プロテインやサプリメント、アパレル、フィットネスジムなどを展開する『VALX(バルクス)』は、フィットネス業界において急成長を続けている。ボディビル界レジェンド山本義徳氏とタッグを組み、3期連続の増収、約4年で1360%成長するなど、もっと…

プロテインやサプリメント、アパレル、フィットネスジムなどを展開する『VALX(バルクス)』は、フィットネス業界において急成長を続けている。ボディビル界レジェンド山本義徳氏とタッグを組み、3期連続の増収、約4年で1360%成長するなど、もっとも勢いのあるフィットネスブランドとなっている。

前回は、憧れの会社に入社したもののモチベーション維持ができなかった話や、仕事のやる気についてお届けした。今回は社員たちとうまくいかなかったエピソードから「人は変われるのか」「経営層や上司、部下との関係の作り方」について学んでいく。

只⽯社長の人生ヒストリーは #1にて

──ブログコンサル時代。社長として成果を出していたものの、全社員から突然の辞表。どのようにして立て直した?

編集部:キーエンスを退職した後は、アメブロで人気ブロガーとなり大ヒット。その経験を活かしてブログコンサルを始めたそうですね。成果を出し続けていたにもかかわらず、ある日突然、全社員から辞表を出されたと聞きました。なぜそのような事態に?

只石社長:あの時代は、僕自身のアメブロがすごい人気で、それを見てくださる人たちをターゲットにしてセミナーを開くと、一回に100人ぐらい来たんですよね。僕が書いたブログで人を集めて、僕が登壇をして、僕が商談をして、僕が少人数の勉強会をやって、コンサル契約も僕がして……全部“僕”だったんですよ。

そうすると、社員たちに対して思うところも出てくるわけです。1円も生んでないじゃん、みたいな。メール返信の仕方ひとつとっても、腹が立ってしょうがなかった。僕がこんなにも努力して獲得した顧客なのに、なんでこんなメールしか出せないのか、とか。

しかも、当時は“人には可能性しかない”と妙に思い込んでいた節もあったので、“お客さんのことを考えていないようなメールを簡単に出せてしまう人間性が良くない”とか、その人自身を否定するようなコミュニケーションをしていました。当然、社員は疲弊してしまって。

次:「辞めたかったら辞めればいいじゃん」

社員たちは僕に変わってほしかったと思うんですよ。だから、みんなで結託して一斉に退職届を出せば、僕が『ごめん、俺のせいだ、悪かった』と気づくと思ったんでしょうけれど、僕はそれでも気づかなかったんですよね。辞めたかったら辞めればいいじゃん、みたいな。

そんな中、ある社員から電話がかかってきたんです。『今の社長、間違ってると思います』って。その一言がめちゃくちゃ刺さったんですよね。

多分その社員は、誰かに言われたわけじゃなくて、ものすごく勇気を出して言ったんだと思うんです。普段はコミュニケーションがまったくできない、僕と目が合わせられないような社員から電話が来た。そこまで社員を困らせたんだって、涙が止まらなくなって。『本当に申し訳なかったです』って、人生で初めて土下座をしました。

ただひとつだけ懸念点だったのが、(業務を)全部僕がやっているけれど、社員たちに任せてもいけるのか? ということ。それを伝えたら、彼らは『いつも近くで社長の講演やコンサルのやり方を見ていたので、もしよかったらやらせてもらっていいですか?』って答えてくれた。おっかなびっくり任せてみたら、なんと社員たちのほうが売上を上げたんです。

そこから僕は任せるということを学び、経営マネジメントでそれを大事なポイントにしていきました。

次:部下に任せて『やっぱり成果が上がらなかった、全然ダメだった』となる恐怖、どう対処する?

編集部:とはいえ管理職の中には、部下に任せて『やっぱり成果が上がらなかった、全然ダメだった』という事態になる恐怖もあるかもしれません。それを防ぐためには?

只石社長:僕は怖がりなので、リスクヘッジしました。たとえばセミナーの場合、前半は僕の講演、後半は社員とか。そうすれば集客において僕の名前を使えるわけじゃないですか。

実際アンケートを取ってみたり、社員が講師の勉強会と、僕が講師の勉強会で値段を変えてみたり。どっちのほうが売上がいいか試してみたら、圧倒的に社員たちのほうが売れていたんですよ。別に自分じゃなくて良かったんだって気付けた。

編集部:ほかに、社員たちへの信頼を回復していった方法はありますか?

只石社長:当時はとにかく“任せる”が一番でした。

編集部:もし今の只石社長が、当時の自分の下についたとしたら、どう切り抜けますか?

只石社長:多分、一緒に働かないと思います。ダメですよ。そんな社長の下で働いちゃ(笑)さっさと逃げたほうがいい。素直さがない人には、何を言っても聞き入れてくれないですよ。

でも、当時の僕は幸いにも気付けた。気付けた後は、人間って早いと思うんですよ。でも気付けない状態だと、いかに優秀な部下が入社してきても、多分その言葉は届かないと思います。

編集部:当時の只石社長は、なぜ気付けたのでしょうか。部下から何を言われても気付けない人たちも沢山いるかと思いますが、何が違うのでしょうか。

只石社長:やっぱりあの1本の電話があったからです。僕と目を合わせられないような、コミュニケーションが本当に苦手だというエンジニアの子。その子が僕に電話をしてくること自体、よほどのことなんです。しかも『今の社長、カッコ悪いと思います』って。そこまで勇気を振り絞らせてしまったって。

編集部:もし、いつも社長に意見を言ってくる社員から苦言を呈されていたら?

只石社長:それはわからないです。ただ、少なからず退職届を全員から出されたときは、僕は『はいはい、すぐ辞めてもらっていいです』という感じで受け止めていました。実際、次の日は全員出社してましたし、やっぱりね、って。

次回へ続く

プロフィール

只石昌幸(ただいし・まさゆき)

群馬県出身。群馬県立高崎高校より、法政大学経営学部へ。株式会社キーエンスを経て、起業。2006年、株式会社レバレッジを創業。WEBサイトの受託からスタートさせるも、Blogブームに乗って、こだわり社長のニックネームで独自のグルメブログを展開し、自身のアメブロがアクセス数において、アメブロ日本一に。2016年より自社メディア『ダイエットコンシェルジュ』を開始、パーソナルジムのマッチングメディアとして日本最大規模に成長。2019年よりフィットネスブランド『VALX』を山本義徳先生とともに開始。ブランド開始から約5年で、ブランド累計販売数550万個突破、プロテインの累計販売食数は1億3千万食を突破する。35歳の時、趣味で始めた極真空手も優勝8回、世界シニア大会8位を受賞。X(旧Twitter)フォロワー数5.2万人。
・X公式アカウント  https://x.com/kodawari_ceo

<Text & Photo:編集部>