この冬の全国高校弓道選抜大会(全日本弓道連盟主催)の女子団体で、宮崎県代表の宮崎商が準優勝を成し遂げた。2024年8月…
この冬の全国高校弓道選抜大会(全日本弓道連盟主催)の女子団体で、宮崎県代表の宮崎商が準優勝を成し遂げた。2024年8月末の台風10号で学校の弓道場が突風に襲われ被災。十分な練習環境が整わない中で各方面から支援を受けて臨んだ大会だった。
弓道では全国高校総体(インターハイ)に次ぐ大きな大会。団体戦は登録選手4人のうち3人が4本ずつ射て、的に当たる数を競う。12月27日に三重県四日市市で開かれた大会最終日の花巻北(岩手)との決勝戦。宮崎商は1巡目で3人とも的中。2巡目も中武心美選手(2年)、中村莉子選手(同)が連続で的中させ、3人目の籾木蘭奈選手(同)の矢も的の真ん中に突き刺さった。
ところが、その矢は直後に跳ね返ってしまう。勢いが強すぎて堅い土台にまで到達してしまったからだ。
女子の試合でそう起こることではないが、規定によってこの矢は無効とされた。結局試合は8対8の同点に。1射ずつで勝負を決める「競射」で1対2となり、「幻の優勝」(顧問の宮田桂吉教諭)となった。
籾木さんが使った弓は、引く力を示す重さが15キロという強い弓。実は台風被災で弓が足りなくなり、支援で新しく購入されたものだった。
8月末に九州を縦断した台風10号で、宮崎県沿岸部を中心に多数発生した竜巻や突風。その一つが宮崎商の弓道場も通過した。屋根が4分の1ほど吹き飛び、壁の一部もはがれて内部が雨ざらしに。横断幕を天井に張るなどしてしのぎ、10月半ばにかろうじて補修が済んだ。
さらに痛手だったのが弓の被害だ。計36本が損傷。20人の部員に対し使える弓は22本となり、自分に合う弓を手にできない部員も出てきた。修復不能と判断された12本分の購入資金をクラウドファンディングで募り、目標の65万円を超す76万4千円が県内外から集まった。弓そのものを寄付してくれる学校や個人もあった。
籾木さんは、「ちょうど重いのに替える時期にきていたから」と、それまで使っていた13キロの弓を他の部員に譲り、全国大会の2週間ほど前に新しい15キロの弓に持ち替えた。宮田顧問によると、選手たちは練習を重ねて強い弓に替えていくが、通常、大会前2カ月以降は新しい弓に替えることはない。弓が被災で足りなくなっていたことと、支援への恩返しも示すため、籾木さんはあえてこのタイミングで弓を替えた。
そうして迎えた全国大会。夏のインターハイでは1位で予選通過したが、決勝トーナメントは1回戦で敗れた。今回は最下位での予選突破だった。「今度は自分たちが(上に勝ち進んだ)夏の相手校と同じ立場になろう」と挑み、決勝まで勝ち進んだ。
中武さんは「これまでの大会は不安が先行したが、今回は練習するべきことをやり切って臨めた。支援への恩返しの気持ちが練習につながった」と話す。高校から弓道を始めた中村さんは「大会の雰囲気が分かってなくて」予選でうまく的中できず、決勝トーナメントでいったん後輩の浅田優愛さん(1年)に役割を託したが、決勝戦で再び立つと的中させた。「最後はやるしかないと思った」。準優勝はうれしいが、「あと1歩と思うと悔しさもある」と中村さん。
新しい弓で大会に臨んだ籾木さんは「勝ち進んでいくと、試合と試合の間隔が短くなって体力がもたなくなっていった。的で跳ね返った時は会場が騒然となり、動揺して引きずってしまった」というが、ほかの2人が当ててくれたことで「大丈夫だと安心できた」と振り返る。
宮田顧問は「今大会の一番の目標は、支援してくれた人たちに恩返しすることだった。最後まで勝ち進み、しかもどきどきわくわくの場面を見せることができた。万全の状態じゃない中で予想以上にやってくれた。二重丸です」と4人の奮闘をたたえる。
中武さんは「準優勝は悔しいけど、それによってチームの課題が見つかった。もっと上を目指せる」と次に向けての意欲を語った。(後藤たづ子)