全日本卓球シングルス 女子編【早田はまだケガの影響も】 卓球の日本一を決める「天皇杯・皇后杯2025年卓球全日本選手権大会」のシングルスが、1月21日から26日にかけて東京体育館で行なわれた。今回からダブルスが初の分離開催となり、翌週の1月…

全日本卓球シングルス 女子編

【早田はまだケガの影響も】

 卓球の日本一を決める「天皇杯・皇后杯2025年卓球全日本選手権大会」のシングルスが、1月21日から26日にかけて東京体育館で行なわれた。今回からダブルスが初の分離開催となり、翌週の1月30日から2月2日まで愛知県のスカイホール豊田で行なわれることになったため、先にシングルスの戦いに注目が集まった。


全日本選手権の女子シングルスで3連覇を飾った早田ひな

 photo by Kishimoto Tsutomu

 女子シングルスは、国際大会での活躍も光るトップ選手が顔を揃え、優勝争いが混戦になると予想された。そんななか、最終日にかけて尻上がりに調子を上げ、女子史上6人目のシングルス3連覇を達成したのが早田ひな(日本生命)である。

 早田は全日本選手権で2020年大会での初優勝を皮切りに、2023、24年大会で連覇を達成。昨年に出場したパリ五輪ではエースとして2種目でメダルを獲得した。近年の女子卓球界をけん引してきた早田だが、昨夏のパリ五輪で負った左腕のケガにより、実戦復帰まで3カ月ほどの時間を費やすことに。国際大会であるWTTシリーズや日本のTリーグで復帰を果たしたものの、トップフォームからは遠ざかっていた。

 完全復活を目指すなかで迎えた今回の全日本は、第1シードとして4回戦から登場。カットマンの加藤亜実(十六フィナンシャルグループ)相手に4ー1で幸先よくスタートしたが、5回戦ではジュニア女子で準優勝した17歳の面手凛(山陽学園高)に勝利したものの2ゲームを奪われ、2度デュースにもつれ込むなど苦戦を強いられた。

 パリ五輪までの早田の充実ぶりに比べれば、本調子には達していないことが垣間見えた序盤戦の戦い。それでも、6回戦では三村優果(サンリツ)相手にゲームカウント4ー1で勝利してベスト8に進出。準々決勝でも芝田沙季(ミキハウス)を4―1で退け、3連覇まであと2勝とした。

【張本、急成長の大藤もベスト4へ】

 一方、早田と共に優勝候補の筆頭に挙げられていたのが張本美和(木下グループ)だ。昨年の大会で準優勝した張本は、パリ五輪団体戦メンバーに抜擢されて銀メダル獲得に貢献。その後、世界卓球、アジア卓球選手権などの国際大会で実績を重ね、世界トップクラスの若手選手に成長した。

 今回は、2017年大会を16歳9カ月で制した平野美宇(木下グループ)を上回る、16歳7カ月での最年少優勝を視界に入れていた。4回戦、5回戦を順当に勝ち進み、6回戦では世界卓球でメダル経験もあるカットマン、佐藤瞳(ミキハウス)にも4ー0で完勝した。

 掛け持ちで出場していたジュニアの部では、福原愛、石川佳純に続く3連覇を達成し、一般の部でもベスト8へ。準々決勝ではサウスポーの山﨑唯愛(サンリツ)に序盤こそ苦しんだものの、終盤に立て直し4ー2の逆転勝利でベスト4まで駒を進めた。

 さらに、もうひとり大きな注目を集めていたのが大藤沙月(ミキハウス)。2023年10月から指導を仰ぐ坂本竜介コーチのもと、攻撃的なスタイルを目指し、振りの鋭いバックハンドを軸とした"より前に出る卓球"に活路を見出した20歳の選手だ。

 その効果は国際大会で形となって表われた。2024年10月の「WTTチャンピオンズモンペリエ」では平野、伊藤美誠(スターツ)、張本を下して優勝。日本人選手相手にも強さを発揮し、世界ランキングを7位まで上げた全日本に挑んだ。

 大藤は、テンポのいいラリーから鋭い両ハンドを躊躇なく振りきるシーンが目立つなど、磨きをかけてきた新スタイルで勝ち上がっていく。同じブロックの実力者、6回戦の長﨑美柚(木下グループ)戦でも要所の局面ではパワーで押し返す場面が目立つなど、4ー1で勝利してブロックを突破した。

【早田が圧巻の2試合連続のストレート勝ち】

 優勝争いは早田、張本、大藤に加えて、フルゲームの末に平野を下した伊藤がベスト4に進み、世界ランキングでトップ10に入る4選手によるハイレベルな戦いになった。

 そこで、底力を見せつけたのは早田だった。26日の午前に行なわれた準決勝で大藤と対戦し、厳しいミドルへの攻めから得意のフォアハンドを振りきってポイントを重ねるなど、ケガの不安を感じさせないプレーを披露。第3ゲームでは5-9のビハインドから大藤にプレッシャーをかけ続け、14-12でこのゲームを奪う。その後も大藤に自由を与えず、4-0とストレートで決勝へ勝ち進んだ。

 もうひとつの準決勝では張本が伊藤に4―0で勝利し、決勝は2年連続同じ顔合わせとなった。

 張本はこの1年でスケールアップを遂げたが、早田はそれを上回った。第1ゲームから9連続ポイントと圧巻のプレーを披露。国内屈指のラリー力を持つ張本との打ち合いにも負けず、フォアドライブ、チキータなどを駆使して試合を優位に進め、サービスでもポイントを重ねるなど、経験に裏打ちされた老獪なプレーで張本をゲームカウント4-0で押さえ込んだ。

 若き実力者ふたりを無力化させた早田が、史上6人目となる女子シングルス3連覇を果たした。最終日に充実のプレーを見せた早田だが、試合後には「パリ五輪の自分に戻ることはできていない」と、いまだケガと向き合いながらの現状を明らかにした。そして「"シーズン1"がパリ五輪までの早田ひなだとしたら、ここからが"シーズン2"の始まり」と言葉を連ねた。

 昨年とは異なる姿で、今年の全日本でも主役を担ったエースが、新たな覚悟とともにロサンゼルス五輪に向けて卓球人生を歩んでいく。

(男子編:日本男子卓球の「次世代エース」17歳の松島輝空が覚醒 全日本選手権で張本智和を相手に挑んだ「真っ向勝負」>>)