かつては日本で、最近はUAEやモロッコなどで開催されたクラブ・ワールドカップ。各大陸の王者など7チームが参加していたが…
かつては日本で、最近はUAEやモロッコなどで開催されたクラブ・ワールドカップ。各大陸の王者など7チームが参加していたが、今年は世界の強豪32チームが参加する大会へと、大きく変貌を遂げた。レアル・マドリードやマンチェスター・シティ、日本からは浦和レッズなど、世界中からビッグクラブが集まる楽しみな大会であるが、「かなりの無理や矛盾を感じる」と、警鐘を鳴らすのは、サッカージャーナリスト後藤健生。どういうことなのか?
■リーグ戦を戦う上での「負担」
先日、2025年Jリーグの日程が発表された。今シーズンは2月14日に開幕。ワールドカップなどのような長期間の中断はないが、7月にはEAFF E-1選手権のための中断期間があり、その他、変則的な日程がいくつかある。
多くはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)によるものだ。
ACLは秋春制に変更されたため、2月のJリーグ開幕前後にはACLエリート(ACLE)・リーグステージの残り2試合と、ACL2のラウンド16が入っており、勝ち抜いたクラブはさらに準々決勝以降の日程が入る。ACLEの場合、準々決勝以降がサウジアラビアでの集中開催となったことは東地区のクラブにとっては不公平極まりないが、日程的には一度の遠征で済むので、むしろ楽になったのかもしれない。
いずれにしてもリーグ戦を戦う上では大きな負担となる。
2024-25シーズンのACLEに出場しているヴィッセル神戸、ACL2に出場しているサンフレッチェ広島は、さらに秋には2025-26シーズンのACLEにも出場しなければならないので、年間を通してACLの負担がある。カップ戦のときのマネージメントが優勝争いにも直結してくるだろう。
■変則日程を「強いられる」浦和
一方、FIFAクラブ・ワールドカップに出場する浦和レッズも、大会期間の6~7月に変則日程を強いられる。影響を受けるのは、6月14、15両日に行われる第20節から7月5日の第23節までの4試合。第20節の京都サンガF.C.戦が4月16日に、第22節のセレッソ大阪戦が5月28日に前倒しされ、第21節の湘南ベルマーレ戦と第23節のアビスパ福岡戦は7月の中断期間に実施される。ちなみに、7月に中断が入っているので、万一(?)浦和がラウンド16以降を戦うことになっても、それ以上にはJリーグの日程に影響しない。
しかし、いずれにしても4月と5月にはいわゆる「連戦」が入り、そして、ワールドカップではリーベルプレート(アルゼンチン)、インテル(イタリア)、モンテレイ(メキシコ)といった強豪クラブ相手に、強度の高い試合を強いられることは間違いない(日本からの移動距離が短く、時差も小さく、気候的にも楽なワシントン州シアトルとカリフォルニア州パサデナ(ロサンゼルス郊外)なのは、幸いではあるが……)。
また、7月後半の暑さが厳しくなる時期に、他のクラブより2試合多く戦う必要が出てくる。「低迷脱出」を図る浦和にとって、やはり負担は相当に大きいだろう。
世界中で賛否両論が渦巻いている(「賛」という意見は少数派)クラブ・ワールドカップだが、浦和に限らず、参加クラブにとっては非常に負担が大きい大会となる。
ただでさえ試合過多が指摘されている中、ヨーロッパのクラブにとっては5月に長いシーズンが終了した直後に、最大7試合を戦わなければならないのだ。
■次のシーズンに「必要なもの」
試合数自体も問題になるが、最も重要なのは7月13日に予定されているクラブ・ワールドカップ決勝まで戦ったクラブの選手は十分にシーズンオフを取れなくなってしまうという事実だ。
試合数が多く疲労が溜まっていたとしても、オフさえ取れればそれを乗り切ることはできるだろう。だが、その疲労を癒し、次のシーズンに向かうためにはオフが必要なのだ。
ヨーロッパの場合、7月末から8月にかけて新シーズンが開幕する。2026年にはワールドカップが控えていることもあって、通常のシーズンより開幕が早めに設定される国も多いはずだ。
従って、遅くとも7月に入れば、新シーズンに向けてのキャンプが順次始まる。そして、キャンプで仕上げて、プレシーズンマッチを戦って新シーズンに備えるのだ。
だが、7月13日までクラブ・ワールドカップを戦ったのでは、オフ期間をいくら短くしても始動が遅れてしまうことは間違いない。
従って、クラブ・ワールドカップで勝ち抜いて、準々決勝以降まで戦ったチームはオフが短くなり、準備不足のまま新シーズンに突入せざるをえない。そして、オフが十分に取れず、疲労が蓄積したまま始動した場合、選手が故障する確率も高くなる。
2024年にEUROを戦い、2025年にクラブ・ワールドカップ。2026年にFIFAワールドカップを戦ったりしたら、3年連続でしっかりとオフが取れなくなる。それでは、選手生命にも影響を及ぼしかねない。(2)に続く。