2月14日に迫ったJリーグ開幕を前に、先週末2つのカップ戦が行われた。その2試合からサッカージャーナリストの後藤健生が…
2月14日に迫ったJリーグ開幕を前に、先週末2つのカップ戦が行われた。その2試合からサッカージャーナリストの後藤健生が、試合に臨んだ4チームの現状からJリーグの今後まで、ズバリ占う!
■得点王争い「日本人トップタイ」の3位
ジャーメイン良は、昨シーズンはジュビロ磐田で得点力を爆発させた。途中、負傷でチームを離れる時期もありながら、19ゴールを決めて、得点王争いでは日本人トップタイの3位に入った。
一方、広島では昨年新たに加わった大橋祐紀が11ゴールを決めながら、夏にイングランド、EFLチャンピオンシップのブラックバーン・ローヴァーズに移籍してしまった。どこからでも点が取れるサンフレッチェ広島ではあるが、やはりチーム内得点王がいなくなってしまった影響は大きかったことだろう。リーグ戦の終盤で足踏みが続いていた頃、スキッベ監督が「大橋の不在が痛かった」といった趣旨の発言をしたこともある。
その大橋の代わりを任されるのが、ジャーメインである。
背番号9を背負って、最前線に位置を取ったジャーメインはヴィッセル神戸戦で90分プレーした。CFは一般的に途中で交代することが多いが、チームに慣れさせるために、あえてフル出場させたのだろう。
その90分間で、ジャーメインはチーム内最多の4本のシュートを撃ち、ポストプレーもこなしていた。だが、決定機と言えそうな場面はなかった。
前半の終盤に中野のロングスローからヘディングシュートを放った場面(GKの正面)、あるいは56分にカウンターからトルガイ・アルスランのパスに合わせて抜けだした場面(シュートはポスト脇を外れる)、さらに62分に左からクロスを入れた場面などが印象に残るだけだ。
■一番「新戦力感」が高かった18歳
つまり、ジャーメインは、まだチームに溶け切っているとは言えないようだ。
ただ、広島は完成度が高いチームなので、自分に与えられた役割が理解しやすいのは間違いない。実戦をこなしていけば、ジャーメインは得点力を発揮できるようになるだろう。昨年、やはり新戦力だった大橋がたちまちチームに溶け込んで開幕戦で2ゴールを決めたのと同じように、ジャーメインが早くうまく融合できればいいのだが……。
広島の中で一番、“新戦力感”が高かったのは、MFの中島洋太朗(18)だった。
「いや、中島は新戦力ではないだろう」というツッコミが聞えてくるが、だから“感”なのだ。
中島は試合の序盤から長いパスを効果的に使って広島の攻撃を動かした。後半に入っても、53分にはハーフライン付近から右タッチライン沿いにいた中野就斗にダイアゴナル・パスを送ってチャンスを作り、62分にもドリブルから左サイドでフリーのジャーメインにパスを出し、ジャーメインのクロスに中野が飛び込むチャンスを演出した。
ああいう長いパスやスルーパスは、もちろん昨年から再三見せていたが、この神戸戦ではそういう質の高いプレーの頻度と効果が格段に上がったように見えた。
それは、試合全体の動きが見えるようになったからではないだろうか。
■開幕ダッシュを「決める」チームは?
ボールを受けると、常に全力でプレーして、いつでも決定的な仕事をしようとしていた昨シーズンに比べると、流れを見極めて簡単にパスをはたいてボールをキープする場面と、一発の大きなパスでゲームを動かせる場面を見極めてプレーできるようになった。
そのため、本人にも余裕が生まれたし、プレーのメリハリがついて、相手にとってはより脅威を与えられるようになった。
つまり、昨年から格段に進歩したので、昨年にはいなかったプレーヤーのように思えたのだ。それを、僕は“新戦力感”という言葉で表現したかったのだ。
彼が、コンスタントにこのレベルのプレーを続けられたら、トルガイとともに広島の攻撃を組み立てる主役となれそうである。
もっとも、U-20日本代表に選出された中島は、アジアカップのためにチームを離れてしまう。日本代表が決勝まで進出したら、戻って来るのは3月第1週の第4節終了の後になる。そして、日本がU-20ワールドカップ(チリ開催)の出場権を獲得できたら、9月から10月のリーグ戦終盤で再び長期にチームを離れてしまうのだが……。
Jリーグは、いよいよ今週末に開幕する。開幕直後にどこのチームが開幕ダッシュを決めるかも興味のあるところだが、開幕してからの実戦の中で新戦力が新しいチームにうまく溶け込んでいったり、あるいは新しい指揮官のサッカーに選手たちが適合していったりする、そのプロセスを見るのもこの時期ならではの楽しみの一つなのである。