攻撃の選手層と崩しのバリエーションが広がっている2025年の浦和レッズ。そこにマチェイ・スコルジャ監督が昨季終盤3か月…
攻撃の選手層と崩しのバリエーションが広がっている2025年の浦和レッズ。そこにマチェイ・スコルジャ監督が昨季終盤3か月間に再構築した堅守が加われば、かなり安定した戦いができるはず。そのためにも、ボランチ・最終ライン・GK陣がしっかりとした仕事を見せなければならないはずだ。
ボランチに目を向けると、昨季後半は安居海渡とサミュエル・グスタフソンしかいないという手薄な状況が続いて、一時は原口元気がこの位置を担ったほどだった。
そこで今季は柴戸海をレンタル先の町田ゼルビアから戻し、2列目兼任の松本泰志を補強したわけだが、残念ながら柴戸は開幕には間に合わない。松本もトップ下で使われるケースが多くなりそうで、早川隼平がボランチ要員としてテストされている模様。やはり人材が少し足りない印象もある。
そこで、指揮官は渡邉凌磨の3列目起用にトライしている様子。万能型の彼は何でもできるし、的確な指示で周りを動かせる。安居とのコンビなら攻守のバランスは取れるだろうし、グスタフソンと組む場合は少し攻撃的になる。当面はその3人で回していくことになりそうだ。
■手薄な状況が続くSB
センターバック(CB)は昨季終盤同様にマリウス・ホイブラーテンと井上黎生人が軸。新加入のブラジル人DFダニーロ・ボサと大卒新人の根本健太がいつ使える状態になるのかが気になるところ。
特に184センチの高さと強さを兼ね備えたダニーロ・ボサの一挙手一投足はチームに関わる全ての人の関心事に他ならない。
労働ビザが取得でき次第、すぐに合流し、実戦経験を積み重ねていくことになるようだが、彼がアレクサンダー・ショルツ(アル・ワクラ)に匹敵するレベルのパフォーマンスを発揮してくれればベスト。クラブW杯を視野に入れても、世界基準のプレーが必要。新助っ人がいち早くフィットすることを願うしかない。
サイドバック(SB)の方は大畑歩夢(ルーヴェン)の移籍もあって、やはり手薄な状況が続いている。左SBは欧州から戻ってきた荻原拓也と長沼洋一を臨機応変に使い分けたいところだが、開幕までの2週間で2人が揃ってトップの状態になるかどうかは未知数。しばらくは長沼が軸を担うことになるのかもしれない。右SBは関根貴大と石原広教を使い分けていく形になるだろう。
■他のアタッカーのSB抜擢も
この顔ぶれを見ても分かる通り、今季浦和のSB陣はかなり攻撃的だ。長沼も関根ももともとは前目のプレーヤーで推進力と得点をお膳立てする力を兼ね備えており、自らフィニッシュにも持ち込める。そういう人材をサイドに配置して、マテウス・サヴィオや金子拓郎らとタテ関係を形成させれば、彼らのサイドアタックは相当な迫力になる。
その反面、守備の方が疎かになるリスクが生まれる。昨季築いた堅守のベースが失われる恐れがあるのは不安要素だ。そのバランスをどう取っていくかがスコルジャ監督にとっての大きなテーマだろう。
とはいえ、敵を凌駕する攻めというのは期待できそうだ。他のアタッカーのSB抜擢もないとは言えない状況だけに、それも含めて前向きな変化が楽しみだ。
最後にGKだが、やはり38歳の西川周作が経験・実績・存在感ともに圧倒的だ。ただ、今季は牲川歩見、吉田舜の追い上げもあって、西川との差が詰まってきている様子。特に牲川は出番が増える可能性もある。優れた守護神が複数いれば、チームにとっては心強い。3人が切磋琢磨して、総合力を引き上げるように努めてほしい。
彼ら守備陣に求められるのは、失点を最小限に抑えること。そして攻撃の起点となる組み立てに関与することだ。堅守というスコルジャ監督のベースが崩れてしまったら、今季の躍進は叶わない。そこだけはしっかりと念頭に置いて、開幕までの2週間に完成度を高めていってほしいものである。
(取材・文/元川悦子)