今週末10月1日、中山競馬場で秋のGIシリーズ第1戦のGIスプリンターズS(芝1200m)が行なわれる。当日はフランスでGI凱旋門賞があり、そちらも注目だが、このスプリンターズSもスターホースこそ不在だが、実力馬が揃い混戦模様。予想し…

 今週末10月1日、中山競馬場で秋のGIシリーズ第1戦のGIスプリンターズS(芝1200m)が行なわれる。当日はフランスでGI凱旋門賞があり、そちらも注目だが、このスプリンターズSもスターホースこそ不在だが、実力馬が揃い混戦模様。予想しがいのある楽しみな一戦だ。筆者は中でもダイアナヘイロー(牝4歳/福島信晴厩舎)とダンスディレクター(牡7歳/栗東・笹田和秀厩舎)に注目している。



ダイアナヘイローは前走、北九州記念を勝って4連勝。この勢いは侮れない

 まずはダイアナヘイロー。6月の時点では500万下にいた馬で、この夏4連勝でGIII北九州記念(8月20日/小倉・芝1200m)を勝利し、ここに臨んでくる”新星”だ。もっとも、3歳時の昨年上半期にはOPエルフィンS(京都・芝1600m)2着、GIIフィリーズレビュー(阪神・芝1400m)4着と重賞、オープン特別で差のない競馬をしている。2着以下に2馬身半差をつけた新馬戦(京都・芝1600m)や、サイタスリーレッドに4馬身差をつけた3歳500万下(京都・芝1200m)などでも素質の片鱗は見せていたので、”新星”というより、ようやく重賞戦線に戻ってきたと見ている人も多いだろう。好位2番手から競馬ができるスピードと器用さを持ち、北九州記念の勝ち時計も1分07秒5と合格ライン。このメンバーでも十分勝ち負けできる存在だ。

 ダイアナヘイローは血統も魅力的だ。父キングヘイローは2000年のGI高松宮記念(中京・芝1200m)勝ち馬で、父としてもスプリンターズS、高松宮記念を勝ったローレルゲレイロを出している。牝系はサッカーボーイ(GIマイルCS)、ステイゴールド(GI香港ヴァーズ)、ショウナンパンドラ(GI秋華賞)などが出た名門で、3年前のこのレースの勝ち馬で、今年も出走予定のスノードラゴンも同じ一族。父系も牝系もこのレースに縁のある血統だ。

 ダイアナヘイローの不安点を挙げるとすれば、ローテーションだろう。この春は5月27日の御池特別(京都・芝1200m)2着から連闘で6月3日の戎橋特別(阪神・芝1200m)を勝利し、6月25日の皆生特別(阪神・芝1200m)、7月30日の佐世保S(小倉・芝1200m)、8月20日の北九州記念と休みなく使われてきていて、ここ4カ月で今回が6戦目だ。スプリンターズSを狙う馬のローテーションとしてはGIIセントウルSなどで秋1戦して臨むのが一般的なので、他馬と比べると上積みという点では分が悪いと思えてしまう。ただ、この厳しいローテーションの中、ダイアナヘイローは前々走、前走と馬体重を増やしてきている。これは今が充実期だと考えられるし、さらなるパワーアップも期待できる状態とも言える。

 過去に、同じような臨戦過程でスプリンターズSを勝った馬がいる。2008年のスリープレスナイトも4連勝で北九州記念を制し、その勢いのまま5連勝でスプリンターズSを勝利。同馬は4月20日からの5戦目と、ダイアナヘイローよりやや楽なローテーションだが、同馬も北九州記念で体重を10キロ増やしていた。また、4歳牝馬というのも共通している。4歳牝馬といえば2011年のカレンチャンも4連勝からの参戦でこのレースを制している。このレースでは4歳牝馬の勢いは侮れない。ダイアナヘイローがスリープレスナイトやカレンチャンに続けるか注目だ。

 かたやダンスディレクターは7歳の古豪。この馬は2016年と2017年のGIIIシルクロードS(京都・芝1200m)を連覇しているが、レース後にいずれも故障のため高松宮記念には出走できず、GI勝利のチャンスを逃している。しかも、昨年のシルクロードSで負かしたビッグアーサー(5着)、今年負かしたセイウンコウセイ(2着)がいずれも高松宮記念を勝っており、無事ならこの馬が……と思わせる結果だった。

 昨年はセントウルS(7着)からスプリンターズSに出走し、4番人気で15着と敗れたが、後方の位置取りになり、流れに乗れていなかったし、0秒5差なら着順のイメージほど負けていない。今年はセントウルSで自身最速の上がり3F(ハロン)32秒6のタイムを出しており、昨年より良い状態で臨めそうだ。休み明けからの上積みは大きいだろう。

 同馬も魅力的な血統背景の持ち主だ。父アルデバランIIはメトロポリタンHなどアメリカのダートGIを3勝した馬。牝系は祖母の兄にダービー馬ウイニングチケットがいるほか、GI昇格前だが1980年のこのレースを勝ったサクラシンゲキ、天皇賞・秋の勝ち馬で名スプリンター、サクラバクシンオーの父となったサクラユタカオーなど、数々の名馬が出ており、このレースにも縁があるファミリーだ。

「新星の4歳牝馬」ダイアナヘイローと「悲願のGI制覇を狙う古豪」ダンスディレクターは、一見対照的に見える2頭だが、どちらも勢い、上昇度と血統は魅力的。秋のGIスタートにふさわしい、いい走りを見せてくれることを期待したい。