芝ダートの両方でJRA・GIを制した馬は僅かに5頭しかいない。古い方からクロフネ、アグネスデジタル、イーグルカフェ、アドマイヤドン、そして唯一となる21世紀生まれの達成者がモズアスコットだ。現在は種牡馬としても活躍している異色の名馬がダ…

 芝ダートの両方でJRA・GIを制した馬は僅かに5頭しかいない。古い方からクロフネ、アグネスデジタル、イーグルカフェ、アドマイヤドン、そして唯一となる21世紀生まれの達成者がモズアスコットだ。現在は種牡馬としても活躍している異色の名馬がダートに初挑戦したのが20年の根岸S。1年8カ月ぶりの復活Vを果たした一戦を振り返る。

 モズアスコットは米国生まれのフランケル産駒。栗東・矢作芳人厩舎に所属し、3歳6月にデビュー。3戦目から4連勝でオープンに昇級すると、重賞でも好勝負を続ける。そして4歳春、安土城S(2着)から連闘で参戦した安田記念でアエロリットやスワーヴリチャードなどの強豪を倒し、GIで重賞初制覇を果たした。しかし、その後は7連敗。5歳時のスワンSで2着に健闘したものの、それ以外の6戦は6着以下。多くのファンが衰えは隠せないと思った中、陣営は6歳初戦にダート初挑戦となる根岸Sを選ぶ。

 コパノキッキング、ミッキーワイルドに続く単勝9.9倍の3番人気に推された一戦、モズアスコットは新たな一面を見せた。約1馬身の出遅れはあったが、スッと巻き返して道中は中団追走。手応え良く直線に向くと、ルメール騎手のアクションに応えて脚を伸ばす。残り100mを切ってコパノキッキングをかわしたところで勝負あった。終わってみれば1馬身1/4差の完勝で、安田記念以来となる2つ目の重賞タイトルを獲得。この勝利はフランケル産駒では初となるJRAダート重賞制覇でもあった。

 待望の復活を遂げたモズアスコットは、堂々の1番人気でフェブラリーSに参戦。2馬身半差の完勝で、史上5頭目のJRA芝ダートGIダブル制覇を達成することになる。名馬フランケルの初年度産駒を代表する1頭、そして近年屈指の二刀流として、その功績は色あせることがない。