2月14日に迫ったJリーグ開幕を前に、先週末2つのカップ戦が行われた。その2試合からサッカージャーナリストの後藤健生が、試合に臨んだ4チームの現状からJリーグの今後まで、ズバリ占う!■あえて「ベストメンバー」を送り出す ちばぎんカップの前…
2月14日に迫ったJリーグ開幕を前に、先週末2つのカップ戦が行われた。その2試合からサッカージャーナリストの後藤健生が、試合に臨んだ4チームの現状からJリーグの今後まで、ズバリ占う!
■あえて「ベストメンバー」を送り出す
ちばぎんカップの前日には、第32回FUJIFILM SUPER CUPが行われ、昨年J1リーグ準優勝のサンフレッチェ広島が、2冠王者のヴィッセル神戸に2対0で完勝して、完成度の高さを見せつけた。
東京・国立競技場に大会史上最多となる5万3343人という大観衆を集めた準公式戦ではあるが、チームにとってはリーグ開幕まで1週間のプレシーズンマッチの一つである。それぞれの監督の考え方を反映して、それぞれのやり方で戦ったのは、ちばぎんカップと同じである。
広島のミヒャエル・スキッベ監督は、ベストメンバーに近いチームをピッチに送り込み、一方、神戸の吉田孝行監督は武藤嘉紀や大迫勇也、酒井高徳といった主力を温存してスタートした。
神戸は中3日でAFCチャンピオンズリーグ(AFC)エリートの上海海港戦を控えているからであるが、一方の広島も木曜日にはACL2のナムディン戦がある。ナムディン戦まで中5日あるとはいえ、こちらはアウェーゲーム。ベトナム北部ナムディンまでの長距離移動があるのだ。
しかし、スキッベ監督はそれでもあえてベストメンバーを送り出した。
これは、両監督の対照的な考え方の違いである。
■優勝を狙う広島の「最大のテーマ」に
昨シーズンも、スキッベ監督は天皇杯やルヴァンカップなどの国内カップ戦やACL2であまりターンオーバーを使わずに戦った。広島はそれほど層が厚いチームではないからでもあるが、この辺りは監督の考え方であり、「それでも、私はうまくチームをマネジメントすることができる」という監督の自負心でもあるように思う。
一方、神戸の吉田監督は徹底してターンオーバーを使った。リーグ戦とカップ戦で先発11人全員を入れ替えることさえあった。
広島はそれでも猛暑の夏を乗り切ってFC町田ゼルビアを引きずり降ろして首位に立ったが、リーグ戦では終盤に失速した。当時の広島は、明らかに疲労が蓄積し、選手の動きにキレを欠いていたように見えた。
つまり、僕は昨年のJ1リーグの勝敗を分けたのは、徹底してターンオーバーを使った神戸と主力を使い続けた広島の差だったと思っている。
だが、試合後の記者会見で「使える選手はJ1リーグでいちばん少ない」と語ったスキッベ監督は今シーズンも主力を使い続けながら乗り切ろうとしているようだ。今シーズンは、シーズン前半にはACL2の決勝ラウンド、そして、シーズン後半にはACLEがあるので、広島にとっては昨年以上に負担が大きくなるのだが……。
ここをどう乗り切れるかが、優勝を狙う広島にとっての最大のテーマとなるだろう。
■昨シーズンまでの武器が「再び炸裂」
さて、そういうわけでベストメンバーを起用した広島が新戦力や若手主体の神戸に勝利したことは驚くべきことではない。
3バックの堅い守備と、サイド攻撃からの得点。昨シーズンまでの広島の武器が、再び炸裂した。神戸戦では右のWBでプレーした中野就斗は、12分に攻撃に上がってきたCBの塩谷司とのパス交換から素晴らしいクロスを入れ、これをトルガイ・アルスランが狙いすましたヘディングでクロスバーに当ててゴールを決めた。
どこのポジションに入っても高いレベルのプレーを見せる中野。そして、経験豊富なトルガイは、今シーズンもこのチームの中心となっていくだろう。また、34歳になったトルガイはコンディションも非常に良さそうで、昨年は途中加入の中での活躍だったが、今シーズンは広島のサッカーにもますます適合して、さらなる活躍が期待できそうだ。
ゴンサロ・パシエンシアはわずか数か月で退団してブラジルに渡ったものの、その他の主力組は健在。
そんな広島で、注目すべき新戦力はなんといってもジャーメイン良であろう。(3)に続く。