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■簡単なようで、簡単ではない

 プロ野球のシーズンを戦う上で、外国人選手の存在は重要な要素のひとつだ。選手一人の力でチームの順位が大きく変わることはないものの、短期間で打線の長打力を向上させたいときなどは、ドラフトで獲得した若手を育成するよりも、パワーのありそうな外国人選手を獲得する方が手っ取り早く済むことが多い。

 だが、当然ながら獲得した外国人打者が期待通りに活躍するとは限らない。特に、日本での実績がない新規の獲得選手は、比較的コストを抑えやすい反面、実力は未知数な部分が多く、成功するかどうかはギャンブル的な要素が強い。

 今シーズン新たに来日した14人の外国人打者の成績を見ても、自信を持って活躍したと言えるのはゲレーロ(中日)、ロメロ、マレーロ(ともにオリックス)の3人くらいだろう。慣れない環境の中で、しかも対戦経験の少ない投手ばかりを相手にしながら結果を残すのは、決して簡単ではないということが分かる。

 それだけに、ゲレーロのような“当たり”の助っ人に恵まれたときは、球団にとっても喜びが大きいはずだ。中日は近年、ルナ、クラーク、ナニータ、ビシエドといった来日1年目からハイレベルな結果を残せる打者を新規で獲得することに成功しており、外国人打者の補強に関して、精度の高いスカウティングを見せている。決して高すぎない年俸でそれを実現している点も評価すべきだろう。

■がまんして使い続けることの難しさ

 さて、中日では2009年のブランコ以来となる最多本塁打のタイトルが見えてきたゲレーロだが、シーズン序盤は決して好成績とは言えず、4月終了時点ではOPS.599と低迷していた。100打席目に差し掛かるあたりから調子を上げ、200打席に到達する頃にはOPS.900に迫る活躍を見せたが、競争の激しいチームや即結果を求められる環境下であれば、本来の力を発揮する前にファームに落とされていたかもしれない。

 このように、外国人打者の起用にあたっては、多かれ少なかれ、ファーム行きを命じられるまでの“猶予”のようなものが存在する。もちろん、起用し始めてすぐに結果が出ればそれに越したことはないが、たとえ結果が出なくても、環境や対戦する投手に慣れるまでの時間を考慮し、ある程度はがまんして使い続けるものだ。ゲレーロの活躍も、そのがまんが報われた結果と言っていいだろう。

 一方で、結果の出ない打者をいつまでも使い続けることはチームにとってマイナスだ。実力が不透明な打者に打席機会を与えることはある種の賭けに近い“投資”であり、リスクとなる。どのチームも、見返りのない投資はできる限り避けたい。だからと言って、すぐに見切りをつけてしまっては打てるはずの打者も打てない。辛抱が必要である。そんなジレンマの中で、首脳陣も難しい判断を迫られているのだろう。チーム事情もさまざまだから、このあたりは何が正解だ、というのを言いづらい。

■200打席立たないと、実力は測れない

 では、あくまで一般論として見た場合、なかなか結果が出ない選手に対して、どこまでがまんするのが適切なのだろうか。一概に言えない部分であることは承知の上で、過去の例を参考にしながら探っていきたい。

 まず、来日1年目の外国人打者が本来の力を発揮するまでに、どのくらい打席が必要なのかを考えたい。ここでは、来日から500打席目に到達した時点のOPSを“本来の力”による成績と仮定し、各打者が打席数を消化するのに伴って、どのように“本来の力”に近づいていったかをグラフ化してみる。

 一本一本のラインが打者一人ひとりを表しており、500打席到達時のOPSを基準に、そこに至るまでの推移をプロットしている。これを見ると、100打席を消化した時点ではかなりばらつきが大きく、この段階の成績から本来の力を測定するのはやや難しいことが分かる。仮にその時点でパフォーマンスが悪くても、その後どう変わるかは読みづらく、逆もしかりということだ。もう少し時間を進めると、250打席を消化する頃には多くの打者が“本来の力”の成績に近づいてきている。この段階まで来ると、成績から打者の能力をおおよそ見定めることができそうだ。

 もちろん、中には100打席を消化した時点からほとんど変動がない選手もいれば、逆に300打席を消化してから一気に上昇している選手もいるが、あくまで全体的な傾向としては、200~250打席くらいが、来日1年目の外国人打者に与えるべき妥当な“猶予”と言えるのではないだろうか。

■与える価値のある、あと60打席の猶予

 これを踏まえた上で、あらためて今シーズンの新外国人選手たちを見てみると、ロジャース(阪神)以下、7人の打者が150打席に満たないまま来日1年目のシーズンを終えようとしている。もちろん、全ての外国人打者に200打席以上の機会を与えるのは現実的に不可能なので、これ自体は問題ではない。彼らの限られた打席の中での成績を見ても、ほとんどの打者は早い段階で見切りをつけられてしまっても仕方がない内容となっている。打席機会を与え続ければどこかで浮上のきっかけを掴めたかもしれないが、こればかりは正解がなく、難しい部分だ。

 強いて言えば、ロジャースに関してはもう少し機会を与えてみてもよかったかもしれない。確かに現在のOPS.759はやや物足りない数字だが、ほかの6人の打者に比べればまだ期待が持てる数字で、ゲレーロも140打席消化時点ではOPS.762だった。シーズン途中の入団でそもそも残りの期間が少なかったこともあり、なかなか余裕を持った起用ができなかったのが惜しまれるところだろうか。残留は厳しいとの報道も出ているが、来季もチャンスがあるのか、正式な発表を待ちたい。

 参考までに、ここ10年のうちに来日した外国人打者の中で、140打席消化時点のOPSが.740~.780だった選手のその後の推移を見てみよう。2010年の金泰均(ロッテ)は一時的に.950を超えたが、500打席消化時点では.800ほどに落ち着いており、ゲレーロのような大幅な上昇は珍しいケースであることが分かる。もちろん、サンプルとなる人数が少ないためこれをもとにロジャースを使い続ければ…、という話まではできないが、過去の事例として示しておきたい。

■外国人選手にとっての日本球界

 最後に、来日1年目にスロースタートを見せた主な打者を紹介しておこう。2012年の李大浩(オリックス)、ミレッジ(ヤクルト)、2015年のレアード(日本ハム)、ウィーラー(楽天)の4人だ。彼らは150打席を消化するあたりまではかなり苦しんだが、その後は見事にアジャストし、このシーズンに限らず、翌年以降も優秀な成績を残した。こうしたケースは稀だが、忍耐強く打席機会を与え続けることの重要性を再認識するとともに、見切りをつけるタイミングの難しさについてもあらためて考えさせられる。

 もちろん、選手を獲得する段階でスカウティングは十分に行われているべきだが、日本人投手のボールに対してどれくらいスイングしていけるか、どれくらい打球が上がるかなど、実際に試合に出してみて分かることもある。再度ロジャースを引き合いに出すと、レアードら4人の打者に比べて、ロジャースはスイング率が低く、打球も上がりづらいという違いが見られる。

 今後来日する外国人選手の適性についても、こうした打者のタイプと実際に残した成績の情報を積み上げながら、丁寧に分析していく姿勢が大切だろう。勝負の世界ゆえに失敗は付き物だが、獲得する側も、獲得される側も、お互いに成功を掴めるような日本プロ野球界であってほしい。

※データは2017年9月28日現在

文:データスタジアム株式会社 山田 隼哉