身代わりとなる「前立本尊」という仏さまがあり、その前立本尊が七年に一度、開帳されるのです。本堂前には回向柱(えこうばしら)という大きな木の柱が立てられ、前立本尊と柱は綱で結ばれ、この回向柱を触れば、ご利益が得られるという仕組みになっています。

「御開帳は七年に一度」と書きましたが、「7年」でなく「七年」なのは、これが満の数え方ではないからです。つまり、2015年の次の御開帳は7年後の2022年ではなく、七年目の2021年。次回は、それからまた七年目の2027年ということになるのです。

■エースが決めて「1‐0」勝利

 2015年の御開帳のときには、「ドローン落下事件」が起きました。

 5月9日の午前、僧侶など数百人の行列が本堂に向かっているときに、少年が飛ばしていたドローンが石畳の上に落下して大騒ぎになったのです。幸い、負傷した人はいませんでした。

 2010年代に入って、「ドローン」と呼ばれる無人航空機がようやく普及し始めたばかりの頃だったので、余計に注目を集めたのでしょう。

 さて、試合のほうはエースの大儀見優季(現姓、永里)が決勝点を決めて、1対0で日本が勝利しました。抜群のフィジカル能力と得点感覚を持つ永里は、さまざまな理由から次第に代表に招集されなくなってしまいましたが、もったいないことでした。

 それはともかく、僕は女子代表の勝利を見届けた後は長野市内に泊まって、翌日、善光寺の御開帳を見物に行くことにしました。

 そして、試合の後、飲み屋を探して駅のそばの脇道をウロウロすることになったのです。

 そして、ある飲み屋に入ったら地元の人たちで賑わっていました。その会話が、すこぶる面白かったのを記憶しています。善光寺の坊さんたちへの悪口ばかりでした。

■僧侶の頭の上に「ドローン」

――坊さんたちは大金持ちで、外車を何台も持って、これ見よがしに乗り回している。宗教法人だから税金は払わずにけしからん! ドローンがなまぐさ坊主どもの頭の上に落ちればよかったんだ……。

 というわけである(言っておきますが、これは僕が言っているのではありません。地元のおっさんたちの意見を紹介しているだけですので、お許しください)。

 そんな会話を聞いたおかげで、翌日の見物も一層、身が入ることになりました。重要文化財の山門の上に登って見下ろすと、ウィークデー(水曜日)の昼前だというのに大変な人出です。そして、本堂前には大きな柱が立っていました。

「ああ、あれが回向柱ね」と見ていると、赤や紫の派手な衣を身にまとった坊さんがやって来ます。立派な体格で、貫禄あるありがたいお姿を見て、前夜のおっさんたちの会話を思い出し、「いい物を食っているんかいな?」という邪(よこしま)な想像も掻き立てられました。

 山門の横には、「無人飛行機の操縦、撮影、飛行を固くお断りします」という立て看板も立っていました。ありがたいことです……。

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