サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニ…
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、ヴィッセル神戸の「不動の左サイドバック」が新天地に選んだイングランド名門の「知られざる一面」——。
■チャンピオンシップで「日本人」が活躍
ちょっとした「チャンピオンシップ・ブーム」である。
Jリーグ王者であり、天皇杯と合わせて「2冠」チームであるヴィッセル神戸の不動の左サイドバックだった初瀬亮(27歳)が、シーズン入り直前にイングランドEFLチャンピオンシップの「シェフィールド・ウェンズデイFC」に移籍した。
「EFLチャンピオンシップ」はイングランドの「プレミアリーグ」の下に位置するリーグ、すなわち2部リーグである。少し前までは、このリーグのクラブに所属する日本人選手は多くはなかったが、昨年夏、サンフレッチェ広島からFW大橋祐紀が移籍して、いきなり活躍、脚光を浴びるようになった。
今季開幕後の8月末には日本代表MF田中碧がドイツのデュッセルドルフからリーズ・ユナイテッドに移籍、徐々に力を発揮して、現在では首位を快走し、来季のプレミアリーグ昇格が有力視されているチームに欠くことのできない存在になり、高い評価を得ている。
彼らに加え、日本代表DF橋岡大樹(ルートン)、2024年パリ五輪代表のMF斉藤光毅(クインズパーク・レンジャーズ)、同FW平河悠(ブリストル・シティ)、MF坂本達裕(コベントリー)など、中堅、若手が入り交じり、「チャンピオンシップ」の試合で日本人選手の活躍を見るのは日常となった。
■入場者数は「Jリーグ」以上、放映権収入は
「2部」といっても、世界最高峰の「プレミアリーグ」に直結するリーグである。2023/24シーズンの1試合平均入場者数は2万3048人と、Jリーグ(J1=2024年で2万355人)を大きく上回っている。放映権収入がプレミアリーグとは比較できないほど少ないので年間収益も大きくはないが、それでも24クラブの平均で60億円近くになり、公表されている2022/23シーズンのデータでは、首位のノーリッジ・シティが140億円を記録している。
日本選手にとって魅力なのは、彼らの多くが目指す「プレミアリーグ」に直結していることだろう。田中のようにクラブとして昇格できれば、自動的にプレミアリーグでのプレーが可能になるし、そうでなくてもプレミアリーグのクラブにとって日常的に目に入りやすいのが「チャンピオンシップ」なのだ。
さて、初瀬の移籍先「シェフィールド・ウェンズデイ」である。世界に何万というサッカークラブがあるが、「水曜日」という名前のチームはこれひとつではないか。
昔『ビッグ・ウェンズデー』というアメリカ映画があった。サーフィンに生きる青年たちを描いたものだったが、「水曜日にとてつもなく大きな波がやってくる」という伝説を信じて待つという話だったと思うが、初瀬が移籍したシェフィールドの「ウェンズデイ」も、なかなか「ビッグ」なクラブなのである。
■サッカーはクリケットの「冬季トレーニング」
話は19世紀前半にさかのぼる。1820年、シェフィールド市の6人の商人がクリケットクラブをつくった。この頃、商店は「水曜休み」が多く、水曜日にプレーできる同志を集めてのクラブ創設だった。当時シェフィールドは北部イングランドのクリケットの中心都市で、「ザ・ウェンズデイ」も強豪のひとつとなっていった。
1867年、そのクリケットクラブがサッカークラブを創設する。クリケットは夏季限定の競技なので、冬季のトレーニングにサッカー(フットボール)を採り入れるためだった。これが「シェフィールド・ウェンズデイFC」である。
イングランドでは、「ロンドン目線」でこの地域を「北部」と呼んでいるが、実際にはブリテン島のちょうど中央部にあるヨークシャー。シェフィールドは7つの丘に囲まれた盆地のような場所にあたる。「シェフィールド」の地名は、町の中央を流れる(現在は都市部は地下水路になっているが…)「シーフ川」のほとりに拓かれた町を意味するという。「sheffield」と「f」が重なるスペルになっている(Shef=シーフ川 field=平地)のは、そのためだ。(2)に続く。